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ヒーラー奏の立位置は?前衛です!  作者: 梅花 零度
異世界転移
2/118

私たちは日本からきました。

「ええええええええええ!」僕は混乱して叫ぶ。

「話聞いてるのか、ゆ・・・・きち?」

「なので奏は俺と一緒に部活に行くん・・・・君は・・・先輩?」


僕の叫びに続いて武雄が僕の方見てなぜか疑問形。輝も武雄をみて何故か疑問形。そして武雄先輩の疑問以外は直ぐにわかった。武雄がいたであろう位置に赤髪の不良が立っていた。ただし、顔立ちはほぼ武雄そのものなのだが、何か筋肉隆々、背も高くなっている。


そして輝が立っていたところには同じく金髪の輝が立っていた。しかし、こっちはチートだった。なにがチートかって?顔がキラキライケメンになっていたことだ。元から少し日焼けしていたさわやか君がもっと少女漫画に出てくる男性キャラに似通っていた。


「えーっと、どこの少女漫画のキャラ?初めまして。」

「初めまして?え、君奏?え?初めまして。ってボケをかますなよ!」



輝らしき人は僕の苦し紛れのボケ(突っ込みのつもり)を困惑しながら最終的に突っ込む。

なんてやり取りでお互いを確認していると。


「はっはっはっはー!お前癒吉か?老けたなお前。髪真っ白だぞ。んでお前がさっき邪魔してきた生意気君って訳だ。くそ胸糞悪い顔しやがって。」

「輝の顔については同情の余地はない。Guilty!」

「奏・・・お前どっちの味方?」




 武雄が笑い飛ばし、僕が輝のイケメン度に嫉妬し、奏がじと目で突っ込む。なんか会話の雲行きが怪しくなってきたが、気にしない。イケメンは罪。決して嫉妬なんかしてない。心の声なんて気にしない気にしなーい!ん?皆何故か外見が変わっているという事は?


「ってことは僕もイケメンになってたり?」

「なるわけねーだろ。」「いやー、うんちょっとは。」



武雄が突き放し、輝が要らないフォローを入れる。鏡見れば直ぐわかるだろうし。


「俺様はどうだ?なんか髪が赤くなってやがるが。」


と聞かれるが、ここは相手は先輩。しかもいじめっ子。ここ大事。

一見漫画で出てくる盗賊の頭みたいな見た目だもん。バンダナ巻けばまんま主人公にカモられる盗賊まんまだった。ただ、見たまま言えるはずも無かった。


「え、イインジャナイデスカ?」「・・・・・は・・い」


「なんだその態度は。俺先輩だぞ!上下関係が分かってないようだな。」





 僕の渾身の棒読みと輝のなんて形容していいのかわからず言いよどんでしまった。仕方ない。

 八つ当たりに僕だけ小突かれる。

 

「ぐおーりらか!」


 また先生に告げ口されたら、と怯えてなので殴るではなく小突く。なんとまあ小悪党そのままである。ただし、軽くのつもりだったのだろうが、相当痛かった。全力で殴られたように吹き飛んだから。やった本人と軽く小突くくらいならと見逃したであろう輝が目を白黒させている。朦朧とする頭で回りを見る。輝が武雄を見てわざとではないと感じとったようだ。こっちに歩いてきている。なんとか意識がある僕を見て助け起こそうとしているようだ。


武雄の後ろにいる先輩二人の見た目も盗賊子分AとBに見えた。何故AとBかって?2人の先輩の名前知らないんだもん。


 そして先輩が遅すぎる疑問に到達した。要は何故姿が変わったのか。ここはどこなのか。一体なにが起きたのか。回りを見ると同じクラスメイト達も一緒にいる。司も近くにいた。素早く回りのクラスメイトの無事の確認をしていた。さすが学級委員長。ってかあまり司は容姿が変わってない?髪が赤くなった位?


そこまで考えて輝に助け起こされる。武雄も頭を掻きながらこっちに歩いてきた。


「わ、わりー、軽く小突くつもりが。しかし、今なんか言ったか?」


本気で悪そうに言う。それだけ派手に吹き飛んだのだろう。


「い、いや、なんとか大丈夫なんで。あと、力が強くてびっくりしただけです。」

そう答えるのが精いっぱいであった。ゴリラか!って突っ込みはシテオリマセン。




しばらく皆の混乱が収まってきた。回りは石畳にレンガのようなもので囲われた花壇。迷路のような庭だった。あちこちの花壇には、色とりどりの花が咲き乱れ、大きな噴水の東に皆集まっていた。何故東かわかるかって?太陽が燦燦と輝いている反対方向だから東だと思っただけだ。だってさっき夕方だったよね?

