商売5
エメリアは風を使うのが得意。
ー奏ー
インキュバスの魅了の光を受けたエメリアはぼーっとしている。もちろん魅了は状態異常だ。この世界には、本人の意思と関係なく作用するものが多くある。その一つに状態異常だ。
「さーて、どうかなー。ミラが教えるからてっきりばれたと僕チン思ったけど・・・・。」
「あー。キンはひどいんだー。私の精にするんだー。」
キンと呼ばれたインキュバスがエメリアの元に近づく。しかし、エメリアは抵抗できないのか、そのままキンに抱き着かれる。僕はそれを見てからわざわざ止めようとする。しかし、左腕に柔らかい感触が・・・・。
「ねー、君が奏だよね?あっちはあっちでお楽しみだから、こっちは私と楽しむんだー!」
ミラと呼ばれたサキュバスが抱き着いてくるけれど、僕は意に介さず、インキュバスのキンの首の後ろに剣で攻撃を防ぐ。’きーん!’と甲高い金属音が鳴り響く。いつの間にかキンが抱き着いていたエメリアは消え、キンを斬ろうとするエメリアが僕の剣で攻撃出来なかった為、こちらを睨んでくる。このインキュバスを助けるにしても、死ぬ前にヒールで助ければいい。でも、それをしない理由があった。
その理由をエメリアは、僕がサキュバスに魅了されていると一瞬思ったみたいだ。ちなみに僕が建てた家は常に状態異常やケガを感知して治るので、例え魅了状態、毒状態になっても、一瞬で治る。
「エメリアちょっとまって。そしてお二人もちょっとタンマ!」
風魔法で幻影を作成し、背後から攻撃する。『夢幻』というエメリアのオリジナル技を停止させる。
「えっと・・・。奏・・・。そのサキュバスに何か言われた訳ではないのね?で、その・・・・。とっても言いにくいんだけれど、奏。状態異常にかかっているよ?」
「え?この家では状態異常は瞬時に治るから、状態異常じゃないよ?」
「「「・・・・・・・・・」」」
え?なになに?三人からじーっとみられる。なんか居心地悪すぎる。まあ、話をしよう。きっと聞いてくれるから・・・・。
「で?かなで君って言ったっだ?お金の話?」
「ミラ・・・・。人間でいうお金の話しかないだろう。」
「うーん。状態異常、金欠?奏・・・・・・。」
え?何この反応。お金大事。うん、そう、目がお金になっていたようだ・・・・・。
「良し、確認だけれど・・・・。」
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・・・
「かくかくしかじかまるまるうまうま」
「え?奏。わからないよ?何かの呪文?」
エメリアが可愛く首をかしげる。しかし、呪文ではない。本当の説明をエメリアには隠蔽したいのだ。
「へーーー!なるほどだ。その条件なら私はのるのだ。仲間にも声かけてみるのだ。」
サキュバスは確保。こっちがある程度本命。だから商談が成立してよかったよ・・・・。
「ふむ。しかしなー。うーむ。まあ、仲間にも声をかけてみるかー。俺はエメリアちゃんくれるっていうなら考えてやってもいいぜ?・・・・・・・じょ、冗談だろ・・・・。手は出さないぜ。」
エメリアのことを引き合いに出した・・・・。というか、条件に出した時点で死刑にする所だった。
取り敢えず条件は整った。これで明日から本格的にオープンし、目玉もそろった。
「じゃあ、二人とも僕が『テイム』するね!」
二人に近寄って二人を『テイム』する。微妙ににやりとサキュバスが笑ったように思えたのだが・・・・。
「ふふふふ。あっはっはっはあは!かなでおにいちゃんおんもしろいのだー!」
急にミラが笑いだす。エメリアと僕は顔を傾ける。何が面白い要素があるのだろうか・・・・・。
インキュバスの方はあまり面白くなさそうにしていた。何か知っているようだ。しかし、直ぐに同じように首を傾げる。なんだ?この反応は。因みにサキュバスもインキュバスも半分魔物なので、『テイム』は普通にできるはず・・・・。
「サキュバスは女性しか、インキュバスは男性しか契約を普通はしないんだよ?簡単に言うとこの契約は奴隷にするって意味だから、女性がインキュバスを。男性がサキュバスと契約すると、反転してしまうの。つ・ま・りー。今かなでおにいちゃんは私の奴隷だ!」
「「なにー!」」
そんなの初めに言ってくださいよ!この契約どうにかなんないかな?奴隷とか無理だよ?何されるの?
