「不穏からの急接近」
音に敏感なのは昔から、当たり前の日常。
いつもの通勤電車の騒音も嫌い、
他人の会話の声も耳につく。
そして、人の匂いにも敏感。
いろんな音と香水や人の匂いが混ざり合って、
気分はいつも最悪。イヤホンとマスクは必需品。
──私って、やっぱり変なのかな。
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おはようございま〜す。
今日も端っこに座って、できるだけ人との距離を置く。
”今日はPCもご機嫌斜めなのか? 重いな〜”
そうだ、AP案件どうなったんだろう、最終チェックするって言ってたのに
全然指示されないし…あの人、仕事できるのに、なんか余裕すぎない?
大丈夫なのかな…
「吉野さん、急で申し訳ないんだけど、今日中に報告するので、
急いで、印刷して、確認してもらえる?」
「はい、わかりました。」
──今日中って…もっと早く言ってよ。なんでいつも急なわけ?
マイペースなのか、人に任せられない人なのか、準備も指示も遅い!!
あ〜〜〜まったく!もう!
ー定時ー
結局終わらないじゃん!みんな巻き込んでそれでも終わらないって
どういうこと?
所詮、派遣はこんな扱いよね…
私は、帰らせてもらいますからね!!
蘭はそそくさと帰って行った。
今日はいそがしかったなあ でも、
その方が余計なこと考えなくて済んだし、良しとしよう!
すると、スマホに着信があった。
咲からだ…
「蘭?おつかれさま…ちょっと今からここに来れる?」
急な咲からの電話で、待ち合わせ場所に向かうことにした。
”あれ?どこにいるんだろう…”
「こんばんは…。」
蘭は一瞬、え?この声… まさか! と思い振り返ると
声をかけてたのは 水城だった…。
「え?あ? なんで?水城さんがここに??」
「あ〜 山下にここに来るように言われてて、吉野さんもですか?」
「あ、いえ、あ〜 咲と待ち合わせ・・・なんですけど・・・」
ピコーンと二人のスマホが同時に鳴った。
”ごめ〜ん、蘭行けなくなちゃって〜ほんとごめ〜ん”
”水城先輩、すみません、行けなくなっちゃったんで…
そういうことなんで、吉野さんのことよろしくお願いしますね!!”
(あいつ!わざとか… )
「吉野さん、山下来れないみたいで…」
「あ、あ、 咲も来れなくなった…みたいです…」
・・・・・・。
「じゃあ 吉野さん時間あれば、ご飯でも行きましょうか。」
──え?ふたりで?水城さんと?
ムリムリムリ。どうしよう。どうしよう。
「吉野さん、行きましょう!何か食べたいものありますか?」
どこ行きましょうか」
もう何が何だか…
でも。
ほんの少しだけ、嬉しい…
にやけていることに気づかれないように、
必死に平静を装った。




