「声が聴きたい」
咲〜…声が聴きたい。癒されたい〜。
机に突っ伏しながら、ため息まじりに蘭がつぶやく。
「どうしたの?」
「だってさ、もう社内の“音”が限界…。
いろんなのが全部、混ざって重たいーーーー。
詮索するつもりはないけど…空気が、重い。」
咲は苦笑しながらコーヒーを置く。
「蘭は繊細だね。無駄に察知するよね
まあ、私も嫌いだけど・・・この感じは苦手。」
「咲はどうやって無心でいられるの?」
「うーん、私はね、干渉されなければ、それでいいって思うからかな。」
「そっか…私は、聞こえちゃうんだよね。
“音”が全部、気配みたいに伝わってくるの。
だから…静かな声が、恋しくなるんだよ…。」
***
暫く、水城と会えない日が続いた。
1週間が過ぎたころ、彼の業務委託が終わり、
またフリーランスとしての仕事に戻ると聞いた。
――もう、会社では会えないんだ。
それを知った瞬間、寂しさが込み上げてきた…
毎朝のざわめきの中に、あの“声”で
かき消してくれることがもうないんだ…
***
週末、帰り道。
街で、蘭は見慣れた横顔を見つけた。
水城さんだ!
そして、その隣には、女性笑っていた。
あの目は・・・
一瞬、時が止まったようだった。
軽く微笑む水城さん
なんだか、楽しそう…
――ああ、そうだよね。
あんな声で包まれたら、誰だって…惹かれるよね
蘭は自分の胸に小さく呟く。
“特別なのは、私だけじゃなかったんだ。”
それでも、その声が好きだった。
ただ聴けるだけで、心が静まるような――そんな音だった。
あ〜私だけのモノにできないのかな…
切なくて、愛おしい。
寂しさを感じた蘭は、虚無感でいっぱいだった…