「あははは!じゃあ、かなでおにいちゃん。服脱ぎなさい。」
「え、いやです。」
「抵抗できないでしょー。そうだよね・・・・。そ・・・・んなー!なんで?かなでおにいちゃんは女の子だったのーーーー!?」
衝撃を受けたようにミラが驚く。目が飛び出る位だ。ちょっと引きました。童顔だったけど、かなりの変顔いただきました。まるで綺麗な女子アナの変顔見たようだ。
「エメリアちゃんを襲え。」
「え、うーん。今はいいや。」
急にインキュバスが実験をするから驚くが、僕は動じない。じゃあ僕も実験するか。
「キンとミラで握手して。」
「「い、い、い・・・・・・・はい。」」
急に握手しだす二人。必死に抵抗しているようだが、体が勝手に動くようだ。これは面白い!
「んじゃあ、僕は寝るから、他の子達にこの話持って行って。」
「「了解しました(だ)」」
そうして手を繋いだまま出ていこうとする。そして二人してこちらを見て、凄い形相で訴える。
「「この命令早く解除してくれ!(してだ!)」」
「「おお、面白い!!」」
エメリアと僕はちょっと面白いこの光景を暫く目に焼き付けてから、握手は止めてもいいと命令をした。
「ちょっと面白いことになったね!でもあの二人どうするの?」
「さあ、秘密だよ。それより、もう、朝まで時間あるし、寝るけど・・・。」
「その・・・。もうサキュバスは襲ってこないから、部屋で寝るね?」
エメリアは部屋を出ていく。しかし、僕は今まで僕のベッドに潜ってきたり、朝に弱かった原因を見たのでエメリアに声を掛けることにした。
「エメリア。」
「ん?なーに?」
「ありがと」
「う、うん」
エメリアは顔をこっちに見せずに部屋を出て行った。
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翌日はエメリアはベッドに潜ってきておらず、玄関の前にはサキュバスとインキュバスが集まっていた。
朝食を食べ、着替えてロドスとの集合場所であるダンジョンへと向かった。
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「ろどすー!」
先に来ていたロドスに手を振る。ロドスはこちらに目を向けると目が飛び出るほど驚く。あ、どっかで見た顔やー。
「な、サキュバスとインキュバスか?どうしたんだ?」
「僕が全て契約したー。」
「は?サキュバスには契約した瞬間奴隷にされるが・・・・・・。エメリアたんを巻き込んだ訳じゃねーだろうなー。」
余計な心配を掛けてしまった。青筋を立てて怒るロドスに手を振りながら否定する。
「違うよ。僕一人で全て契約したんだ。サキュバスもなんか知らんけど出来た。」
「出来たって・・・・・・・・・・・・・。もう、俺はお前の事が分からん・・・・。」
「でもでも、これで客寄せの一つになるよ?」
「ほーう。精を吸うことしか頭に無い淫魔をどう扱う?」
興味なさそうなロドスに計画を耳打ちすると、ロドスは咳き込む。背中を擦ってやるとロドスがこちらを向く。かなり神妙な顔だ。しかし、急に破顔してだらしない顔になる。
「まさかお前がこれを考えて来るとは・・・・。俺はお前のことが分からん・・・・・。が、商売にはなるな・・・・・。」
よし、ロドスもオッケー。後はオープンするだけだ。
エメリアは風(幻属性)を使うのが得意・・・ではないけれど、光の屈折を利用する位には出来る。ちなみにキンさん。奏を警戒して色々しなかったけれど、幻惑のエメリアに手を出していたら今頃ミンチ。
皆様も女性は丁重に接しましょう。