Day 2 ギルド
12/21一部修正
「ようやく着いたな……」
この世界に転移した翌日、俺と神田はタリス自由都市同盟にある町の1つシーリスに辿り着いた。
「まずはギルド登録だね」
「こっちでの身分証になるらしいしな。 早めに加入しといた方がいいか……」
なので俺たちは近くにいた人にギルドのある場所を聞き、向かうことにした。
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「此処がギルドだな」
こちらの世界の文字で『冒険者ギルド』と書かれた看板がある建物を見つけ、中に入る。
(酒場と一体化してるのはテンプレ通りだけどさすがにこんな時間から酔っぱらいとかはいないんだな……)
現在時刻は9:30を少し回ったところであり、あまり人気が無かった。
「やっぱりチンピラがちょっかい出してくるイベントは一般人には起こらないんだな」
「その方がいいよ、楽で」
まあ神田の意見には賛成だが王道イベントが起きないとやっぱり脇役なんだな~~って気分になる。
ちょっとブルーな気分になりつつカウンターにいる受付嬢の所に足を進める。神田は隣の受付に行った。
「すいません、冒険者登録したいんですが」
「はい、ではこちらの紙に名前と年齢をお書き下さい。 登録料は銀貨10枚です」
意外に書くことが少ないんだな~と思いつつ記入し、金貨をカウンターに置く。
あの光球が言葉だけでなく文字も分かる――読み書きができるようにしてくれたおかげで助かった。
「はい、大丈夫です。 ユウト・カゲノ様ですね。 こちらがお釣りの銀貨90枚です。 それではこちらのカードに血を一滴垂らしてください」
「分かりました」
指先をナイフで刺し、受付嬢が差し出してきた金属でできたカードに血を垂らす。
何が起こるのかと期待していたが何も起こらない。
「これでカードに血が馴染めばユウト様のギルドカードができます。 それでは馴染むまでの10分程でギルドに関する説明を行いますがよろしいですか?」
「お願いします」
「かしこまりました。 冒険者ギルドには国、民間問わず様々な依頼が舞い込んで来ます。 ギルドはその依頼を冒険者に斡旋するための組織です。 依頼料の1割は自動でギルドの取り分になります。 これは報酬をお渡しする際に天引きされます。 また、冒険者と依頼にはランクがあり、高い方から順にS、A、B、C、D、E、Fとなっています。これを階層といい、それぞれ+、無印、-とさらに3つに分かれています。つまり合計で21にランク分けされることになります。 依頼は自分のランクより2階層上の物まで受けられます。 依頼書は赤い字で書かれたものが+、黒い字が無印、青い字がー相当のものですので受ける際の参考にしてください。 ユウト様のランクはF-になりますからD+の依頼まで受けられます。 ランクは自身の階層の依頼でしたら20件、1つ上の階層でしたら10件、2つ上の階層でしたら5件連続で達成することで上がります。 またA-からはそれに加えてギルドによるテストも行われます。 他に上げる方法といたしましてはギルドが指定する指定討伐対象を討伐することがあります。 この場合その対象よりも現在のランクが低い場合に限り、最大で3ランク上がることがあります。 それとギルドを通さず依頼を受けてもかまいませんが、その際発生した問題に関しては一切責任を負いませんし、ランクアップの対象外になりますのでご了承ください。 後、注意事項といたしましては依頼の失敗や正当な理由が無く依頼を破棄した場合は報酬の2倍を罰金として支払っていただきます。 また、5回連続で依頼を達成できなかった場合は2ランク降格、1ヶ月に受けた依頼が1件以下の場合ギルドカードを剥奪されます。 ここまでで何か質問はございますか?」
「パーティーを組んで依頼を達成してもランクアップには問題無いんですか? 達成しないといけない依頼の数が増えたりとか?」
「依頼書に書かれている定員を超えなければ問題ありません。 嘘をついてもギルドカードに共闘した者の記録が残りますので不正もできません」
「なるほど、分かりました」
「では説明を続けます。 ギルドでは他にも素材の買い取りを行っています。 ユウト様から見て右手奥にある離れたカウンターが買い取り用の受付です。 それとランクが上がりましたらギルドと提携している店舗で商品が安く買えるようになります。 このサービスはC階層からなので頑張ってください。 後は極稀にですが強制依頼をギルドで出すことがあります。 出された際、町にいたのならやむをえない事情がある場合を除き、必ず参加をしなければいけません。 これは魔物の大群が町に迫っている際などに出されます。 もし参加しないとそれだけでギルドカードが剥奪されます。 そろそろカードが馴染んだ頃ですね。 ご確認ください」
見てみるとそこにはこう書かれていた。
ユウト・カゲノ(16)
ランク:F-
所持スキル:【調合】【索敵】【便利魔法】
「所持スキルも出るんですか……」
「はい。 見せたくない場合は本人が指で擦ると消えます。 ただ依頼を誰かと受ける際には見せ合うのが普通ですね。 カードを紛失した場合再発行代として銀貨50枚をいただきますのでご注意ください これで説明を終了いたします」
再発行代がやけに高いのは無くすなということなんだろうな。
それと見せ合うのには納得だ。相手がどんなことができるか分からなくちゃ色々不便だからな。
俺はお礼を言うと神田の方を見る。まだ少し掛かりそうだ。
(なら素材を換金しとくか……)
そう思い買い取り用カウンターに行き、《アイテムボックス》の中にある素材をすべて出す。
魔物から得た素材は均等に分けていたのでそれなりに数がある。全部で27個ぐらいか?
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状態が良いということもあり若干色をつけてくれ、銀貨6枚と銅貨34枚の収入になった。
神田の方も似たようなものだ。
俺たちはギルドの人からお勧めの宿屋を聞き、一先ずそこに向かうことにした。拠点の確保は重要だからな。
ギルドから紹介された宿『春の芽吹き亭』は1泊銀貨3枚で夕食付。銅貨50枚で朝食も用意してくれるそうだ。
とりあえず1週間ほど部屋を取り(もちろん毎日朝食付き)、俺の部屋で今後について話し合う。
その中で決まったこととして、
階層がDになるまで共に行動する。(金銭的、Lv.的にある程度余裕ができるまでということで)
金、アイテムはそれぞれで管理する。
依頼の報酬は基本山分け。
依頼を受けていないときは自由行動で互いに干渉しない。
依頼を受けるのは明日から。
といったところだ。
話し合いが終了し、俺は武器屋に行くことにした。さすがにナイフだけじゃ不安だからな。
ギルドの近くにあったのは覚えているので早速向かう。
店の中には武器と防具が高いのから安物まで幅広く揃っていた。隣接していることを考えるとギルド御用達なんだろう。だからこそどのランクにも対応できる品ぞろえなんだろう。
(武器には出せて銀貨50枚だよな。 防具も欲しいから30枚ぐらいに抑えたいけど……)
とりあえず安物の方を見る。
(神田のメインウェポンが弓だから近接武器が良いだろ…… 後依頼で森ん中に入らないといけないこともあるから槍とかの長柄系じゃなく取り回しが良い物……)
で、色々悩んで結局俺が選んだのは小振りな片手剣。お値段銀貨32枚。
ついでにスキル【片手剣】もSPを100使い習得しておく。
次に防具を見る。
あんまり重いものだと動きが鈍るので革製の物が理想だろう。
俺は革でできた灰色のロングコート(銀貨28枚)をショートソードと共に買い店を後にした。
俺の残金銀貨11枚に銅貨84枚。
……節約しよ。