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「日常の不協和音」  作者: Harumin


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「波長が重なる瞬間」


夢じゃない——

スマホの画面に表示される“水城”の名前。

たったそれだけで、蘭はふふっと、笑っていた。

昨夜の出来事が幻じゃない証明だが、でも、心の片隅には

不安も感じていた…


****


「いや〜昨日はすみませんでした〜、それで……どうでした〜?」


朝、ガチャッと水城のオフィスに入ってきた樹。

その顔には“お詫び”というより、“状況確認”の好奇心が全面に出ていた。


「まったく、お前は……」

水城は書類を閉じ、冷めかけたコーヒーを一口。


「だって先輩、ちゃんと言わないと、相手を見ようとしないじゃないですか〜」

「そんなことはない。」

「で、昨日、どうだったんです?」


水城は一瞬だけ視線を落とし、コーヒーを口元に運んだ。

その仕草は落ち着いている。


「……あー、それな。付き合うことにした。」


ズドンッ——

樹が持っていた紙袋(手土産)が床に落ちた。


「えっ? 先輩、 まじで?!」


「何か問題あるのか?」

水城はいつもの無表情だけど、目の奥が柔らかい。

「先輩……… 嬉しいです!」

「なんで、お前が喜ぶんだ…」


”よかった…先輩… 頑張ってくださいね。”

樹は、心底安心したように微笑みを浮かべて微笑んだ…


「そう言えば、お前はどうするんだ これから…」

「そうだった……」

樹は真剣な顔をして、話し始めた。


「そうか…フランスか…?」

「はい。でも、ちゃんとケジメつけないと、咲さんと離れたくないんで…」

「そうだよな…離れたくないよな…」


樹の言葉に、水城は小さく息を吐いた。

その瞬間、昨日の夜の蘭の表情と声がふと蘇る。


――あの時、胸の奥がざわめいた。


ずっと、自分だけだと思っていた“世界の音”。

他人には伝わらないと思っていた、小さな雑音や匂い。

その感覚を、蘭も同じように抱えて生きてきたと知った瞬間、

心のどこかが静かに震えた。


前の彼女は違った。

感情の波が荒くて、そのすべてを受け止めようとすればするほど、

自分の音が消えていった。

やがて黙るしかなくなり、その沈黙は“冷たさ”に変わり、

結局、お互いに疲れ果てた。


でも蘭は——

俺と同じ静けさを持っていた。

雑音に怯えて、必死に調律しようとするところも、

人との距離感を測る繊細さも、

どこか、自分と似ていた。


だから――


「この人のこと、もっと知ってみたいと思ったんだ」


距離を詰めても、壊れない気がした。


律は、ゆっくりコーヒーを置いた。


「……ちゃんと、俺も伝えなきゃダメだな」


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