祈りは届く
凱旋山を降りるとしばらく街をさまよっていた。
((3つだけ願いをかなえられる。))
正直言うと、まだ迷っていた。
姫は今、放心状態。
全て俺が原因なのだ。
(どうすればいいんだ・・・・)
1つだけ、願いは決まっている。
この灰と化した状態を元に戻すこと。
候補としてあげられるのは、「姫の国がずっと平和であり続けること」、「街の景気を良くし、皆を笑顔にすること」。
だが、それでは大きな問題が解決されない。
“姫の心を元に戻すこと”
これは絶対必要なのだ。
(どれかを犠牲にしなければ新しくは生まれない・・・・・か。)
何処かで聞いたことのある言葉を口にした。
多分、王国で戦争に行く直前にあった集会での言葉だろう。
自分の命を犠牲にしてまで、新しいものを手にする。
俺はそんな考えに反対だった。
(そう言えば、何でこの言葉を覚えていたのだろうか・・・・。)
ふと、不思議に思った俺は願いを横に置いて考えた。
((この言葉は最後まで反対してた俺らが一番嫌いな言葉だったんだよな。あいつらは多分もう雲の上・・・・・か。))
俺と一緒に行った反対派の仲間たちは、脅されて戦地へ行った。
そこで別れさせられた。
何だか胸が苦しくなってきた。
そう。あの戦争さえなければ俺はこんな思いをしなくてよかったのだ。
姫や仲間とも別れずに済んだのだ。
そう思うと俺は、少しだけ王国の兵士幹部長が憎くなった。
だが、そんな思いをしていたら神に願いなど聞き入れてはもらえなくなる。
俺はまた、願いを考えることに専念した。
(願い・・・・・・・。どうしたらいい方向に向かうのだろうか。)
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しばらく風に吹かれながら考えていると、見覚えのある場所に来た。
(ここは・・・・・・・)
俺はきょろきょろし、歩き回った。
そして思い出したのだ。
(こ、ここは!!!ウォスレイト王国じゃないか!!!)
風に流されていたらここまでやって来たらしい。
俺は姫に会いたいという思いが甦ってきた。
身体が勝手に動いて止まらない。
よほど姫に会いたいのだろう。
俺は自分の行動に苦笑した。
(まさか、こんない姫が愛しいだなんてな。)
そして、数分が過ぎ、俺は身に覚えのある部屋にたどりついた。
((ここは、姫の部屋!!やはり姫に会いたいのだな・・・。))
勝手に入ってよいものではないだろうと承知はしているが、中に姫の気配がして居ても立っても居られない。
俺は、勇気を出して言った。
(姫!聞こえますか!?聞こえたら返事をして下さい!!)
だが、中からは何の返事もない。
俺はもう一度言った。
(姫、私です!!ロウィート・アミュレッタです!!返事をして下さい!!)
また、返事はない。
俺は、もう中に入って言いたい気分になった。
だが、少し待ってみた。
すると、部屋のドアが開いた。
そこから顔を出したのは、そう。俺が一番会いたい人、姫だった。
「ロウィート??どこにいるの?」
久々に呼ばれ、俺は有頂天だった。
(ここです!!姫!)
俺は語りかけた。
「ロウィー・・・・・ト。やっぱり空耳よね。あれからもう5年がたっているんですもの。生きてる筈が無いわ。」
姫はため息をつくとドアを閉めた。
俺ぼーっとしていた。
まさか、姫に見えてないなんて。
あまりにもショックで言葉も涙も出なかった。
(やっぱり、灰と化した状態では姫にも認識してもらえない。)
俺は急いでその場を後にした。
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そして夜になり、寒さも一段と増した。
俺はショックが酷過ぎて未だにさ迷い続けていた。
丁度、姫の部屋のベランダの正面に来た。
そこには姫がしゃがみこんでいた。
(ひ、姫・・・・。一体何をしているのですか・・・。)
姫の近くに行き、そっと上からのぞいてみた。
「・・・・を。どうか、ロウィートを。神様お願いです。ロウィートと私をお会わせください。」
俺はびっくりした。
「はぁ、5年も祈りつずけていると言うのに。神様は何故願いをかなえてくれないのでしょうか・・。」
まさかこの5年間ずっと祈りつずけていたとは思いもしなかったからだ。
俺は願いがひらめいた。
そして、心で神を呼んだ。
『ロウィート・アミュレッタよ。願いが決まったようだな。さ、言え!そなたの願い、3つだけかなえてやろう。』
(俺の願いは・・・・・)
『それだけで良いのか?まだ、叶えたいことがあるのではないか?』
(これでいいんです。お願いします。)
『そなたの願い聞き届けた。』
(ありがとうございます。)
俺は決まった願いを言い、少しだけほっとしていた。
(これで姫に会える。姫の心もきっと元に戻る。)
俺は明日が待ち遠しかった。
遅くなりました(-_-;)
後、ラスト1話ですww