商売1
今度はロドス回
女神スクルドとの話を終えた後、僕たちは深刻な問題の解決に向かう。僕とエメリア、みーさんとヘクトール、その子分とミルが机を囲んでいる。
「私はお店をひらくね!」
エメリアは機嫌良く言う。どうやらお店を経営したいらしいけど、商売が簡単には行かない。最悪多額の借金抱えて終わりの場合もある。というよりはそれが多いよね。
「それは止めよう。素直に何処かでお店に雇われた方が堅実かな。」
「むー。得意な料理でレストラン出したかったのにー。」
戦慄走る。
この場にいるエメリア以外全員がそれは阻止しようとアイコンタクトをする。不味いというよりは、先ず食べ物が出てくるか不安になるレストランは嫌すぎる。
「そ、それより何故冒険者業でお金稼ぐのいけないのですか?」
ヘクトールは話題をそらす。
「ナイス話題反らし!冒険者の仕事だけじゃあ安定しないから。」
「たしかに安定しないですが、リスク覚悟で、望めば大金も…。」
「ねえ、何の話題反らし?私のレストランの話は?」
みーさんが尤もなことを言う。
「全く無いんだよ。最近全く高額の仕事が!他の仕事も他の冒険者が奪い合ってる状況だし。」
「そもそもお金無いのは奏のせいでしょ?ホームレスの子供たちに食料配るから…。まあ悪い事ではないけど、それで私達が食べれなかったら本末転倒じゃない?」
「そう言われると、きついけど。ミルはそれを止めろと?」
「最悪は。でも、奏がこの話を持ってきた時点で何か解決策を持ってきてるんじゃないの?」
まあ、確かに。ただそれは自分の分だけだ。
「僕はこれから考えていることで金策しようと思ってるけど、他の皆はどうかな?って…。」
「なら、俺とみーで冒険者ギルドに当たってみますよ。一時的な物かも知れないんで。また、ミルお嬢の領地経営の手伝いもしていきます。」
「私はヘクトール様が言ったように領地の運営を。と言っても、スラム街がほとんどだからほぼ収入零なのよねー。」
本当は領地経営は上手く行けばお金は多く入る。しかし元々魔王候補の四人が良いところを治めていた。スラム街とかは完全放置。新参者の奏が入れるのはそこしかなかった。僕もかなりてこ入れしたけれど、まだまだ犯罪率は高い。貧富の差が大きかった。
「それじゃあ三人は頼んだ!」
「レストランの名前はシルフィ」
「「「「「開店自体却下!」」」」」
全員で否定する。しかしエメリアはへこたれない。
「わ、分かったわよーー。じゃあ穴熊亭でバイトしてくる。」
僕はみーさんにアイコンタクトを取る。絶対厨房に立たせるなと。みーさんは頷いて早速動いた。
※※※※※※※※※※※※※※※※
僕はロドスの所に行く。
ロドスは訓練所にいた。ロドスは主に衛兵や騎士団を鍛えている。そこに顔を出すと、一ヶ所に皆集まってきていた。
大変だ!とか声が聞こえる。
「どうかしました?」
声を掛けると、回りから睨まれる。僕の顔知られてないから不審者扱いなんだね。
「お!奏。良いところに。実は怪我人がでてよー。俺らのヒールじゃあどうしようもないんだ。助けてくれ!」
肩が10センチほど割けている。どうやら剣か何かで切り裂いたようだ。この世界ではヒールの魔法はそこまで珍しくない。覚えようと思えば簡単だ。しかし、それだけではレベルを上げられないから、他の魔法を覚える。ヒールは何故か他の魔法を覚えると威力が下がるのだ。だから誰もが気休め程度に使う人が稀にいるくらい。効率悪いヒールなら、攻撃魔法で敵を倒すか、ポーションを飲んだ方が絶対良いのだ。
「ヒール!ほい。直ったよー。」
僕はヒールで傷を完全に治す。すると周りからは奇異な目で見られる。ヒールが使えると言うことは、ほぼ戦えないということと同義なのだから。お礼は口々に言われるけれど、ちょっと引いている人もいる。
「奏、助かった。ついでに周りの皆の傷もお願いできる?」
「うん!いいよ!はい。これで病気も消えるから。色々治しておいたよ。」
二人ほど癌だったし、ほぼ全員弱毒に犯されていたので治しておいた。
「よし、今日の訓練ここまで。それじゃあ奏。要件を聞こうか?」
さて、奏は何をしでかすでしょうか