がむしゃらの代償
この世界には、空高くずっとずっと続く階段があるらしい。
誰かが言っていた。それを上りきれば皆がそれを称えるだろうと。
今、僕の目の前にはその階段がある。
何の取り柄も無い僕は、誰かに称えられたい褒められたいと、
その階段を登り始めた。
一段目 二段目 三段目。
自分が頑張ればどんどん登っていける。僕は嬉しくなった。
こうして登り続ければ、皆が僕に笑顔を向けてくれる。僕はどんどん登った。
どれくらい登っただろう。下を見てみれば、もう全てがアリみたい。
あれ? 誰か登ってきている? 何の為に?
そうか、わかった。僕の邪魔をしにきたんだ。
なんで邪魔するんだよ。 僕はただ誰かに笑って褒めてもらいたいだけなんだ。
邪魔をされたくない僕は、履いていた靴を下に投げた。
かぽーん
小気味良い音と共に、靴は下の誰かに当った。
ひゅー
誰かは驚いて足でも滑らせたのか、落ちていった。
ふぅ、これで安心だ。僕はまた上を目指した。
僕が一番になるんだ。邪魔をするヤツはやっつけてやる。
あ。邪魔者をやっつけて暫く登った頃、僕が一番になる場所が見えてきた。
やったやった。これで皆が僕を褒めてくれるよ。だってこんなに頑張ったんだもの。
ほら、ここには僕しかいない。僕が一番なんだ。
そう、僕しかいない。
僕しか・・いない。