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Day 136   ティナの正体と影野の過去 ――ティナside――

話の都合上2話連続投稿です

 ユウトがいなくなってから数分後、ようやく正気を取り戻した私は手の中にあるとんでもない代物を恐る恐る見下ろす。


 この世界に《ワープ》の様な転移魔法を使える人は少ないし、使い捨てでもそれが使える魔導具は存在していなかった。


 そもそも転移魔法は取得SPがとんでもなく必要な【空間魔法】のレベルを相当上げないと使えるようにならないと思われている。【便利魔法】なんて裏技じみたものがあることを皆知らないのだ。


 そんななかで作られた転移符……


 国に知られればとんでもないことになるのは目に見えている。戦争や暗殺に利用される光景が目に浮かぶ。


「とりあえず急いでコーイチと合流した方がいいわよね……」


 そう自分に言い聞かせ全力で宿屋に向け走り出す。こんなものを持ち続けるのはごめんだ。



**********



「ふ~ん、転移符かぁ…… 便利そうだな!!」


 部屋に戻ってコーイチに転移符の説明をした後の第一声がそれだった。


 思わず脱力してしまった私の反応は当然だと思う。


「で、呼び出しは結局何の話だったんだ?」


「えっと、それは……」


 その質問に言い淀む。


 まだコーイチには教えていないないことが含まれているからなんて言い訳しようと考えていると、


「もしかしてお前が人間じゃないってことに関係してるのか? あいつ俺にはお節介だからどうせそんなとこだろ」


「へっ!!?」


 今なんて?? えっ、人間じゃないってばれてたの!??


「ああ、やっぱりそうなのか。 まあ人間じゃなくてもティナはティナだ。 そんな細かいこと俺は気にしねーよ」


「………いつ気づいたの?」


「会った時から」


「最初から!!?」


「ちょっ、驚きすぎだろ。 俺のスキル【把握】は相手の種族とか所持スキルとかその他もろもろが分かるんだから当たり前だろ?」


「………そんなスキル持ってたの?」


 初耳なんだけど!!?


「あれ、言ってなかったっけ? まあ別にいいだろ」


 良くないっ!!と叫びたいけど叫んだところで悪い悪いと頭をかきながらの軽い謝罪しか得られないだろう。


(なんか嫌になるわね……)


 どっと疲れた気分だ。今まで隠せていたと思っていたことが知られていて、そのことをどうでもいい扱いって……


「いやーなんか知られたくないみたいだったから今まで黙ってたけどこれでお願いできるな」


 どこか嬉しそうな口調でそんな事を言うコーイチに倦怠感を感じつつ、目線でなにを?と聞く。


「ティナって白光聖龍とかいう種族なんだろ? つまりドラゴン!! 今度背中に乗せて空飛んでくれよ!」


 そんなに目をキラキラさせながら言わないで欲しい。


「はあ…… 分かったわよ。 今度やってあげる」


 溜息をつきながら承諾の意を示す。


 やっぱり馬鹿でどこか能天気なコーイチにいろいろと言いたいことはあるけれど、ドラゴン―――魔物の一種であるのにそんなことどうでもいいとばかりに受け入れてくれた彼の態度に心が温かくなるのを感じた……



**********



「そういえばなんでユウトはコーイチに対して甘いの? 確かに社交的だとは思うけどコーイチ以外にはなんか距離があるように感じたのよね。 まあ付き合いの長さのせいかもしれないけど」


 ユウトの言動を振り返るとやけにコーイチに便宜を図ってる様に思う。そんなひいきするような正確には思えないんだけど……


「ああ、そのことか。 う~ん、そうだな、ちょっとあいつの昔話をするか……… 影野のやつはガキの頃両親から虐待されててな。 その上、小学校――6歳から12歳まで通う学校なんだがそこでもいじめを受けてたらしい」


 虐待とろくに風呂にも入れなかったせいでな、と言葉を区切る。


「んで8歳の頃だったか、両親が事故で亡くなって今度は親無しっていじめられ、人間不信になったんだ。 今は大分ましになってるけどそれでも他人に自分の事を話したりとかはしないし、あの一見明るい社交的な態度も演技だろうな。 俺と違って頭が良いからそっちの方が生活していくにはいいと判断したんだろう。 ああそれと、俺が詳しく知ってんのはあいつの幼馴染から話を聞いたことがあるからだ。 そいつは当時いじめる側に回っちまったことを今でも後悔してるな。 ちなみに明山のハーレム要員の1人だ」


「ふーん……」


 相鎚をうって話を促す。


「そのせいであいつはよほどの事が無いと他人を信頼しなくなったが、ある一定ラインを超えるぐらい親しくなるとすげー面倒見が良くなるんだ。 人のぬくもり――もっと言うと愛情だな――に飢えてるせいだろうな。 人恋しいってやつだ。 現に俺に対して相当甘い。 本人もそのことを自覚してるからあんま他人と近すぎる関係になるのを避けてる。 俺みたいにぐいぐい自分から近付いてかないと親密な関係にはなれねえな」


 遺跡調査の依頼も他の奴だったら断ってたと思うぞと付け加えるコーイチ。


 つまりユウトから信頼されてるのね。コーイチには人を惹き付ける何かがあるから納得できるけど。


 そしてふと思う。彼のあの冷めきった眼は一種の予防線なのだと。普通の人はあんな眼をする人に好き好んで絡んだりしないだろう。それだけである程度の選考になる。


「あいつ女の場合は特に親しくなるのを避けるんだよな。 特に恋愛感情は抱かないようにしてる。 本人曰く『友情なら多少は自制が効くが愛情の場合は効かないだろう。 愛したが最後、全てを投げうちそうで怖い』って話だ。 俺の知る限り女子で一番あいつに近付いたのは神田だな」


「へえ、その子ってどんな子?」


 ユウトに一番近付いた子か…… 興味がある。


「ああ、神田って言うのはクラスメイトの子で…………………」


 それからしばらくカンダって子から広がったコーイチのクラスメイトの話で盛り上がりその日は結局依頼を受けずに終了した……


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