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Day 107   ゴブリンとの戦闘

12/20 一部修正

 シーリスを出発してから3日目。


 旅は順調に進み、このまま行けば今日の夕方にはスタディルに着く。


(道中やけに魔物が少なかったおかげで大分早く着くな……)


 最初俺はそのことに薄気味悪さを覚えたが、ゴウさんとキリアさんによると10回に1回ぐらいは今回のようにスムーズにいくらしい。


 俺も別にどうしても魔物と戦いたい訳ではないのでその話を聞いた後は楽でいいかと思うようになった。


 もう1人のBランク冒険者は魔物と戦いたがっていたが……


 まあ、あいつはどうでもいい。お互いに自己紹介を初日にしたがもう名前を忘れた。そもそも覚えようとも思わなかった。


 才能も実力もあるが増長している。慎重さがまるで足りない。護衛依頼なのに戦いたがる、つまり依頼内容を理解していない。そんなのに下手に関わるとこっちが危ない。


 それがこれまでの道中で抱いた感想だ。自分の力を過信しすぎている。遅かれ早かれああいうやつは野たれ死ぬことになるだろうな……


(無謀と勇敢さを履き違えてる様なやつだからな~ ゴウさんたちみたいに慎重なベテランの方がよっぽど信頼できる)


 2人の娘であるレイアは経験が浅いせいか違うが、両親は慎重だ。他人に深入りしようとしない。気になることがあっても聞くのを我慢する。


(あの夜の時色々聞いてくるかとも思ったんだけど結局終始無言だったしな~)


 そのことが俺の中での2人の評価をさらに上げた。


「そろそろ休憩を取ります。 昼食の準備をしますので出来上がりましたら各自取りに来て下さい」


 と、依頼主が全員に声をかけた。


 もうそんな時間か。考え事をしながら歩いていたから気付かなかった。(その間も安全確保のために【索敵】はしていたから依頼を放棄していたわけではないが)


 時計を見ると正午を少し回っている。


 俺は他の冒険者に倣って、休憩を取ることにした。


「それにしても今回は道中順調で楽だな」


「でもそういう時に限って最後の最後で厄介事起きね?」


「ああ~そうかも」


 俺が座った近くにいるCランク冒険者、ジャッシュとケビンの話し声が聞こえてくる。


 ……フラグが建った気がするんだが気のせいだよな?



**********



 その後も順調に進み、スタディルまで後1時間といったところで問題は発生した。


 最初に気づいたのはキリアさんだった。おそらく【索敵】持ちで、俺よりスキルのレベルが高いのだろう。


「……っ!? 全員注意してください!! この先にゴブリンの群れがいます!!!」


 その言葉に俺も索敵範囲を広げる。意識して使えば通常時よりも広い範囲が知覚できるため確認できるかもしれない。


「……ああ、これは厄介だな」


 俺は思わず溜息をつく。フラグ回収だよ……


 俺が発見できただけでも10体は超えている。キリアさんの反応からするともっといるだろう。


 ゴブリンはいろんな意味で厄介な魔物だ。強さの割に得られる経験値が少ない、素材の使い道が殆ど無い=売っても安い、繁殖力が無駄に高い、原始的だが組織的な行動をする、女をさらうなど嫌われる要素が盛りだくさんだ。


 俺もあまりにメリットが低いため、好き好んで戦おうとは思わない。


「ゴブリンが確認できただけで30体以上…… 上位種のゴブリンチーフやエリートゴブリンもいます」


 キリアさんが報告を続ける。


「それだけじゃねえな。 その規模の群れなら十中八九ゴブキンもいるぞ…… 此処まで来てめんどくせえな、ったく……」


 その言葉に頭を抱えたくなる。ゴブキン……コブリンキングはレベル50前後の魔物だ。まともにやったら(・・・・・・・・)俺では敵わないだろう。


 まだ距離があって向こうに気づかれていないのだからスルーしたいが、群れの進路上にはスタディルがある。戦うことには変わりない。


 今の理想はスタディルにいる冒険者と挟み撃ちにすること。次善としては薬で動きを鈍くしたところを叩くことか……


「どうし「はっ、ゴブリン如き俺様の敵じゃねぇ!! 全部まとめて蹴散らしてやるよ!!!」ま………はぁ」


 ああ、Bランクの馬鹿が暴走して走って行った。これじゃあ痺れ薬が散布できないな。


 ゴブリンはレベル5~10、ゴブリンチーフは15~20ぐらいだったはず。エリートゴブリンは25~30だったか。なんにしても苦労しそうだ。


「さて、1人突っ走ったのがいますけどどうしますか? さすがに全員でゴブリン狩りに行く訳にもいきませんし誰が残ります?」


 とりあえずランクが上の者に指示を仰ぐ。低ランクのやつが仕切るわけにもいかないからな。


 護衛対象の商隊から全員離れるわけにもいかないから残って護衛する人がでてくる。正直残りたい。


「B階層とC階層がゴブリンの相手を、D階層が残って護衛とします。 あなたもそれでいい?」


「まあ、それが妥当だろうな…… D階層のやつじゃあエリートゴブリンがいる群れの相手は厳しいだろう」


 ランクが高いゴウさんとキリアさんが中心となって残った冒険者に素早く指示を出していく。


 指示通り4人がゴブリンの群れの方へ向かい、俺を含めたD階層の3人と商隊がその場に残った。馬鹿が突っ走ってから30秒ぐらいか?さすがに判断が早い。


 鑑定で見たところレイアはレベル31、もう1人のD階層である青年、ジョンは42だった。


 俺やレイアだったらエリートゴブリンの2、3体で手一杯だろうから残すのは正解だ。ジョンだったらゴブリンの群れが相手でも何とかなりそうだが、護衛の事を考えると残ってもらうのがベストだったろう。何時高レベルの魔物に襲われるか分からないからな……


