間奏: 悪の誕生。
ポタリ、ポタリ。
私は階段の段に座っていた。
両手は、まだ娘の血で濡れていた。
背後では、巨大な青いステンドグラスが、床に広がる血の赤と鮮烈な対比を成していた。
顔を上げたとき、彼がそこに立っているのが見えた。
その瞬間、はっきりと理解した。
――私は、確かに死んでいた。
「気分はどうだ?」
烏の仮面をつけた男が、私の正面に立ったまま問いかけた。
言葉を発するたび、それは拷問だった。
一言一言が、かつての私ではなくなったことを突きつけてくる。
顔が歪み、視界が痛みによじれた末、私は口を開いた。
「最悪だ……。
あまりにも多くの人が、俺のせいで死んだ」
「知っている。すべてだ」
私は拳を握りしめた。
「いや……
血に染まった手を持つことが、どういうことかは分からない」
「……」
彼は沈黙した。
私は顔を上げた。
彼は直立したまま、微動だにしない。
その仮面の奥を読むことは、不可能だった。
「これから、どうするつもりだ?」
空虚な笑いが、喉を抜けた。
「何もしない。
この場所に、永遠に留まる。
もう、誰も苦しめたくない」
私は自分の手を見つめた。
赤かった。
目を伏せても、その赤は消えなかった。
「お前は、いつもそうだ。
終わりのたびに、始まりを拒む。
だが状況は変わる。
変数は常に興味深い……」
彼はそう言い、続けた。
「さて――今回は、どうする?
我が愛しき“創造”よ」
私は顔を上げ、鋭く睨み返した。
「何度も言ったはずだ。
もう、何も創らない」
「破壊が、再びお前の人生に踏み込むのが怖いのだろう。
だが今、破壊は自らの領域で目覚めている。
カリュケーは、魂を封じる役目を果たした」
私は目を見開き、言葉を詰まらせた。
「……どういう意味だ?」
「創造には、後継が生まれた。
自らの領域を持たぬなど、思ってはいなかっただろう?」
彼は大きく両腕を広げた。
そして、黒く変色した親指を仮面に当てた。
「――魂だ」
「だから〈王剣〉は、彼女を選んだ……
領域を持っていたから」
「正解。
剣は力に適応した。
さて、何をする力だと思う?」
「……魂を、刃の中に留める」
「その通りだ。
剣は、生き残るべきものを保存する」
「そして……
旧世界の登場人物たちは、新世界へと流れ込む」
私は再び手を見た。
決断は、すでに下されていた。
「……分かった」
狂気じみていた。
だが、すべて真実だった。
彼は一度たりとも、私に嘘をついたことがない。
それでも――何かを隠していると、私は知っていた。
「まあいい。
その時が来れば分かる」
私は立ち上がり、階段の上を見上げた。
赤い花を描いた青いステンドグラスが、光を真っ直ぐ私に落としていた。
段を下り、彼の横を通り過ぎる。
正面には、扉があった。
取っ手に手をかけ、最後にもう一度、自分の領域を振り返る。
いつ、またここへ戻れるのかは分からない。
扉を回した瞬間、背後の影がこちらを向いた。
「幸運を」
扉をくぐると、闇が私を包み込んだ。
何もない。
私は一人だった。
自分の身体すら、感じられなかった。
それでも、柔らかな温もりが全身を覆った。
どれほどの時間が過ぎたのか――
二ヶ月ほどは、経っていたのだろう。
視界が、ようやく慣れ始めた。
音は聞こえる。
だが視界は、まだぼやけている。
身体は動かない。
意識はあっても、制御できなかった。
そのとき、私は理解した。
――一人では、なかった。
「ねえ、見て。
ニマリ、私を見てるわ」




