第2話 未分類
この都市では、結婚は選ばない。
選ばれる。
中央管理AI〈エウロス〉が、
遺伝子・思考傾向・攻撃性・寿命予測まで算出し、
最適な相手を提示する。
行動範囲で視界に入る異性はエウロスが定期的に結婚相手に最適かの通知をする。
決まった数値以上との異性とのみ評価する時代。
拒否はできる。
ただし保障が減る。
仕事も住居も制限される。
それでも誰も逆らわない。
数値は正しいから。
マナは現在22歳。
身体は女性型。
生体部品は定期交換済み。
問題なし。
精神安定指数、平均以上。
その日の仕事帰り。
人波の中で、
ぶつかった。
顔を上げる。
知らない男。
黒い人工虹彩。
無機質な都市の光を映している。
その瞬間。
世界の音が消える。
胸が、強く打つ。
ノアも同じ顔をしていた。
「……君」
思わず漏れた声。
マナは笑う。
「初対面ですよね」
ノアは視線を逸らさない。
「そうだな」
言葉は冷静。
だが、指先が震えている。
なぜかは分からない……
だが、2人は
少しの会話で連絡先を交換することが
必然だと自覚していた。
翌日、適合通知が送られる。
【ノア・セイン 最終判定:不適合】
理由:
長期関係破綻率 98%
暴力衝突確率 高
片側死亡予測 有
マナは笑う。
「冗談みたい」
ノアに連絡を取る。
「会う?」
数秒の沈黙。
「会う」
即答。
二人は都市の外縁区へ向かう。
監視の薄い区域。
身体交換施設の廃棄棟。
ノアは言う。
「俺は君を知らない。だが、知っている気がする」
マナも同じだ。
理由はない。
でも、初めて会った気がしない。
AIが否定するほど、
引力は強くなる。
キスをする。
ぎこちなく。
でも確信めいている。
翌日、警告通知。
【接触継続により社会保障停止】
仕事が剥奪される。
住居権が凍結される。
ノアは笑う。
「破滅確率、当たりそうだな」
それでも、離れない。
AIは最後の通告を出す。
【危険関係体認定】
【身体遠隔停止措置 実行】
逃げる時間はなかった。
廃棄棟の中。
警告音が鳴る。
ノアの身体制御が乱れる。
「……くそ」
膝をつく。
マナの視界にも赤い警告表示。
二人とも対象。
ノアが笑う。
初めて、本音が出る。
「やっと会えた気がしたのに」
マナの胸が締めつけられる。
理由はない。
でも――
失いたくない。
ノアの人工心臓が停止する。
その瞬間。
マナは彼を抱きしめる。
遠隔停止が彼女にも及ぶ。
視界が暗くなる。
最後に見えたのは、
ノアの顔。
穏やかだった。
手を握る。
離れない。
意識が落ちる。
後日。
都市データベースに記録される。
【危険関係体2名 停止完了】
エウロスは数値を更新する。
適合率 0.00%
だが、解析ログの最下層に、
削除できないエラーが残る。
【再帰的接触履歴 検出】
意味は不明。
処理不能。