 そして北に大きなお城のような洋館のようなものが建っていた。その場にカウンセリング兼保険室の先生である由里子先生の元一か所に集まっていた。この場にいる先生は由里子先生だけだ。担任はここにはいない。


 なにが起きたかその場で情報整理が始まった。まずここはどこか?由里子先生は紫色の髪を風でたなびかせながら、花壇の上から皆を見下ろし話す。



「今ここがどこなのか分かりません。しかし安心してください。私が安全に皆さんを家に送り届けます。しかし先ずは情報を整理しましょう。私たちは2年B組の教室にいました。その他の教室にいた人はいますか?挙手お願いします。」


誰も手を挙げなかった。由里子先生は続ける。


「みなさん2年B組に居たという事でいいでしょうか。次に放課後のチャイムを聞いた後に気付いたらここにいたという事ですね。」


 何もわからない。あの教室に居た人全員ここにいる。ただ分かった事はそれだけ。そこで動いたのは司だった。


「先生は何故私たちの教室に居たのでしょうか?」

「久しぶりに癒吉君が登校してきたって担任の川口先生から聞いて・・・。」


 挙手と同時に話始めた司に対して先生はそう答える。そうだったのか。今日は学校に登校したが、心配してくれる人がいるだけ恵まれているのかもしれない。

由里子先生は続ける。


「では、気付いているようですが、みなさんの姿が多少変わっている。力が異様に強くなっている人がいる。足が速くなっている人がいる。視力が良くなっている人がいる・・・・。体に異常がある方はいますか?どこか痛いだとか、怪我しているだとか。」


 さすがカウンセリングの先生。不安要素しかないこの状況で不安になるような事を隠しつつポジティブな方向にのみ話を持って行った。苦し紛れだけれど。そして心配要素を払拭するため心配する。




「君たち!動かないでください。」

気付くとそこに男が立っていた。由里子先生の真後ろ。執事のような服装のモノクルを掛けたおじいさんだった。音も無く後ろから声がするものだから、由里子先生はびっくりして振り向きながら花壇の縁で躓いて尻もちをついて・・・しまわなかった。輝がお姫様抱っこで受け止めていた。イケメンめ・・・。


「奏、今のは責められる行為ではないはずなんだけれど・・・・。で、あなたは誰ですか?」

「誰、とはこちらのセリフでございます。ご主人様のお屋敷に不埒ものが入り込めば排除する。それが我々執事の務めでござります。」


 僕の心にいちいち突っ込み、執事の男に問いただすと執事は僕たちが侵入者であるといっている。どうやらどっかのお屋敷にいるらしい。

輝は先生を地面に降ろし、前へ出る。


「これは失礼しました。私は輝ともおします。しかし私たちも状況が把握できていません。学校の教室にいたのですが気付いたらここにいました。もしよければここがどこなのか教えていただけませんか?」


「ここはアルマリア王国、アマリリス領主様が納める統治国家の領主宅。がっこうのきょうしつとやらはどこの地名か分かりかねますが・・・・嘘はおっしゃっておられないようですね。ふむ、一体あなたたちはどこのものなのですか?」


 輝の疑問に聞き覚えの無い地名。王国?外国にでも来た?困惑する僕たちの中で直ぐ立ち直ったのが由里子先生だった。


「私たちは日本からきました。名乗り遅れて申し訳ありません。私の名前は中村 由里子。高校の教師の・・・教師です。」


 厳密には教師という立場ではないため、言いよどみかけたが、この際どっちでも同じだろうと教師と言い切ったようだ。しかしモノクル執事は・・・。


「私はアマリリス領主様にお仕えしております。クルセイダーと申します。以後お見知り置きを。しかしおそらくあなた方は恐らく異世界者。あなた方の事は領主様にご指示を仰ぎます。この屋敷内で勝手をされては困ります故大人しくしていてください。」


