表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/38

閑話 Day 163   それぞれのホワイトデー

前半影野、後半佐藤視点です


今回の話は佐藤の方がメインの気が……

「ほら、おまちどうさま」


 そう言って俺は神田達に親子丼と、わかめとじゃが芋の味噌汁を提供する。


「わあ、待ってました~~」


「………いただきます…」


「ありがと、影野くん」


「すみませんねユウトさん」


 それぞれが一言俺に礼なりなんなりを言ってから食べ始める。ちなみに上からリタ、ルディ、神田、フェリだ。


 ここはスタディルにある俺の部屋。商談を昼時にやったのでついでに昼飯をごちそうすることになったのだ。


 これは2回目の商談以降の恒例で、昼飯の分多く買ってくれるため文句はない。


 なお、神田をヤマト国に連れて行ったし、醤油や味噌を生産する魔導具も金貨3枚で売ったから神田達も和食を作ろうと思えば作れはする。


「ああそうだ。 神田これホワイトデーのプレゼント。 良かったら使ってくれ」


 昼食を食べ終え、一段落着いたところで《アイテムボックス》から包みを取り出して神田に渡す。貰った分はちゃんと返さないとな。


「ありがとう。 今開けていい?」


「ああ、構わない」


 どうせここにいるメンバーは遅かれ早かれ見ることになるんだろうしそんなに変な物を渡したわけでもないしな。


「これって……」


 神田が包みに入っていた物を見て驚いた様な声を上げる。他の3人もビックリしてるな。


 俺がプレゼントした物――――それはペンダントだ。


 もちろんただのペンダントじゃあない。【鑑定】スキルで見るとこんな風に出るはずだ。


名前:守護のペンダント

種別:アクセサリー(魔導具)

効果:【オートバリア】

   攻撃を受ける際アクセサリーの魔力を50消費し自動的に障壁を展開する

   【オートキュア】

   状態異常にかかった際アクセサリーの魔力を100消費し自動的に回復する

残魔力:500/500



 今現在俺が作れる最高レベルの作品だ。作るのには結構苦労した。


「こんな良い物貰っていいの? 買ったらけっこうすると思うんだけど……」


 恐る恐る神田が聞いてくる。


「ああ。 そのために作ったんだしな。 ちなみに魔力は自動的に少しずつ回復してくから残魔力が減っても心配しないでくれ」


「………うん、分かった。 ありがとう、大事にするね」


 そう言って満面の笑みを浮かべる神田。


 ……周りの3人のにやにやがうざいな。


 まあいいさ。バレンタインのお礼は返せたし神田も死ににくくなったしな。


 神田は俺と一定以上に仲が良いと言える数少ない人物だし、死んで欲しくないと思っている。


(女子では一番親しい間柄だしな……)


 そう、ただそれだけのこと。それだけの……



**********



 今日はホワイトデー。俺とティナは宿屋の一室で寛いでいた。……そろそろ渡すかな。


「ティナ、これバレンタインのお返しだ。 今日ホワイトデーだしな」


 そう言ってポイッと包みを投げ渡す。おっ、ナイスキャッチ。


「ちょ、なにプレゼント投げてるのよ!! デリカシー無いわね……」


 なんか溜息つかれた。別にいいじゃねえか、そんなんで壊れるようなもんじゃないし。


「開けるわよ。 ………っ、これって…………ねえコーイチ、そういう意味ってことで受け取っていいの?」


 頬を染めてどこか恥ずかしげにティナがそんな事言ってきた。


 そういう意味ってなんのことだ? プレゼントは影野に頼んで用意してもらったからどんなのか知らないんだよな。アクセサリーって注文はしたけど。


 どれどれ、と包みの中身を覗き見る。そこには良い値段がしそうな指輪が。


 ……え、指輪? 指輪で意味? それってもしかしなくても…………


(カゲノォォォぉぉぉぉ!!!!?)


 心の中で絶叫する。


 あいつの黒い顔を思わず幻視した。絶対わざとだろあいつ!!


