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碧の猛獣使い  作者: 翠月
第一章 真龍との出会い
3/8

第2話

 ☆ ☆ ☆



 例の逃走劇から丸一日が過ぎようとしていた。

 追手を振り切り、束の間の休息にシュラフが話を切り出した。


「王妃陛下の命でここまで来たが、これからの目的は定まっているのか。」


「とりあえず、俺は王妃陛下に皇女・シルフィーナ様を能力の目覚めの日まで我々で隠せと命を受けた。」





ー 回想 ー




ー俺は馬車で逃げる際陛下に言われたのだ。



『ユラ。シルフィーナはそなたに預けます。我が子の力の目覚めるその日まで……。

 まだ若いそなたにこの様な頼み事は、申し訳無いのですが、シュラフと共に我が子を守って下さい。今頼れるのはそなたとシュラフ以外おらぬのです。』


『しかし、隣国へお連れになるのでは…?』


『いくら隣国の王が、我が兄であろうと匆々面倒を押し付ける事は出来ません。既に我が息子ウィルティスが留学を理由に彼の城で匿われています。そこへ更にシルフィーナまでも連れていけば、彼の国も大変危険にさらしてしまいます。そうなれば我が子の命も危うくなります。そうせぬ為に、そなたに預けたいのです。』


 暫く考え込みユラは頷いた。


『承知しました。』




ー回想終了ー


 焚き火をし、二人の間ではユラの召喚獣を風避けに、毛布にくるまれた皇女がスヤスヤと寝息をたてていた。

 彼女の寝顔を見て、頭をなでながらユラは話し出した。


「陛下は泣いておられた。涙は流されていなかったが、心で泣いておられた。だからと言うわけではないが、俺は俺ができる範囲でこの方を御育てするとお伝えした。本来俺は、宮廷魔獣使いだからな。本当の意味では御育てするのは難しい。」


「……。」

 

 暫く考え込んだ後、シュラフは口を開いた。


「お前の気持ちは分かった。俺もお前の意見に従おう。だが、何処で御育てするのか決まっているのか?」


 ユラは多少言いにくそうなそぶりをしたが、「あぁ。」と言って話し出した。


「目的地の場所的にはいささか遠いが、俺の故郷辺りを考えている。」


 ユラのそんな言葉を聞いて、シュラフは「ひとついいか。」と自分の考えを言って来た。


「お前の所もいいが、俺の故郷はどうだ。」


 ユラは目を見開き驚を隠せないでいた。


「お前の所って、龍使いの里だろう。確か部外者は住めないのではなかったか。」


「住めないのではない。部外者が住むにあたっては規制がしかれ住みにくく、住もうとする者は3日ともたず逃げるだけだ。」


「……威張って言うことか?……。」


 呆れた視線を流すユラに、バツの悪そうな顔をして言い訳をする。


「しょ…しょうがないじゃないか。現に殆どがそうだったんだ。だか、守るには良いと思うぞ。里の周りは龍が住む谷に囲まれているし緑もある。里には龍たちの加護で悪意ある者は入ることも出来ないからな。」


「お前が良いって言うなら、反対はしない。俺の故郷より安全ではあるしな。」 


 その後も話し合い、夜明け前にキャンプを畳んで通称・龍の里(ルクリ村)に向かうことを決めた。

 そのすぐ後、赤子の泣き声がキャンプをしていた森じゅうに広がった。


「あっ……ぎゃぁ……んぎゃぁあ~あああ゛」


「っえ!?……えっ!? さっきまで気持ち良さそうに寝てたじゃないか!?」


「どっ……どうしたらいい!?」


「どうしたらいいって、ユラ。お前が陛下から頼まれたんだろぅ。」


「そうだが、お前も間接的に頼まれたんだから運命協同体だろ!?」


 泣き出してしまった姫をあたふたしながら眺めていた。

 そんな彼らを、やれやれと首を降りながら呆れているユラの召喚獣・ルク。

そんなルクを見てユラは慌てながら言った。


「ルク!!呆れてないでどうしたらいいか教えてくれ。」


 ユラの懇願するような命令にはぁと溜め息をつきつつ、抱いてなだめるようユラに伝える。




ーーside シルフィーナ ーー


《ふぁ~~ぁ。よく寝た。……あれ?なんか話し声が聞こえる。……というかなんか私が今いる場所って明かに外よね…。なんで???》


 状況がいまいち分からないシルフィーナは、必至に周りの状況を知ろうとした。


「王妃陛下の命でここまで来たが、これからの目的は定まっているのか?」


《!!……王妃陛下!?》


「とりあえず、俺は王妃陛下に皇女・シルフィーナ様を能力の目覚めの日まで我々で隠せと命を受けた。」


 青年らしい声が聞こえ、そっと自分を撫でている事に気が付いた。


《ん?私を撫でながら姫って言った?……と言う事は王妃陛下って私のお母さん!?》


 あまりにも突飛な展開に暫く考えが纏まらずにいたシルフィーナこと高梨少女も自分の置かれてる状況を改めて纏めた。


《えーっと……落ち着け私。まず今は何かから逃げている状態で、2つの声の主は私を守りながら逃げている人?でその私を頼んだのがお母さんで王妃様?って事は私はどこかの国の王女!?……でも待って?だったらなんで逃げてるの?私生まれちゃ駄目だったの?》


 自分の考えにダメージをくらい、沸々と不安が押し寄せてきて泣き出していた。


「あっ……ぎゃぁあ~んぎゃぁ~あ゛」


「っえ!?……えっ!?さっきまで気持ち良さそうに寝てたじゃないか。」


「どっ……どうしたらいい!?」


「どうしたらいいって、ユラ。お前が陛下から頼まれたんだろぅ。」


「そうだが、お前も間接的に頼まれたんだから、運命協同体だろ!!」


「ルク!!呆れてないでどうしたらいいか教えてくれ。」


 そんなあわてふためく声に抱き上げられ、緩やかな揺れが感じられた。その揺れが心地よくまどろみの中に吸い込まれていった。

ちょっと脱線仕掛かってそう(^^;

すみません。

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