第6章 : 私の最初の友達。
運命
冬の始まりから、僕たちの家の上にはまるで宮殿のようなものが浮かんでいた。
僕はそれを少し面白いと思っていた。だって、それが風や雪から僕たちを守ってくれていたからだ。
おじいちゃんの話によると、僕たちは「サイクロン」と呼ばれる巨大な嵐の真ん中にいるらしい。
その中心は「サイクロンの目」と呼ばれているそうで、僕はその名前がすごくかっこいいと思った。
でも結局のところ、僕の日常は何も変わらなかった。
嵐の中だったけれど、僕は外に座った。
雪は積もらず、草は再び緑を取り戻していた。
雪を生き延びたわずかな虫たちが、恐る恐る姿を現している。
僕は庭を探検することにした。
いつも手放さない図鑑を片手に、そこに載っている虫を探していた。
「フェイト!?」
聞き慣れた声がした。
顔を上げると、そこにはピ――本名はプリシラが立っていた。
リチャードさんの孫娘で、そして僕と同じくドラゴンだった。
「何してるの?」
「本に載ってる虫を探してるんだ。」
「手伝ってもいい?」
少し恥ずかしそうに彼女が聞いた。
僕は首を傾げて、笑いながら答えた。
「もちろん。」
彼女が近づくと、肩までの髪からバラの香りがした。
「お嬢様、ラプラス様にご挨拶してまいります。」
「んー……」
彼女は侍女の方を見もせずに返事をした。
ルルが軽く会釈して屋敷の中へ戻っていくのを、僕は見送った。
優しい人だけど、プリシラの話になると、僕の知る中で一番厳しい大人になる。
……もっとも、僕はあまり大人を知らない。
ママと、ヘンリーさんの奥さんと、ルルくらいだ。
「フェイト、大丈夫?」
ピが僕の注意を引こうとして聞いた。
「ん? ああ、ごめん。ただ、どんな虫なのかなって考えてただけ。」
彼女は少し考えるように小さく唸った。
興味はあるけれど、そこまでではなさそうだった。
僕がページをめくっていると、彼女が尋ねた。
「どうしてそんなに動物が好きなの?」
「えっ?」
言われてみれば――どうしてだろう?
本を見つめながら、僕の表情は楽しさから困惑へ変わった。
正直、自分でも分からない。
この気持ちに名前を付けることもできなかった。
少しむっとしてしまう。
「無理に答えなくてもいいよ。」
彼女は慌てて言った。
僕は首を横に振った。
「分からないけど……動物を見ると、体があったかくなる感じがするんだ。」
「それって、恋じゃない?」
「恋?」
彼女は言葉を探すように指を唇に当てた。
「おじいちゃんがね、人の体にはいろんな感情があるって教えてくれたの。怒りとか、喜びとか、怖さとか……それから愛。全部には理由があるんだって。」
少し考えてから続ける。
「例えば怒りは、嫌なことがあった時に生まれるでしょ?
恋っていうのは……誰かのことが好きになって、離れたくなくなる気持ち。」
そう言って、彼女は僕を見た。
僕は視線を逸らさず見返した。
灰黒色の僕の瞳と、ルビーのように赤い彼女の瞳が重なる。
そして僕は言った。
「じゃあ……僕、ピのこと好きってこと?」
その瞬間、彼女の頬は瞳と同じくらい真っ赤になった。
あまりにも急に色が変わったので、僕はすぐに気づいた。
「具合でも悪いの!?」
彼女は体をこわばらせ、それから本へ視線を落とした。
「んー……からかわないでよ。」
そう言って、髪で顔を隠した。
僕は特に気にせず、顔を上げて星空に冠された要塞を見上げた。
そして再び視線を落としながら言った。
「僕、この世界の動物について全部知りたいんだ。どうして僕たちと違うのか、その理由も。……ピは?」
「わ、私!?」
彼女は本を見つめた。
「うん。」
彼女は自分の手を見つめながら、静かに言った。
「私は……私たちみたいな存在について、もっと知りたい。」
「私たちみたいって?」
「この星には、人間や動物だけじゃなくて……神話の生き物だっているでしょう?