 いや、もしかしたら普通に、何の意図もなく、ただ偶然指輪なだけかも。影野に持ってると便利と言われて取得した【鑑定】スキルを発動する。


名前:誓いの指輪

種別:アクセサリー(魔導具)

効果:特定の人物(佐藤)が半径10m以内にいる時全能力5%上昇

   【オートリジェネ】

   常時HP微量回復



 名前が不味すぎるだろっ!?払った金の割には優秀なアクセサリーだけど!!?


 あ~駄目だ……偶然なんかじゃねえ。仕組みやがったなあいつ。


「あの、その、私もコーイチとなら……」


 やばいまずいやばいまずいやばいまずい、ど…どうするっ、どうする俺っ!?


①:事情(影野のいたずら?)を説明する。 ……うん、殺されかねないな。


②:全力で逃亡する。 ……魔王(ティナ)からは逃げられない。AGI、ティナ>俺だから追いつかれてBAD ENDになる未来がはっきりと想像できる。


③:受け入れる ……現実は非情である。


 いや、確かにティナは美人だしドラゴンだろうと関係ないって思いはあるけど元の世界に帰るかもしれないし……


 ……元の世界か。俺は帰りたいのか?家族の事を除けば特に執着はないんだよな。まあ影野程じゃねえけど。ゲームの中みたいなこの世界を気に入ってるし。


 となると家族に心配やら何やらかけてでもティナと一緒にいたいかどうかになるのか?


(結局は家族とティナ、どっちが大事か、か。 俺は……)


 この世界に来て5カ月以上経った。こっちに来た日からティナとはずっと一緒に冒険したな。


 ティナと過ごした日々がフラッシュバックする。


 魔物に囲まれて死を覚悟した時に助けてくれた出会い。俺の行動に突っ込みつつも付き合ってくれた日常。ドラゴンである事を知ってるって告げた時の呆れたようなそれでいて嬉しそうなあの表情。バレンタインでチョコ?を食べて倒れた時の申し訳なさそうな顔。



 俺は―――



(そうだよな、うん。 よしっ、覚悟決めた!!)


「あ~~なんだその、ティナ」


「は、はい!!!」


 顔を真っ赤にして落ち着かない様子のティナ。こんなティナ初めて見るな。


「え~と、その、な。 あ~もう、なんも出て来ねえっ、俺と付き合ってくれ!!」


 突然の告白になったせいで上手い言葉が出ず、結局シンプルなものになった。けど別にいい。大事なのはこの気持ちを伝えることだ。


 5秒、10秒と時間が経つ。けれどティナは何も言わない。まるで俺の言った事を噛み締めているかのように。


 そして30秒程経ち、


「…………はいっ!」


 満面の笑みを浮かべながらティナはそう答えた。


 その瞳から一粒の雫が流れ落ちた。


 それを見てああ、言って良かったなという思いが湧きあがる。そして妙にすっきりした気分だ。


 それにしても慌てて決めた割には元の世界にそこまで未練もなく、案外すんなりと心の整理ができている気がする。


 もしかしたら心のどこかでは前々からこうすることを決めていたのかもしれない。ただきっかけが掴めず言いだせなかっただけで。


 ならきっかけをくれた影野には感謝すべきなのかもしれないな。親しいやつにはお節介なところがあるやつだから俺が気付いてなかった気持ちに気付いてこんな事をしてくれたのかもしれない。


(後でお礼を言うべきか? その前に一発ぶん殴るけど)


 いや、今は影野の事よりティナの事を考えるべきだよな。


 ティナをゆっくり、優しく抱き締める。ティナもそれに抵抗したりせず逆に抱きしめ返してくる。


 そして眼を閉じ顔をこちらに向け何かを待つようにするティナ。それに応えるようにゆっくりと顔を近づける。


 俺の初めての恋人、そして生涯を共にするパートナーが異世界人、それもドラゴンだなんて想像もしなかった。


 けれど後悔は無い。それほどまでに愛しい存在なのだから……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