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フェイトの記憶 : 創造主の反響   作者: Makuu0
アーチ1、新たな景観
4/7

間奏: 悪の誕生。

ポタリ、ポタリ。


私は階段の段に座っていた。

両手は、まだ娘の血で濡れていた。

背後では、巨大な青いステンドグラスが、床に広がる血の赤と鮮烈な対比を成していた。


顔を上げたとき、彼がそこに立っているのが見えた。

その瞬間、はっきりと理解した。

――私は、確かに死んでいた。


「気分はどうだ?」


烏の仮面をつけた男が、私の正面に立ったまま問いかけた。


言葉を発するたび、それは拷問だった。

一言一言が、かつての私ではなくなったことを突きつけてくる。


顔が歪み、視界が痛みによじれた末、私は口を開いた。


「最悪だ……。

 あまりにも多くの人が、俺のせいで死んだ」


「知っている。すべてだ」


私は拳を握りしめた。


「いや……

 血に染まった手を持つことが、どういうことかは分からない」


「……」


彼は沈黙した。

私は顔を上げた。

彼は直立したまま、微動だにしない。

その仮面の奥を読むことは、不可能だった。


「これから、どうするつもりだ?」


空虚な笑いが、喉を抜けた。


「何もしない。

 この場所に、永遠に留まる。

 もう、誰も苦しめたくない」


私は自分の手を見つめた。

赤かった。

目を伏せても、その赤は消えなかった。


「お前は、いつもそうだ。

 終わりのたびに、始まりを拒む。

 だが状況は変わる。

 変数は常に興味深い……」


彼はそう言い、続けた。


「さて――今回は、どうする?

 我が愛しき“創造”よ」


私は顔を上げ、鋭く睨み返した。


「何度も言ったはずだ。

 もう、何も創らない」


「破壊が、再びお前の人生に踏み込むのが怖いのだろう。

 だが今、破壊は自らの領域で目覚めている。

 カリュケーは、魂を封じる役目を果たした」


私は目を見開き、言葉を詰まらせた。


「……どういう意味だ?」


「創造には、後継が生まれた。

 自らの領域を持たぬなど、思ってはいなかっただろう?」


彼は大きく両腕を広げた。


そして、黒く変色した親指を仮面に当てた。


「――魂だ」


「だから〈王剣〉は、彼女を選んだ……

 領域を持っていたから」


「正解。

 剣は力に適応した。

 さて、何をする力だと思う?」


「……魂を、刃の中に留める」


「その通りだ。

 剣は、生き残るべきものを保存する」


「そして……

 旧世界の登場人物たちは、新世界へと流れ込む」


私は再び手を見た。

決断は、すでに下されていた。


「……分かった」


狂気じみていた。

だが、すべて真実だった。

彼は一度たりとも、私に嘘をついたことがない。

それでも――何かを隠していると、私は知っていた。


「まあいい。

 その時が来れば分かる」


私は立ち上がり、階段の上を見上げた。

赤い花を描いた青いステンドグラスが、光を真っ直ぐ私に落としていた。


段を下り、彼の横を通り過ぎる。

正面には、扉があった。

取っ手に手をかけ、最後にもう一度、自分の領域を振り返る。


いつ、またここへ戻れるのかは分からない。


扉を回した瞬間、背後の影がこちらを向いた。


「幸運を」


扉をくぐると、闇が私を包み込んだ。

何もない。

私は一人だった。

自分の身体すら、感じられなかった。


それでも、柔らかな温もりが全身を覆った。


どれほどの時間が過ぎたのか――

二ヶ月ほどは、経っていたのだろう。


視界が、ようやく慣れ始めた。

音は聞こえる。

だが視界は、まだぼやけている。


身体は動かない。

意識はあっても、制御できなかった。


そのとき、私は理解した。


――一人では、なかった。


「ねえ、見て。

 ニマリ、私を見てるわ」

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