Day 251 合同依頼
「そろそろ食事にしようぜ」
先頭を歩いていた佐藤が振り返ってそんな事を言う。確かにここらで1度休憩を取っておいた方が良いかもしれない。
「そうですね。 そうしましょうか」
どうやらフェリもそう判断したようで食事の準備に取り掛かっている。神田も手伝うようだ。
俺は今、佐藤たちのパーティーと神田たちのパーティー、その2つと合同で依頼を受けている。4月の中頃に地球出身組を通して知り合い、それ以降月に2~3度合同で依頼を受けるようになった。
というのも意外とパーティーのバランスが良いからだ。
前衛である佐藤とルディ、中衛のティナ、斥候役のリタ、魔術特化のフェリに弓使いの神田、器用貧乏で遊撃役の俺といった具合だ。
レベル上げはソロに比べて効率が悪いが、高ランクの依頼を達成できるので普段は手に入らない素材が入手できたりギルドのランクアップには良いため承諾している。それに自分で料理をしなくていい時もあるのもありがたい。
神田たちが俺と組む理由はバランスが良いことに加えて、下手に知らないやつと組むよりは知り合いと組んだ方が良いということもあるのだろう。この世界じゃ命は軽い。知らないやつと組んだら最悪裏切られる危険もあるしな。
なにせソロの冒険者は俺と同じ器用貧乏な構成である場合が多い。そして俺は同レベルの冒険者と比べ弱い。しかもレベルが高くなるにつれ同レベルより劣る事はより顕著になるだろう。
レベルの上りが早い分異世界組は同レベルに比べて戦闘経験が少ない。それははっきりと技術の差として表れ、多少のステータスのアドバンテージなど簡単にひっくり返す。正面からまともに闘えば今の段階でも10レベル近く低い相手にも負けるだろう。
まあこれはチート連中には当てはまらないんだよな。経験で劣っているはずなのに技術を身につける速度が異常だから。
それはともかく、今回の依頼はオークの巣の駆除だ。オークはDランクの魔物だが複数だと数によってはCランクまで跳ね上がる。上位種であるハイオークはC-、オークキングはBと言う事を考えると、最悪A階層の難度を誇る依頼だ。
今回は群れの規模はそう大きくないがオークキングが確認できたためA-ランクの依頼となっている。ソロでは絶対受けないだろう。
俺やフェリが食事休憩に賛同したのはオークの巣まで後20分弱で着くためだ。ここで体力を回復させた方が良いに決まっている。
この合同パーティーで料理を行うのは俺、神田、フェリ、ルディの4人だ。交代制で作る。ティナは論外だし佐藤は男のサバイバル料理といった感じで微妙、リタのは食べた事はないが神田の話だと変な食材を使うそうだ。
そんな料理食べたくないからそれなりにできるメンバーで行うようにしている。
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フェリが作ったハンバーガーを食べ終えた俺たちはオークの巣である洞穴のすぐ手前まで近づいていた。これから俺とリタが【隠密】で2体いる見張りを気付かれずに撃破、その後痺れ薬と毒薬を散布し、効果が出るまで待った後魔法で攻撃する予定だ。
そっと近付き即死効果のある【暗殺術】のアーツ《心臓突き》を発動。オークの体に短剣が深く刺さる。
しっかり仕留めたのを確認した後、隣を見るとリタもちゃんと仕事をこなしたようだ。足元には息の根が止まったオークが倒れている。まあ心配はしていなかったが……
ふと、そのことに違和感を感じた。俺はリタが仕留めることを全く疑わなかった?
確かにリタの実力なら9割近い確率で上手くいっただろう。だが、リタとはそこまで長く過ごした仲でも無い。昔の俺だったらリタの手を借りず俺1人で2体とも倒すか、手を借りてもフォローできるようにしていたはずだ。他者を信じ切れず、また自力で全てやった方が安心できるという理由でだ。
こっちに来てから変わってきているのかもしれない。主に人を信用する方向に。そのきっかけは神田か……
それが良い事なのかどうかは分からない。だけど変化は受け入れようと思う。きっとそれは俺に必要なことだから。
そう思いながら【風魔法】を使い薬を散布する。その後は簡単なお仕事だった。
次回更新はGWになります




