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閑話 Day 135   商談とチョコレート・その後 

「ふぅ……」


 神田との話も終わり、俺は自分の部屋で一息ついていた。


 コーヒーを飲みつつ新たに作った転移符を眺める。


 これで本日2枚目だ。今日中にもう1枚作るつもりだ。なにせ明日はマテリアへの行き帰りに2回《ワープ》を使うことになるため明日は1枚しか転移符を作れない。


 それを合わせて佐藤に渡せるのは計3枚。《ワープ》を使えない佐藤にはできるだけ多く渡しておきたいな。


 まあティナ次第では使わなくなるかもしれないが……


 ティナの正体はドラゴンだ。文献によると洒落にならない速度で飛べるらしい。


 何故魔物の一種であるドラゴンが佐藤と行動を共にしているかは分からない。魔物というより聖獣や神獣の類な気もするがそれでも人と一緒にいる理由が無い。


「これで佐藤に惚れたとかだったらいらない心配なんだけどな……」


 そこで佐藤を気に掛けていることに気付き、思わず自嘲する。


 確かに佐藤は人を引き付ける才能がある。


 強引さとお節介で知らず知らずのうちに親しい間柄になってしまう。


 そんなやつだから俺もあいつを友人だと思っているのだろう。


 そんな事を思っていると佐藤から通信が入る。


「噂をすればなんとやら、だな…… もしもし?」


『影野か!? 助けてくれ!!』


 通信に出た瞬間やけに切羽詰まった佐藤の声が聞こえてくる。


「そんなに慌ててどうした? なにがあったんだ?」


 まあ、チートの1人である佐藤だし死ぬことはないだろうとのんびりした対応をとる。


『ティナだ! あいつが……』


「! ティナがどうしたんだ?」


 もしかして正体に気付いてそのせいで襲われているとかか!?


『あいつがチョコという名の暗黒物質(ダークマター)を食べさせようとしてくるんだ!!』


「………は?」


 ……何言ってんだこいつ?


『だからあいつが『ちょっとコーイチ、なんで逃げるのよ!!』って、チィ、もう見つかった!! どうにかしてくれ影野!!』


 念話石からは何やら争う音が聞こえてくる。


「そういやティナって料理酷かったな……」


 初めてティナの料理を見た時思わず絶句した記憶が蘇ってくる。


 だからこそ一緒に行動していた時、恨みがましい目で睨んでも手伝いを強要しなかったんだった。


 しかしチョコか…… 義理チョコ文化のないこの世界でそれを渡そうとするんだからティナは佐藤の事を………


(なんだか考えてたのが馬鹿らしくなったな……)


「佐藤、大人しく食え。 ポーションはあるだろ? 大丈夫、ティナも回復魔法使ってくれるさ」


 だから安心しろとばかりに言ってやる。


『ちょっ、ダメージ受けること確定なのか!? 助けてく――』


 だが助ける気が毛頭ない俺はその言葉を言い終える前に引導を渡すことにする。


「頑張れ。 後リア充爆発しろ」


 それだけ言って通信を切る。


 いやまあリア充うんぬんは神田からチョコをもらっている俺が言えた義理ではないがなんとなく言ってみた。


 念話石が着信を示して震えているが無視する。


 今の会話で若干疲れを覚え、コーヒーを一口。そこでふと机に置かれた包みに目が止まる。


 神田からもらったチョコレート。まだ包みすら開けていない。


「…………」


 包装を丁寧に解き、中を見る。


 一口サイズのチョコが10個ほど。どうやら手作りのようだ。


 そのうちの1つを口に放る。


「…………………甘いな。 けど…」


 その先を口にすることなくコーヒーをもう一口。


「ハッピーバレンタインか………まったく――」


 その後何を口走ったか覚えていない。


 俺はいつか愛情を抱いてもいいと思える日がくるだろうか?


 神ならざるこの身には分からない。けど、もしかしたら―――


おまけ


「……大丈夫か?」


 翌日佐藤達が泊まっている宿屋で俺が見たのは青い顔で床に伏している佐藤だった。


「大丈夫に……見える…か………?」


「いや、全然」


 何をばかな事をと首を横に振る。大丈夫に見えると答えるやつは眼科に行くべきだろう。この世界にはないが。


 横目でティナを見ると気まずげに目を逸らす。やっぱりチョコが原因か……


「とりあえずこれ飲め」


 状態異常回復アイテムであるキュアポーションを飲ませる。そこそこ階級のいい物だ。


 しかしその力をもってしてもすぐには回復せず武器をとりに行く事が出来たのは午後になってからだった……


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