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Day 3   初依頼

 翌日、朝食を取った俺たちはギルドで依頼を受けることにした。


 依頼内容はワイルドウルフ15体の討伐。ランクはEで報酬は銀貨6枚と銅貨50枚。


 俺の装備は革のロングコートにベルトに差したショートソード。


 神田も昨日買ったのかレザーアーマーを着て腰には見慣れないポーチをつけている。


 なんでも俺たちが持っている鞄と似た効果のあるもので、冒険者なら大抵持っているらしい。


 その中でも神田が買ったのは比較的安いものらしく、合計10Kgまで入って100g程の重さだとか。




 シーリスを出てから1時間程経ち、俺たちはワイルドウルフがでる森に辿り着いた。


 ワイルドウルフは大型犬の様な姿で、戦闘能力もそれほど高くない。というよりシーリスに着くまでに何体か倒している(神田が)。


「それじゃ影野くん、索敵よろしく」


「はいよ」


 神田の声に答えながら周囲の気配を探る。


 そこまで遠くの気配は感じられないが幸いにも探知圏内にワイルドウルフの群れがいた。


「此処からまっすぐ100mぐらい先にいる。 数は9体。 神田が弓で攻撃した後突っ込むから援護頼むぞ」


「分かった」


 神田は短く答えると弓を引く。


 【鷹の眼】のおかげでいると分かっていれば100mくらいなら見えるらしい。


 ふっ、と息を吐きながら矢を放つ。俺には当たったかどうかなんて見えないがとりあえず剣を抜き、敵に向かって突っ込む。


 俺の脇を矢が通り過ぎていくのが怖いが止まってはいられない。目の前にはこちらに向かって来ている魔物がいるのだから。


 矢はしっかりと当たっていたようで、2体少なくなっている。


「うおおおぉっ!!」


 向かってくる魔物に剣を振り下ろす。


 スキルの恩恵でそれなりに扱えるようになっていたため見事に斬り裂くことができた。


 手に肉を切った嫌な感触が残るが気にしてはいられない。そのまま流れるように2体目を斬る。


「次っ!!」


 神田も俺が斬る間に弓で攻撃し、さらに1体倒していた。残りは4体だ。


 すると半数が俺に向かって来て残りは神田の方に走っていく。


 マズイと思って慌てて1体を剣で切り捨てるが、それが隙となってもう1体が飛び掛かってきた。


(避けきれないっ!? なら……!!)


 その攻撃をかわすのが無理と判断した俺は左腕を前に出し、そこに噛み付かせる。


「痛っ、だが……!!」


 当然腕に痛みが走るがある事情から痛みに対して耐性があるため怯んだりはしない。


 腕に噛み付いたせいで動きが止まったワイルドウルフを剣で貫く。


「神田は!?」


 左腕を振るって息の根を止めた敵を引き剥がし、神田の方を見る。


 向こうの方もなんとか倒したようで、1体は少し離れたところで頭部に矢を刺して倒れており、もう1体はナイフで斬られたようだ。


 ただ接近された方に攻撃されたらしく腕から血を流してうずくまっていた。


「大丈夫か? 早くポーション飲め」


「……うん」


 神田は苦悶の表情を浮かべながらもポーチからポーションを取り出して飲むが、すぐに吐き出してしまった。不味いからなぁ……


「ほら、これ飲め」


 仕方ないので俺のオリジナルポーションを渡す。数があまりないから使いたくなかったんだがこのままというわけにもいかないしな。


「ありがとう………… ッ!!? なにこれ美味しい!!」


 あの不味いポーション飲んだ後ならすごく感動するだろうな。


 俺も不味いほうのポーションを飲む。コートは噛まれても破けなかったから外傷があるわけではないが内出血するぐらいのダメージはあるので念のため。


 吐き出しそうになるのを堪えて一気に飲み込む。何の罰ゲームだこれ……


「さて、大丈夫か? 2体も通しちゃって悪かったな」


 やはり1度にあの数を相手に無傷で勝つのは不可能だったか。


(まあ、神田に怪我をしてもらうためにあえて戦ったんだけどな……)


 今後の事を考えると神田も痛みに慣れておいた方が良い。下手に無傷の勝利を続けたら強敵相手に傷を負った際足手まといになる可能性が高い。


「うん、大丈夫。 ポーションありがとう。 次はもう少し数が少ない群れを相手にしよ?」


「ああ、そうだな。 それとさっきのポーションは金さえくれれば渡すから他の人には言わないでくれ。 秘密にしときたいんだ」


 あえて怪我をさせたもう1つの理由が俺特製のポーションだ。


 昨日装備品を買った後道具屋にも寄ってポーションを見たんだが不味いポーションしか存在しないようだった。


 鑑定で見たところオリジナルなどと付いている物が無く、全て同じ回復量だったのだ。


 恐らくスキルによる一発生産で、レシピもいじってないのだろう。


 そんな中に俺特製の美味しいポーションが出回ればバカ売れするだろうが確実に厄介事が起こる。そんなことになるくらいなら身内だけで使った方が良いだろう。


 実際飲んで味を比べたならそのことが分かるはずだ。


 しかし、飲んでいないとなかなか納得できないことだろう。だから怪我をさせることでポーションを飲むように仕向けた。


 予想通り神田は俺の言い分を理解してくれた。元々聡明な奴だから当然だろう。金を支払うことにも納得してくれた。神田みたいなのが仲間だと楽でいいな。明山の取り巻き女子なんかは金を取られることに絶対文句を言ってくると思う。


 その後、俺たちは討伐証明部位の牙を採取してから《ドロップ》を使い、素材を回収した。報酬外の資金になるから重要だ。


 この後は数を考えて戦ったため被害も出ず、無事に初依頼を終えることができた。


 ついでに薬草もいくつかゲット!! ………また調合しようかな


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