シェイド王国
新章です
ー由里子ー
円卓がある。その周りには12人の傑物達が並ぶ。私は小さな女の子の後ろに控えていた。
「ではシェイド魔王会議を開始する。」
円卓の中で一番良い席に座っている者が取り仕切る。勿論魔王会議という名前から分かる通り魔王を中心として開かれる会議なのよ。因みにシェイド帝国の魔王の会議。
もう分かると思うけれど、魔王は国の代表ね。いわゆる王様。昔は一人だったんだけれど、政治が絡んで分裂。結果、一国に一人魔王が誕生するという結果になった。
「ペアレンツ。報告を。イストレアに魔王が誕生してしまった事を報告せよ。」
「はい!報告します。3日前にイストレアに魔王が誕生しました。その名前は・・・。」
「待てよ!」
シェイドの魔王が私の子供<主>を指名して報告させようとする。しかし、それを他の幹部が止める。
斧の十二騎士であるアルクシェイド。魔王の息子だ。
「何よ。アルクは私が報告するのが不満?」
「いや、ここに居る面々は皆情報網を持っているが、皆別々の答えしかもっていなかった。なら、何が本当の事か分からないだろう?だから潜入しているお前が一番情報として価値が高い。なら、ゲームをしないか?」
急にゲームとか、この場を楽しむという神経がわからないわ。まあ、いつもの事だけれども。周りを見ても反応はいつもと同じ。といってもここの面々は皆ぶっ飛んでいる者が多い。私は違うと思いたいけれど。
「ほうほう、では答えが出そろった為、俺が正解者には金貨1000枚やるよ。で、ペアレンツ、正解頼むよ。因みに正解者いなければお前に金やるよ。」
「へー。意外と太っ腹ですねー。いいですよ。じゃあ、答えです。フェリド、レイフォード、ミスズ、ロドス、カナデ。この五人共が皆魔王になったのです。」
どよどよと回りがざわめく。まず国の運営に関して複数が魔王になるなんてありえない事だ。何故なら魔王の力というのは、魔王候補の力を5つ集めた時に真価を発揮する。それを5つに分けるなど、弱体化を意味する。ただのバカか、よほどの蛮勇の持ち主だろう。簡単に他の魔王に侵略されるだろうから・・・・。イストレアには魔王候補に恵まれなかったという情報があったが、これはかなりひどいのだろう。
しかし、さっきから気になっているのだけれど、カナデという名前・・・・。う、頭が痛い。私は生まれてこのかた、過去一年間の記憶しかないわ。いつの間にかこのシェイド帝国の騎士としてペアレンツと一緒に行動している。私は天からの使いだって主であるこの少女は言うけれど、本当なのかしら?
「まあいい、ペアレンツ、そのままイストレアを調べよ。」
「は!魔王様。仰せの通りに。」
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事務事項のみで会議が終わり、子供と一緒に会議室を出る。
「お疲れさま。」
「おかーさんもお疲れ様!ねえねえ、帰ったらまたはちみつのミルク作ってね!」
「ふふ、あれ、大好きねー。」
私は家に入る。会議室は転移の魔法で直ぐに家に繋がっているちなみにこれは私と主しか使えない。
「はい、出来たわよー。」
「わーい!」
温めた牛乳にはちみつを入れるだけの簡単な物なので直ぐに出来る。
その時、ジー!という呼び鈴が鳴る
ドアを開けると十二騎士である一人が立っている。会議が終わって直ぐに来たのだろう、肩で息をしていた。
「先生。入っても?」
「ええ、いいわ。後、その先生って見覚えないんだけれど・・・・。」
この子は私の事を頑なに由里子先生と呼ぶけれど、私は全然分からない。ただ、何となく懐かしい感じがする。何故かはわからないけれどね。このこが席につくと、直ぐに話始める。
「先生。さっきのカナデって覚えてます?」
「いいえ、何かもやもやしますけれど・・・・。」
するとその女の子はぱーっと笑顔を輝かせる。
「そうですか!それはいい。あなたは記憶をなくす前はその子と面識があったんですよ。」
「へ?何を言っているの?私はまだ一年前に天から召喚されたんですよ?」
すると面白い位にへこんでいるのが分かる。何だろう?
「一応、天から召喚される前の記憶の事です。」
「それはここでは不純な情報だからって事で記憶を消しているんでしたっけ。でもなんであなたが知っているんです?」
「それはあなたと、私と、カナデって奴が一緒の国に居て、異世界召喚というのに巻き込まれたからです。それが天から召喚された時の事です。で、あなたがその時の記憶があると、敵に温情を掛けてしまうという理由からペアレンツ様が記憶を制御しております。だけれど、敵の情報を引き出すのに思い出す必要があるとは思いませんか?」
「えっと・・・・。それは・・・。」
私は思い出してもいいけれど・・・。だってこのシェイド帝国に味方する以外の選択肢はないのだから。敵に温情を掛けるつもりはなかった。
「その必要はないわ。おかーさんは私と一緒。その情報はあなたが提供すればいいでしょう?おかーさんの記憶は必要ないわ。」
いつの間にか主がそばに立っている。十二騎士である子は明らかに動揺し、歯噛みして悔しがっているようだ。どうやらこの子は私に記憶を取り戻させたいみたい。あきらめてもらいたいから、きつめに拒否しようかしら。
「私にはその記憶は必要ありません。なので、そのカナデ?の情報提供だけお願いしたいのですが。それで記憶を取り戻す必要性が無くなるので・・・。」
「わ、分かりました。後日纏めて書類にて提出させていただきます。では私はこれで・・・。」
その子は肩を落としながら帰る。魔法を使っていた事から気が付くが、部屋に魔法を掛けて、精神をあやつり、私はその子を別の部屋に案内していた。つまり、主と隔離されていたという事に気が付く。因みにドアにも魔法でロックが掛かっていた。そして防音機能もついていたのか主が魔法でこじ開けようとした跡も残っている。二人で話していた部屋の壁以外が真っ黒になっていた。勿論火の魔法だろう。
「あー。掃除大変そうね・・・。」
「助けてあげたんだから感謝してよね・」
そういって主は部屋を出て、自室に籠る。
しかし、今日はよく心がざわめく・・・。疲れているのかもしれないから早く寝ることにしましょう。