第8話 訪れる転機
「ただいまー」
大量のお肉をスライムに収納し、拠点へと持ち帰った。
でも、建てた家に辿り着く前に、大量のぷにぷにが走ってくる。
『『『おかえりー!』』』
「ははっ、みんな待ちきれなかったの?」
『『『うんー!』』』
もちろんスライム達のことだ。
改めて見ると、数も種類もすごく増えたなあ。
そんな中、一匹の白髭を伸ばしたスライムが話しかけてくる。
『ほう、ついに近辺の主を仕留めおったか』
「あ、長老スライムさん」
森で一番長生きしているスライム、長老スライムさんだ。
物知りさんですごく頼りになる。
普段は第二の頭脳として、拠点にいるスライムに指示をしてくれている。
「拠点はどうだった?」
『特に問題ないぞ。みんな働いておる』
「そっか、ありがとうね」
また、数が増えすぎたスライム達は、分業制だ。
色んな種類を見る内に、戦闘に向いている者、警戒に向いている者、生産に向いている者など、特性が分かってきたからだ。
『アケアー、お風呂湧いてるよー』
「ちょうど汗を流したかったんだ、ありがとうね」
『そでしょー』
おかげで、拠点は絶対防壁の上にすごく快適だ。
半年前からは考えられない生活だね。
「ふわ~……」
お風呂に浸かりながら、心身ともに温まる。
ちなみに休憩中のスライムも、その辺で『ぷかー』とか『すいー』とか言いながら浮かんでいる。
そんな中、今日の成果を確かめる。
今ではすっかり日課となった確認だ。
「ステータスを見よう」
ーーーーー
アケア
MP :17400/20000
ギフト:スライムテイム(950)
スキル:スライム便利系 スライム強化系
魔法 :火魔法 水魔法 風魔法 土魔法 雷魔法 光魔法 闇魔法 基本魔法 特殊魔法 治癒魔法 強化魔法
ーーーーー
「増えたなあ」
テイマーの性質上、テイムした従魔のスキルや魔法が還元される。
ただ、他のテイマー系ギフトではテイム数に限りがあるので、従魔を取捨選択する必要ができてしまう。
でも僕は、スライムならばテイム数に限りがない。
だから力を失うことなく、どんどんと増えていくのみだ。
結果、こんなことになってしまった。
「でも、本当はもっとあるんだよね」
ちなみに、これはスキルがまとめられた状態だ。
スライム便利系には、【スライム収納】や【スライム合体】など。
スライム強化系には、さっき使ったようなスライムを強化するスキルなど。
どちらも、二十以上のスキルが入っている。
また、魔法にもそれぞれ大体十個ずつだ。
基本魔法と特殊魔法だけは、もう少しあったはずだけど。
「これってどれぐらい強いんだろう」
ただ僕は、他のギフトについてはほとんど知らない。
テイマーの中ではもしかしたら多い方なのかもしれないけど、上級の剣士系や魔法系はもっとすごいかもしれない。
これに限っては、他の人に聞いてみるしかないな。
「と言っても、人と関わる機会なんてあるのかなあ」
これからのことはあまり考えていない。
今を過ごせたら良いやと、そう思っていた。
そうして、お風呂を上がろうとした時。
『こちら外周部隊! アケア大変だよ!』
「どうしたの!」
外周部隊は、拠点を離れて警備をしているスライムだ。
それなりに遠い位置にいる。
ここから念話が入るなんて珍しいな。
そんな思考通り、事態は一刻を争うようだった。
『人間さんがいるよ! 襲われてる!』
「なんだって!?」
僕はすぐさまその方向へ向かった──。