閑話 Day 162 ホワイトデー前日譚
かなり短めです
「これが依頼されてた品だ。 醤油と味噌を生産する魔導具と合わせて金貨5枚でいい」
「おっ、ありがとな影野。 ところでお前はちゃんと神田へのお返し用意したのか? バレンタインにチョコ貰ったんだろ?」
ホワイトデー前日、10日程前から注文されていたプレゼント用のアクセサリーを受け取りに佐藤が俺の部屋までやって来た。
しかし確かに神田にはチョコを貰ったが、お返しの事を佐藤が聞く必要はないだろ。……ちゃんと用意はしているが。
「ちゃんと用意はしている。 お前が気にする事じゃないだろ?」
「まあそうなんだけどな。 ……お前神田の気持ち気付いてんだろ、それに自分の気持ちも。 いい加減受け入れてもいいんじゃないか? お前の事情を踏まえてもさ」
佐藤はそう言うがこいつは俺の事情の一端しか知らない。確かに気持ちを誤魔化しているのかもしれないけれど今はまだ受け入れられない。
「……余計な御世話だ。 馬鹿のくせに気を使うな」
「おまっ、酷くね? ………魔王が出てきて慌ただしくなる前に決着付けろよ。 じゃあな」
そう言って転移符を使いこの場からいなくなる佐藤。その言葉、そっくり返したい。
(まあしっかりと手は打ってあるけど。 今後のあいつとティナとの関係が楽しみだな)
上手く行った時はからかってやるとしよう。
「あれを乗り越えないと恋愛なんてな……」
―――あんたなんて産まなければよかった
―――この……の子が
―――汚らわしい子供
―――死ねばいいのに
―――なんでお前を養わなければならない
「っ!!?」
考え込んだせいでフラッシュバックしてきた記憶を振り払うよう頭を振る。
佐藤も神田も、誰も知らないある事実。
知っていた伯父も既に亡くなっていて俺しか知らない事実。
伯父には感謝している。なんせ俺は――なんだから。
「……考え込んでも仕方ないな。 それよりも明日の準備をしないと」
そう決めて明日神田達に渡すポーション類の確認を始める。
いつか神田達に話す日が来るんだろうかと思いながら……
2013/3/20まで活動報告でリクエストを取っています
要望があればぜひ




