『伊丹十蔵、写真集を出す』
⸺某月某日・都内某出版社
編集者「……えっと、これが“伊丹先生”の写真集企画書……?」
アシスタント「はい。“揺れの哲学”というタイトルで……」
編集者「ジャンルは……?」
アシスタント「えっと……“乳房思想書”です」
編集者「それ、ジャンルにねぇよ」
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⸺タイトル案一覧(原案:伊丹直筆)
•『揺れる、ゆえに我あり』
•『乳と精神』
•『カップを超えて』(副題:この社会に“サイズ”は必要か?)
•『谷間の向こうに、希望があった』
編集「……思想っていうより詩集だなコレ」
伊丹「ちゃう。“魂のスナップ”や」
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⸺撮影スタジオにて
カメラマン「先生、次のカットは“風に吹かれて歩く胸”ってやつですが……」
伊丹「うむ。風速3.7mが理想や。乳の揺れが“泣く”レベルや」
アシスタント「“泣く乳”……?」
伊丹「人間の感情は、全部ここ(胸元)におる。わしはそれを撮るだけや」
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⸺こだわりのポイント(伊丹談)
•撮影は全カット早朝か黄昏限定
•谷間の影は“自然光のみ”で演出
•モデルは全員“未完成”であること
•加工禁止。リアル乳以外、認めん。
伊丹「わしの作品に“Photoshop”は要らん。“素乳”だけが真実や」
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⸺そして、完成した伝説の一冊
書店POP:
今、最も売れている【乳房思想ビジュアル書】
『揺れの哲学 – Dr.Itami’s Aesthetic』
全128ページ、乳しかない。
読後の満足度:96%(ただし理由は誰も言語化できない)
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⸺読者の声
•「読んでる途中で、なぜか泣いてた」
•「上司に貸したら部長昇進してた」
•「“乳に人生を支えられる日が来る”って、これか……」
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⸺伊丹、書店にてサイン会
サイン列の客「先生、“Cカップで悩んでます”」
伊丹「悩みは誇りや。Dの途中、つまり成長や」
別の客「男ですが、この乳本で泣きました」
伊丹「わしも、男やで」
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⸺ラストカット
陽菜子が、こっそり書店で本を手に取る。
パラ……と開いた1ページに、こう書かれていた。
「変化とは、揺れること。
それを“恥ずかしい”と思う間は、まだ美の途中なんじゃ──」
陽菜子、無言で本を閉じて、レジに向かった。
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完。