 俺は【索敵】で周囲を警戒するとともに、腰のベルトに取り付けてあるスローイングダガーを取り出してちょっとした細工をする。


(保険は大事だからな……)


 ゴウさん達がいない以上格上相手の警戒は重要だ。可能性が低いからしないのでは万が一の時になす術もない。


 実際、用心のおかげで救われたことがこの3ヶ月の間で何度かある。


そして今回も


「っと、用心して正解か――」


 ゴウさん達がゴブリン討伐に向かってから数分後、索敵圏内に敵が来た。方角からして敗走したゴブリン達だろう。


「7、8……全部で13体か…… ゴブキン混ざってるけど逃がしたのか……」


 思わず溜息をつく。準備をしておいてよかった。


 レイアとジョンに声をかけ、迎撃の準備をする。敵の移動速度を考えると30秒前後で戦闘になるだろう。


「ゴブキンは俺が相手するから他のやつらは任せる」


「えっ!? 僕が相手をした方が良いんじゃないかい?」


「大丈夫、問題無い……」


 心配そうなジョンをしり目に俺は細工をしたスローイングダガー3本を構え、ゴブリンキングが射程に入るのを待つ。レベルの事を考えれば1番高いジョンに任せるのが普通だろう。だが、レベル差的にまともにやっても誰もゴブリンキングには勝てないのだからそれほど悪い選択でも無いはずだし、俺には勝つ手だてがある。


 やって来た魔物のほとんどは傷を負っていた。ゴブリンキングさえどうにかすればこの数でも何とかなるだろうと判断した。


「………シッ!!」


 射程に入ると共に全力で投擲。幸い(・・)ゴブリンキングは避けることをせず左腕を盾代わりにして攻撃を受けた。その腕に3本のダガーが突き刺さる。


「ゴアアアァァ!!!」


 俺の攻撃で頭に血が上ったのかゴブリンキングが咆哮し、さらに速度を上げる。それを見て俺は薄く笑う。


「はあっ!!」


「てぇい!!」


「《エアショット》!!」


 他の2人がゴブリン達と戦っているのを確認しつつ、風の下級魔法エアショットをゴブリンキングに放つ。


《エアショット》……大気を圧縮して敵に放つ魔法だ。イメージ的には見えない何かが高速で突っ込んでくる感じだろう。


 それが胴体に当たり、若干後ずさるゴブリンキング。ますます頭に血が上っている。


「さて、やりますか……」


 右手に片手剣、左手に短剣を持ち、構える。


 突っ込んでくるゴブリンキングを見据えながら心の中でカウントダウンを進める。


(20、19、18、17………)


 ゴブリンキングの攻撃をステップでかわし、不必要な程距離を取る。再度繰り出される攻撃を今度は剣で受け流す。


(10、9、8、7………)


 1撃1撃が俺にとっては即死級の威力を持っているだろう攻撃を辛うじて捌いていく。避け、防ぐことに集中し、攻撃を考えないからこそできる行為だ。だが、それでもこんなことが長く続くはずもない。現に攻撃が掠り、少しずつだが確実にダメージを受けている。それでも……


(……3、2、1、0!!)


 心の中のカウントダウンが0になると同時にバックステップで大きく後ろに下がる。


 それと同時にゴブリンキングがその場に倒れ伏す。何が起こったのか訳が分かっていない表情だ。


「……【隠密】」


 ゴブリンキングの視覚の外に移動し、スキルを発動する。


 これによって俺の気配が消え、動けないゴブリンキングは俺を見失う。


(んじゃ、さようなら……)


【暗殺術】アーツ・《首狩り》


 その名の通り首に攻撃することで相手を即死させるアーツだ。当然失敗することもあるが、不意打ちなら先ず即死する。


 俺を見失ったことで不意打ち扱いになったため《首狩り》はしっかり成功し、ゴブリンキングの頭があっさり胴体と別れた。


「ふぅ……」


 最初放ったスローイングダガー……あれには痺れ薬が塗布されていた。


 レベルが高く、図体もでかいゴブリンキングだったために3本用いたのだが、計算通り効いてくれて良かった。


「さて、2人の援護をしますか……」


 2人の方を見ると格下相手だが数のせいで時間がかかっているようだ。


 それでもそれぞれ得物を振るい、半数以上倒している。


「はっ!!」


 とりあえず1番近くにいたゴブリンに斬りかかる。【隠密】を再度使用してからの攻撃だったので倒したゴブリンは何が何だか分からない様子だった。


「とっとと終わらせようか!!」


 そして俺はすぐさま次の獲物との戦闘に入った……




 ゴブリンを全滅させる頃にゴウさん達が帰って来た。1人を除き全員無事だ。


 話によるとその場に残っていたゴブリンの一部に足止めを喰らっていたらしい。


 暴走した馬鹿は片目片腕を失う重症。ゴウさん達がついた後、なおも独断専行し蛸殴りにされてたそうだ。


 それを庇った隙をついて勝ち目が無いと悟っていたゴブリンキングを含む一団が逃走、こちらに来たということだ。


 それから俺はどうやってゴブリンキングを倒したのか質問されたので正直にやり方を答えておいた。


 あまり手の内を明かしたくないが下手に険悪になるよりはましだ。なんの準備も無く勝てる相手がレイアぐらいしかこの場にいないことだし……


 それから再び移動を再開し、ゴブリンの群れを撃退してから1時間後、俺たちは学術都市スタディルに到着した……


この世界では自分のレベル+5が適正レベルで、それ以上に勝つのは難しいとされています。

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