「マニュアルのトーン」
人の声の温度や、そこに含まれる無意識の冷たさ。
_____あー昨日は疲れたな…
でも、慣れるまでしょうがない、面倒見るしかないよね…
「おはようございます」
んー今朝も空気悪っ!!
触らぬ神にっ だな
「吉野さん 今日は前田さん別のことやるので、自分の仕事進めてくださいね」
「あ はい、わかりました。」
ふう、助かった…
「だからこれは、マニュアル見てもらえれば、やり方書いてあるんで、
その通りやってもらえれば、できると思いますから、 それでも分からなかったら
聞いてください。ね」
……おーおー、出た、マニュアル。
そう、私も言われたな〜。「なんでもかんでもマニュアル見て!」って。
ぶっちゃけ、入社して1〜2日でマニュアル読んだだけで
わかるかい!!って言い返したかったよ、ほんと。
今日は咲とご飯食べにいくから、ちゃっちゃと仕事片付けよう〜
***
かんぱーい!!
「おつかれ〜、久しぶりのご飯だね…」
「そうだね…樹くんとうまくいってる?」
「う、うん、まあ…」
「ならよかった、私も欲しいなーあんなイケメン〜」
二人は久しぶりに恋バナして盛り上がっていた。
「そういえばさ、今日ひさびさに、マニュアルみればわかるんで、って会話
聞こえてきて、わ〜でた〜っておもった」
「あーあれか、あの言い方って何気にイラッとするよね…」
「そうそう、咲ったら、読んでも意味わかりません!とか言っちゃって」
「えー、蘭だって同じようなこと言ってたよ・・・」
「あれ?そうでしたっけ?」
そう。確かに仕事をするうえで、マニュアルは大事。
マニュアル通りにやればできる——それは正論。
だけど、誰が読んでもわかるマニュアルを作ってこそ、意味がある。
“マニュアルに書いてある”という言葉は、
ときどき、人を突き放す。
少しだけ冷たく感じる。
「マニュアル通りにやればいい」
その言葉のトーンが、私の中で不協和音になる。




