私が育てた結果
勢いで書きました。
突然ですが、私は異世界転生してしまったようです。しかも獣に。
日本に住む平凡な女子高生であった私は、ある日気が付いたら小さいモフモフした生き物達と一緒に丸くなって寝ていました。最初は訳がわからなかったんですけどね、自分の手を見てみたら他のモフモフと同じ手をしてたので獣に転生したと直ぐに理解しました。
ちなみに異世界だとわかったのは、今世のお母様の額に大変立派な角が生えていたからです。お母様は茶虎の猫に琥珀色の角を持った魔獣でした。
私は純白の毛皮に真珠色の角です。森一番の美人さんと評判ですよ。主に家族からですけど。
私の種族は成長したら一人立ちして生きていかなければなりません。例に漏れず、私も家族と別れて1人(1匹?)で暮らし始めました。
魔獣である私は魔術も使えます。お母様から学んだことに加えて、前世の知識から改良した魔術を使い、気が付けば森の中でも有数の実力者として君臨していました。
森の中で悠々自適の生活を送っていましたが、ある日困ったことになりました。人間の子どもが私の縄張りに捨てられたのです。
ここは人間達の間で魔の森と呼ばれるほど魔物の多い森です。今は私の縄張りの中ですから私が命じない限りあの子に危害を加える者はいないでしょうが、私の縄張りから出てしまえばそうはいきません。事実、縄張りの外から物欲しそうに見詰める目が複数ありますしね。
捨てられた子はとても良い身なりをしています。かなり良い家の子でしょう。そんな子が魔の森に捨てられたのです。人間社会に返しても直ぐに殺されてしまうでしょう。流石にそれは後味が悪いので、私はその子を拾って育てることにしました。
月日が流れるのは早いもので、子どもを拾ってから10年が経ちました。当時5歳であった子も15歳になりました。私が思い付く限りの自衛手段を叩き込みましたから、もう1人でも大丈夫でしょう。そう思い、私は子どもを人間の世界に返すことにしました。
拾った子は男の子で、当初はちょっと暗い子だったんですよ。殺されかけていたのだからそれも当然でしょうけど、長い時間をかけて心を開いてくれてからはそれはもう笑顔の素敵な美少年に成長しました。きっと周りから愛されて幸せになれるはずです。
それでも少し心配だったので、本人が淋しがったこともあり、しばらくは私もついていって様子を見ることにしました。我ながら過保護とは思いますが、長く人間と接することがなかったので上手くやっていけるか確認したかったのです。
無駄な心配でしたけどね。実は侯爵家の長男だった彼は、あっという間に周囲に溶け込み、人脈を築いていきました。
国立の学園に通い学友もできて、最近は可愛い女の子とも仲良くしています。私が教えた魔術は魔物特有の物だったらしく、新しい技術を広めた彼は有名になり、国からも認められる人間になりました。
心配だからと理由をつけてズルズルと彼の側に居続けましたが、そろそろ限界でしょう。もうすぐ彼は18歳になり、成人します。侯爵家の跡取りとして結婚も視野に入れなければならないのです。そこに得体の知れない魔物がくっついていては纏まるものも纏まらないかもしれません。事実、彼と中の良い女の子は時折ものすごい顔で私を睨んできますからね。
いつの間にか彼の為ではなく、自分が彼の側にいたいと願うようになってしまっていたようです。名残惜しいですが、きちんと子離れしなければ。
成人式を終えた彼にお祝いの言葉をかけて、もう私が側にいる必要は無いだろうから森に帰ると告げました。彼は少し寂しそうに笑ったあと、綺麗な首輪を私の首に着けました。
あれ?
訳がわからず固まる私に、見たことが無いほど綺麗な笑顔で彼は話しかけます。
「きっといつかそう言われると思ったから準備しておいたんだよ」
どういうことでしょうか?彼の笑顔が怖いです。
「私の伴侶は君だけだと決めていたから」
いえ、私魔物ですよ?猫型ですよ?種族が違いすぎるでしょう!
「そんなことは些末な問題だよ」
いやいや、君は嫡男でしょう!跡継ぎを作る義務があるでしょう!周りの人間が許すはずがありません!
「大丈夫。爵位は弟が継ぐことになったし、陛下の許可も貰っているから」
いつの間にそんな根回ししたんですか?それに私の意思は無視ですか?
「一生君だけを愛し続けるからね。浮気したら許さないよ」
その腕に着けてる腕輪は魔道具ですね。え?私の首輪と対になっていて一定以上離れられないのですか。そうですか。
「逃げられると思わないでね。もし逃げたらお仕置きだよ?」
ああ、なんということでしょう。私が育てた結果、彼はヤンデレになってしまったようです。一体どこで育て方を間違えたのでしょうか。
彼は魔物の倫理観で育ったので種族の違いに頓着しません。教え忘れた彼女のミスですね。
気が向けば連載化するかも。




