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閑話 Day 159   オークション

 ユルス皇国――ガルシア帝国、ウィリス聖王国と2つの大国に挟まれたこの国は中立を標榜することで国を守っている。


 そして大国に挟まれ、商業が盛んなタリス自由都市同盟と森を跨いで隣接しているおかげでこの国の首都ではとあるイベントが大々的に行われる。


 オークションである。


 このオークションにおいて出品は手数料を支払えば誰でも可能だが、参加者は会員制であり、タリス自由都市同盟の豪商や各国関係者、高ランク冒険者が毎年年会費を払って会員となっている。


 元々はガルシア帝国とウィリス聖王国の間でユルス皇国の鍛冶師が鍛えた聖剣が取り合いとなったことがきっかけとされている。


 その様子を見た商人が高く売れると考え名品を持ち寄り、それを冒険者が真似をし、段々と規模が大きくなり、今では他に類を見ない希少な物が集まるオークションとなっている。


 早い話が良い物を相手に渡してなるものかと金額を釣り上げる2大国の様子を見て、他よりも高く売れると良い物を持ち寄るという行為が繰り返され信じられないほど発展したのだ。


 今では月に3回、10の倍数の日に行われ、国の良い財源になっている。


 そして今日もまた1人の男が珍しい魔導具を持ち込んだ……



**********



 今日は3月10日、月に3度行われるオークションの1回目である。


 参加者は年会費さえ払えば何度参加してもタダであるため基本的に会場は毎回満員に近い状態になる。


「さて、それではこれよりオークションを開催したいと思います。 今回の出品数は16です。 まず最初の商品はこちら―――」


 オークションが始まり、舞台の中央で司会が声を張り上げるのを少女は席から見下ろしていた。


 彼女は明山と行動を共にしたグループの1人であり、毎回オークションに参加し良いものを入手する役割を与えられていた。


 ちなみに黒川のグループもこのオークションには毎回参加しており、彼女の視界にはクラスメートの男子の姿が映っていた。


(今回はハズレみたいね……)


 しかし今回のオークションで彼女の食指を動かすような物は出て来ず、今10品目の商品である壺が見知らぬ貴族風の男に落札された。


 ちなみにこのオークションは出品する際の手数料として金貨1枚が掛かるため、良い品でないと元が取れないことも多々ある。


 目録によると残っているのは魔導具が3点、剣が1点、残りは美術品だ。


(帰りたいな~~)


 ついつい溜息を吐く。


 黒川の方の代表も同じ心境の様でどこか暇そうに見える。


 だが次の瞬間彼女たちの考えは大きく変わった。


「ではこちらの商品は173番様が金貨37枚で落札とさせていただきます。 続いての商品はこちらの魔導具です。 出品者の説明によりますと醤油と呼ばれる調味料を生み出す魔導具だそうです。 では、金貨5枚からのスタートです!!」


「「なっ!!?」


 日本人2人の驚愕の声が重なる。


 この世界に醤油は存在していない。少なくとも彼女たちは存在していることを知らなかった。


 醤油が無かったために作れなかった料理も沢山ある。米は食べられなくても和食が食べられる……


((何としても手に入れる!!!))


 日本人の思いは一致していた。


 そこから壮絶な戦いが始まる。


「10枚!!」


「15枚!!」


「20!!」


「30!!」


「35!!」


「50!!」


 価格をどんどん上げていく2人に他の参加者は戸惑うばかりだった。彼らにはそこまで価値のある商品とは思えないのだ。


 その後も競り合いは続き、とうとう100枚……白金貨1枚までなったところで落札された。勝者は明山グループだ。


(ちょっと痛い出費だけどそれ以上の価値はある!!)


 落札した少女はホクホク顔であり、対照的に黒川グループの少年は落ち込んでいた。


 だが、次の商品で表情が一変する。


「さて、続いての商品はこちら!! 味噌を生み出す魔導具です!! こちらも金貨5枚からのスタートです!!」


「「なん…だと……!!」」


 少年の表情が歓喜に、少女の表情が悲しみに歪む。


 結局醤油で金を大幅に失った明山グループは争いに勝てず、黒川グループが金貨38枚で味噌の魔導具を落札した。




 翌日、予想以上の収入にほくそ笑む少年の姿がスタディルで見られたという……


醤油、味噌を生産する魔道具の材料費は金貨1枚です。

はっきり言ってぼろ儲け……


ユルス皇国までは佐藤に協力してもらい転移符で行きました。

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