だから、この世界を旅して、一緒に生きている人たちをもっと知りたいの。でも……私たちと同じ存在には、まだ出会ったことがない。」
僕は彼女を見つめた。
彼女は空を掴もうとするように手を伸ばした。
――僕も、彼女と同じだった。
おじいちゃんが話してくれた英雄譚みたいに、この世界を旅してみたかった。
空へ羽ばたき、
そして――この本の作者みたいに、自分でも本を書いてみたかった。
この世界に存在するすべての種族を記した、本を。
「決めた!」
僕は図鑑を見つめながら言った。
「?」
「僕も世界を旅する! そして、全部の種族を載せた自分だけの図鑑を作るんだ!」
そう、もう決めたんだ。
「フェイトも世界を旅したいの!?」
「うん!! 一緒にやらない?」
「世界を……旅するの?」
「そうだよ!」
彼女の顔がぱっと輝いた。
彼女は僕の手を取って言った。
「うん。一緒に旅したい。」
――あの日。
ただの子どもの約束が、
やがて世界の運命そのものを左右することになるなんて、
その時の僕たちは、まだ知る由もなかった。
*
**
僕がピを横目で見ていると、突然、黒い塊が僕の意識を襲った。
――影が戻ってきた。
僕はすぐに立ち上がった。ピの驚いた視線を浴びながら、僕は叫んだ。
「戻ってきたんだ!!」
僕は影に近づいた。
「誰と話してるの?」とピが聞く。
「見て、木のそばだ」と僕は指さした。
ピは僕の指した方向へ顔を向けた。
そこには、黒い塊の中に白い顔がうっすら浮かぶ影が木のそばに立っていた。
ピはすぐに怖がり、僕のジャケットにしがみついた。
僕は彼女を安心させるように言った。
「心配いらないよ、優しいんだから。」
「本当に?!」
「約束するよ。」
彼女は小さな指を差し出した。僕は少し戸惑った。
顔に出たのか、彼女は何も言わずに説明した。
「おじいちゃんは、約束をするときによくこうするの。二人の指を結んで……」
彼女は僕の手を自分の手に導いた。
「それで、『指クロス、鉄クロス。嘘をついたら地獄行き』って言うの。」
僕はぎこちなく笑った。意味はよく分からなかったけれど、少なくとも彼女は少し落ち着いたようだった。
僕たちは影に近づいた。
影は頭を下げ、ピを見た。その動きに彼女は軽く驚いた。
「久しぶりだな!!」僕は嬉しそうに叫んだ。
「ごめんね、小さなドラゴン。最近は忙しかったんだ。プリシラに会ったんだな。」
驚いたピは僕の後ろに隠れた。
「ううん、ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだ……待って。」
影は一瞬振り返り、そして僕たちのもとにバラを一輪持って戻ってきた。
――でも庭には一輪のバラも咲いていなかった。
「はい、どうぞ。」
「あ、あ……ありがとう…」
その気遣いに、僕は少し嫉妬を覚えた。
それでもピはまだ完全には安心していないようだった。
「どうしてバラのことを知っていたのですか?」
黒い男は僕たちの上を見上げた。
――窓越しに僕の母を見ていたのかもしれない。
そして再び彼女の言葉に集中して、こう付け加えた。
「まだ見えていないものを、私は見ることができる……リサ……偶然だな。」
「リサ?それは誰のことですか?」
影は木の枝を見つめ、続けた。
「まだ咲いていない蕾の名前だ。」
「……」
そして彼は腰を下ろした。
僕はピが止めようとするのも気にせず、その膝の上に座った。
彼は特別暖かいわけではなく、むしろ冷たかった。
それでも彼のそばにいると、不思議な安心感があった。
彼は手を僕の頭に置き、そっと髪を撫でた。
僕はゆっくりとまどろみ始めた。
その安心感に引き寄せられるように、ピも僕のそばに座った。
僕たちが共に眠りの世界に沈んでいく間、彼は言った。
「なんて柔らかい……君が友人に言いたかったこと、分かったよ。さて……気分がいいから、ちょっと助言をしよう。」
彼は間を置き、そして宣言した。
「ニマリエという子どもを信じてはいけない。」
僕はその気遣いに微笑んだ。
目を閉じると、彼の手が最後にもう一度僕の髪を撫でてくれたのを感じた。