「大人しく?うるさい!俺に指図するな!」「そうだそうだ、たけちゃん強いんだぞ!」「爺ぃ!引っ込んでろ!」


 いきなり現れて、いきなり上から目線で悪者扱いされて、いらいらしていた三バカがクルセイダーと名乗る執事にいきり立つ。が、


「分かりました。大人しくこちらで待っていますので、どうか武器をお降ろし下さい。」


輝がクルセイダーに言う。因みに殴りかかろうとしているごり・・・・武雄の腕をつかみ地面に引き倒しながら。


「御賢明な判断ありがとうございます。」


「しかし、僕達の誰かが危害を(こうむ)った場合は反抗させて頂きます。」


「そんな乱暴はいたしません。む、伝令の従者の者が帰ってきたようです。フムフム、皆様、早速ですがお屋敷に来ていただけませんか?領主様がお待ちです、」


「てめー、なにすんだってててって、いてー!」


 輝が腕に力を入れると武雄の腕が軋みだす。武雄は輝の手を動かそうとするが全く歯が立たない。あの筋肉以上の握力を輝は持っているということだ。ゴリラ王輝の誕生である。


 ひと悶着あったが、何とか皆落ち着いて屋敷に向かうこととなった。クルセイダーが先頭、次輝、三バカトリオがロープで拘束されつつ付いていき、最後尾は自分と由里子先生だった。ただし、その回りを鎧騎士たちに囲まれながら。輝が武器を降してくださいといったのは、この騎士たちに対してだったみたいだ。いつの間にか周りを囲まれていたのだ。何故輝が気づいたかはスルーしよう。


 ひたすら屋敷に向かって歩く。やっと着いたと思った時には10分ほどかかってついた。庭広すぎだろ!屋敷でかすぎ!玄関扉高すぎ!自分の背丈を縦に3人分の高さの扉が自動的にギギッと軋みながら開く。

 屋敷の中も広かった。赤絨毯、豪華な装飾、昼間だからかシャンデリアは明かりは点いておらず、吹き抜けになっていて5階まであることが分かる。


そのまま4階まで皆を誘導したクルセイダーは。

「こちらで少々お待ちください。領主様をお呼びいたします。」


 案内された部屋には、中央に大きな長細いテーブルがあり、その回りに椅子が並んでいた。数えてはいないが、椅子の数は人数分と大凡同じ。皆座ったら、案の定一個分しか余らなかった。あの執事やるなー。と変な感想を覚えて皆で座った。因みに前の方に輝、対面に由里子先生、輝の隣に司、司の友達の南さん、後ろの方に自分と三バカトリオ。因みに落ち着いているので拘束は解いてある。寝ているように見えるのは気のせいだ。どう気のせいかは言及しない。我自慢の幼馴染は恐ろしい。私が育てました。輝は微妙そうに僕を見ているが、無視無視!


 因みに何故僕が後ろかというと、僕は自慢じゃないが観察力に自信がある。三バカが起きて僕が気付くと輝が直ぐに異変に気付く。それに話し合いは輝と由里子先生に任せるという事で一番前の席。三バカが暴れて領主様に襲い掛かったらいけないという事で三バカは一番離れた後ろ。必然的に僕は後ろの方となる。


 しばらくすると扉が開いた。領主様とやらが来たのかと思って皆に緊張が走る。屋敷に来るときに輝の目を盗んで三バカが暴れだしたが、鎧騎士に一瞬で拘束されてしまった。相当暴力という力の差が明確となった。領主様に何かあれば死刑という可能性が頭をよぎる。自分がそうなのだから皆の中にも同じこと考える人がいるんじゃないかと思う。実際皆大人しくしているしね。


 しかし扉に入ってきた人物はまごうこと無きロリであった。背丈はたぶん自分よりもかなり低く、10歳程度の女の子だった。その後ろの騎士がぞろぞろ入ってきて、ロリに敬礼しつつ部屋の隅の配置に付く様をみて、輝は驚いた表情を真剣な表情に変えた。


「おおお!おぬしらが異世界から来たというもの達か。」

ロリ訂正します。ロリババアでした。


「なんか複数から失礼なこと考えられとる気配が・・・」

「は、初めまして、わたくしは輝と申します。屋敷にお招きいただきありがとうございます。」


 ごまかしたな輝。そして輝を見ると『うるさい。失礼だろ。こっちは笑うの我慢しているのだから。』という顔をしている。由里子先生はまじめな顔で対応・・・・・・。


「ええ?この小さい子が領主様?初めまして、私は中村由里子と申します。小さいのにえらいのねぇ~。」


 出来なかった。爆弾を由里子先生が落とした。皆が笑いをこらえていると、ガチャッと鎧騎士が動く。皆顔面蒼白になる。


「よいよい。わしの見た目は皆に言われる事じゃ。わしの名はクルシュ・アマリリス。この領地を守る領主をさせてもらっとる。因みに歳は内緒じゃが、ここにおるものの中では一番年寄りじゃな。」


「こ、ここkれはひつれいしました。」


 由里子先生は、騎士が怖いのか、お偉い権力者に無礼があったからなのか、かみっかみで謝罪した。

これから大変な話合いが始まろうとしている。そんな予感があった。

三バカトリオ、どう料理してやろうか。

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