表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「日常の不協和音」  作者: Harumin


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/31

「静かな声」

いつも通り、社内には朝のざわめき。

誰かが笑い、誰かが焦っている。

空気が揺れ、音が重なる。

――今日もまた、不協和音の朝。


「おはようございます」


低くて、やわらかい。

その声が、空間のノイズを静かに吸い取るように響いた。


蘭は一瞬、顔を上げた。

――だれ?この人……。



「ねぇ咲、今日ね、すごくいい声の人がいたの。聴こえた?」

「声?」

「うん。たぶん、SEの人っぽい。ノイズが全部消える感じだった」

「蘭っぽいね。耳で恋するタイプなの?」

「ちょっと〜、声がいいのってよくない? …“救われる”感じ…

 なんか、いいんだよね」


咲は笑いながら、

「蘭の心が、安心する“音”なんだね」

そして少しからかうように言った。

「声に、恋しちゃった?」

「そ そんなんじゃ な ないよ…」と頬を赤くして言った。


午後。


「お疲れさまです。

 あの……これ、山下さんに渡していただけますか?」


蘭は一瞬、時が止まった。


――この声。


(また、あの“音”だ……)


心の奥で、何かが静かに震えた。

まるで、不協和音の中にひとつだけ見つけた、

“調和”の音のように。


蘭は慌てて、書類を受け取り

「わかりました… あのお名前は?」

「あ、すみません。システム開発部の水城です。」

「水城さんですね、かしこまりました。」


この声。

まっすぐで、少し低くて、余韻が長い。

空気がゆっくり震えて、胸の奥をかすめていった。


わあ こんなことってある〜〜?


蘭は急いで咲のデスクへ。

「咲ーーー 樹くんは?今日はいないの?」

「うん、今日は外に出てるみたい」

「そっか~ これね、あの声のいい人が、樹くんに渡してってきたのよ」

「そうなんだ〜 17時には戻ってくると思うけど…」


定時の時刻

 

蘭は咲と並んで、樹の帰りを待っていた。

「戻りました〜」

軽い声。空気がまた、ざわっと動いた。


「樹くん 樹くん! これ! システム開発部の水城さんが樹くんにって…」

「あ〜 ありがとうございます。水城先輩わざわざ持ってきてくれたんだ〜」


 ――ん? 先輩?

システム開発部にも“先輩”ってあるの?


「いえ 水城先輩って大学の先輩なんですよ」

「はっ??  大学の?」

蘭の頭の中で、いろんな音が一斉に鳴った。

やばい 頭のCPUがバグってる。

でも、やっぱりあの声だけは・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