「ふたつ目の不安」ーいなくなったらー
[律の部屋]
律の部屋に入ると、律の匂い蘭を包んだ。
ソファに座った蘭にブランケットを肩にかけた。
温かい飲み物を持ってきた律が
「いろんなことが、一度に起きて、混乱してるだろ
さっきは、ごめんな…あれは、俺も想定外だったんだが…」
蘭はふふっと笑った。その裏側に焦りのようなものが滲んでいた。
自分も、何もかもが、想像を遥かに超えた出来事に、頭の整理がついていない。
それでも——
ただひとつだけ、確かなことがある。
“律は、私を大切に思ってくれている。”
律はゆっくり近づいてきて、優しく抱きしめてくれた。
そして、律は ”カオリ”という人の話をしてくれた。
「俺は……蘭じゃなきゃだめなんだ、前にも言っただろ、
蘭は俺にとって心地いいって…」
そんなふうに、律は言ってくれたけど…でも
(でも……カオリさんは、また律のところに来る。
不協和音が、また静かに蘭の中で膨らんでいく。
「蘭、今夜はゆっくりおやすみ…安心して大丈夫だからな」
と、律の声の音色に、心落ち着かせる蘭だった。
眠りについた寝顔を見ていた律は、蘭が愛おしくてたまらなかった。
[翌朝]
ゆっくり眠れた蘭は、
そうだ、律の部屋にいるんだ…ふと隣に律が眠っている。
寝顔がきれいだな〜と見つめながら愛おしく思った。
体調不良で早退したこともあり、蘭はしばらく休むことにした。
律も「そのほうが安心だ」と言ってくれた。
(律にこれ以上迷惑はかけたくない……)
律自身は昨夜から仕事を放り出したことで修羅場寸前の状態。
蘭を送ったあと、慌てて職場へ向かっていった。
***
夕方、スマホが鳴った。
咲からの電話だった。
「海外赴任?? うそーーー?なんでーーーー!」
あまりの衝撃に蘭は大きな声を上げた。
咲は蘭の体調を気遣いながら事情を話してくれたが、
蘭の頭の中は別の想像でいっぱいになっていた。
(もし、これが私だったら……
律が遠くへ行ってしまうってこと……?)
(いやだ……ずっと一緒にいたい……)
その瞬間、あの年上のカオリが脳裏に浮かんだ。
(もし、律がカオリさんのところへ戻ったら……
私の前から律が消える……?)
——会いたい。
——声が聞きたい。
——不安で押しつぶされそう。




