創作詩13: 海辺のドッペルゲンガー
本投稿では、創作詩 ”海辺のドッペルゲンガー” を発表します。
我が家は海のすぐ近くにあります。休日の晴れた朝は、ちょこっと海岸を散歩すると気持ちいいですね。青い海、潮の香り、波音、砂を踏む感触などすべてが癒しになっています。
ただ、私は家族関係の悩みが深く、稀におかしくなりそうなときがあります。ドッペルゲンガー(ドイツ語: Doppelgänger)とは、自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種です。
神無づき、
我が家の テラスから、
のぞむ港の 幽玄たるや・・・
月曜の夜明け前、
ヘッドライトが時折行き交う、
湾岸道路を自転車で疾走するスーツ着の
青年Kを見た。
火曜の早朝、
薄らピンクの空にミャーオと響く鳥の声、
あちこち多動な子kの手を引いて幼稚園に向かう
若者Kを見た。
水曜の真昼間、
テラテラと輝く太陽の下、
妙に突き出した堤防の末端で怒鳴り合う
美少年kと壮年男Kを見た。
木曜の昼下がり、
横殴りの潮雨に煽られながら、
必死で誰かを探し回る髪茫々髭面の
中年男Kを見た。
金曜のおやつ時、
肌を突き刺す銀の汐風、
浜辺の剥げたベンチに一人腰を下ろす
詩人Kを見た。
土曜の夕暮れ前、
泥岩の鱗雲に包まれて、
黄色いサザ波が映える海をうつろに眺める
画家Kを見た。
日曜のたそがれ、
灯台下に淡く立ち込める靄、
辺りをキョロキョロしつつ待てど暮らせど
野良猫一匹たりとも見えない。
やがて深更、
家も港も 闇に溺れて、
なみ音だけが 遠くに残る・・・
終わり