執着
わかってはいても。
幸せに生きられる方法は数少ないが
幸せに生きるための条件は数多い
そのうちのひとつが
よけいな執着をもたないことだ
すでに胸の内にこびりついている執着まで
削りおとすのは容易ではないけれど
腕に擁いていたり
てのひらにのせているものまで
執着に変えてしまわないことだ
すなわち
愛は愛のままで
悲しみは悲しみのままで
憧れは憧れのままで
願いは願いのままで
ひとつとして
執着に変えずに生きることだ
擁くものにふりほどかれた腕を
のせたものを零してしまったてのひらを
嘆いたり 取り戻そうとしたり
あるいは つぎこそ二度と失わないように
腕をきつくしめあげ
てのひらを指でつよく結ぶより
擁くもののなくなった腕の
そのあたたかさを
のせるものがなくなったてのひらの
そのおおきさを
それじたいをよりどころにして生きていくことなのだ
そしてさらに
そのあたたかさや
そのおおきさこそが
すがるべき さいごのよりどころとなっても
よりどころのまま
けっして執着に変えてはいけない
数多くの条件のひとつにすぎないが
幸せに生きたいのならば忘れてはならないのだ
私?
執着するか/しないかの二択(笑)