第6話 無限の可能性
『ぼくたちの魔法なら効くかも!』
念話が届いた方向にいたのは、同じスライムの集団。
でも、通常のスライムより水分を多く帯びているように見える。
すると、テイム済のスライム達が反応した。
『わあ! 水スライムくんだ!』
『久しぶりだねー!』
『水スライムくんは、水魔法を使えるよ!』
「水魔法を!?」
彼らは水スライムというらしい。
たしかに水魔法なら、炎耐性のあるオオカミにも効くかもしれない。
僕はすぐさま行動に出た。
「みんな、僕にテイムされてくれないか!」
『うんいいよー!』
『たのしそうだからねー!』
『ごはんくれそうだからねー!』
二十匹の水スライムをテイムすると、ステータスに変化が現れる。
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アケア
MP :1440/1630
ギフト:スライムテイム(150)
スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】
魔法 :火魔法 水魔法(←New!)
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「よし、僕も水魔法が使える!」
MPが増えたのと、水魔法の習得を確認できた。
あとは力を合わせるだけだ。
「みんないくぞ!」
『『『【洪水球】ーーー!』』』
みんなと協力して、【業火球】と同等の威力を持つ【洪水球】を放つ。
水スライムの数は少ないが、その分僕が多大なMPを使うことで、魔法の威力を高めたんだ。
「ウオオオオン……オ、オォォ……」
「やった!」
水魔法が弱点だったのか、炎を纏ったオオカミは倒れた。
すごい、これが水スライムたちの力か。
「みんな助かったよ! ありがとう!」
『そうでしょー!』
『どういたしましてー!』
『その分ご飯ちょうだいね!』
こうして危機を乗り越え、水スライムという新たな仲間を手にして、僕たちは無事に安全地帯を見つけるのだった。
「もう真っ暗だ」
夕方過ぎ、偶然見つけた洞窟にて。
魔物はいないようなので、僕たちはここで夜を過ごすことにした。
周りは岩壁で覆われている為、警戒は前方のみで済むためだ。
これからの拠点にしても良いかもしれない。
「今日は色々あったなあ」
寝る前に、今日一日を振り返ってみた。
朝に【祝福の儀】を受け、そのまま勘当。
森に捨てられるも、スライム達のおかげで半日を生き延びることができた。
それどころか、今は家よりも幸せなぐらいだ。
またそれは、衣食住に至ってもだ。
『ぼぼー!』
あるスライム達は、目の前でたき火をしてくれている。
火があるとなんだか落ち着く。
簡単になら、ここで調理もできるだろう。
『気持ち良いでしょー』
また、あるスライム達は、自慢のボディを生かしてお布団になってくれるそうだ。
僕と触れ合えて嬉しいみたい。
『次は見張りよろしくねー』
『はーい』
『お肉くうぞー』
そして、あるスライム達は交代で警戒をしてくれている。
これ以上ないぐらいの待遇だ。
ただ、やっぱり少し申し訳なさもあって。
「みんな大丈夫? 疲れない?」
『大丈夫だよー』
『たくさんお肉くれたから!』
『食べ物のお返しはぜったい!』
『あんなに美味しいの初めてだよー』
『明日からもよろしくねー』
でも、スライム達はこの調子だ。
というのも、どうやらスライム達だけでは、直接森の魔物を倒すのは難しいらしい。
いつもは死骸などを漁り、なんとか生きていたそうだ。
それが僕のギフトや指示が相まって、新鮮なお肉を食べられたんだとか。
つまり、食の見返りということらしい。
お互いにとって良い関係ならば、僕も気持ち良い。
明日からもちゃんとご飯をあげないとね。
それから、そういえばと思った事を水スライム達にたずねてみる。
「みんなはどうして水魔法を使えるの?」
『どうしてだろー?』
『水辺で生まれたから?』
『ねー、湿り気あるしー』
詳しくは分からないみたいだ。
ただ、聞く限りは生まれた環境に由来するのかも。
だったら、他にも気になることが出てくる。
「もしかして、水以外にも属性を持ったスライムとかはいるの?」
『いるよー!』
『ぼくは雷スライムくんと友達だよー!』
『風スライムくん見たことあるー!』
『すごい物知りな長老スライムさんもいるよー!』
『知らないスライムくんもいるかもー!』
「ええ! そんなに!?」
予想以上の答えが返ってきて、思わず驚いてしまう。
だけど、これは妙だ。
スライムにそんな話は聞いたことが無い。
「まさか……」
ここから推察できるのは、スライム達も環境に順応しているということ。
この魔境の森は、至る所が魔力に満ちている。
その恩恵でスライム達も進化を遂げているのかもしれない。
そして、そんなスライム達をテイムすれば、僕も強くなる。
【スライムテイム】には数の制限がないので、スライムの種類が増えるほど、僕ができることは増えていく。
まさに“無限の可能性”と言えるだろう。
「よし。次の目標は決まったな」
『『『そうだねー!』』』
こうして、僕は生活基盤を固めつつ、色んなスライム達に会いに行くのだった。
──そして、魔境の森に来てから半年が経った。