れんさ
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「あのさ」
俺の横で彼女が耳に囁く。
ベッドの上なのだからそなるのも当然だろう。
「ん?なに?」
けだるげに俺は彼女の質問に答える用意をする。
仕種でもごろりと裸の胸を彼女に向けた。
「私、愛されてるのよね」
「何を急に言い出す?」
きょとんとした目で俺は問い返した。
いささか間抜けな応え方だったか?
「俺が何かしたか?」
「ううん、そうじゃないの」
やおら彼女が俺の腕に彼女の腕とさらけ出した胸とではさみ、すがりつくように訴えた。
「私ね、怖いの。あなたが『愛してる』っていってくれるのはすごくうれしいの。でも・・・・・」
さっきまでしていたことを反芻したか、少しだけ上気した顔を向け、彼女は俺の手をゆっくりと下腹部へと導いた。
「んっ!・・・・・」
敏感な部分に指先が触れたのか小さなあえぎをもらす。
「はぁ、こうしてずっとしてたいの・・・・・ずっとそばにいてほしいの」
彼女は必死になって俺に哀願する。
それに呼応するように彼女の手は俺の手とともに下腹部のあたりを貪るように動かし、それと同時に、吐息のリズムが激しくなっていく。
何かを忘れたいかのように。
「ん」
俺は彼女の一途さに感謝の意のために軽く口づけする。
「ねぇ、私、いちばん、よね?」
あえぎながら彼女は問う。
「もちろんさ」
俺はそれに問い返す。
しかし、頭の中は恐ろしいほどに静かであった。
彼女が上気し、あえぎを漏らし、こちらもそれに対して、指を舌を器用に動かして、ゆっくりと背を、下を、腹を、胸をもみ、なぞっていてもだ。
(このあとはどうしようかなぁ・・・・・)
ふと、さっきの彼女の言葉を反芻する。
「いちばん、よね?」
それは当然である。
嘘は無い。
しかし、それと同時に彼女にはベッドに入る前の雑談にて、おれは腹蔵なく、こういった。
「そうそう、けっこう楽しんでるよ。あとなぁ、男と女とではどうもな、女のほうが話し易くてな。けっこう楽しくやってるよ。おまえもな、やはし、女の子同士ってのもあるけども、けっこう話し方も柔らかくてなぁ」
それが何かに触れたのかもしれない。
だが、仕方が無い。
俺は別に彼女を愛していないというわけではない。
ただ、それ以上の興味が無いというだけである。
とりあえず求められれば抱きもするが、どうもなぁ・・・・・
「あっ、あっ、あっ・・・・・・」
リズミカルに息を吐く彼女。
俺はそれをなんともなしに見ていた。
時間は過ぎ
「ねぇ、また来てね」
ちゅっ
唇にキス。
「ああ、きっとな」
そういって俺はその家をあとにした。
そしてにこやかな顔は一変し、このあとの予定を考え始めた・・・・・
「次はあいつの家でも行こうかなぁ。まぁ、あいつも一番だし」
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題名の正式名称は『恋詐』です。人の心理は信じようとする気持ち・信じたいという気持ちより、願う希望と降りかかる現実は違うことかもしれませんね。