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第51話 セレティアの提案

<アケア視点>


「ぜひエスガルドの王都と貿易いたしましょう!」


 アケア領に現れたセレティアは、そう言ってお辞儀をした。

 突然の事に僕は驚いてしまう。


「そんな急に!?」

「はい! ようやく多大な恩をお返しできる機会ですから!」


 エリン様や魔族騒動のこともあり、セレティアは恩を返したいそうだ。

 でも、セレティアはすぐに付け足した。

 

「もちろん対等な貿易ですよ。差があると後々に軋轢(あつれき)が生まれますので」

「なるほど……」

「わたしたちからは主に加工品を。こんな物なんてどうでしょう」


 セレティアはパッと両手を開く。

 それにはフィルが真っ先に反応した。


「王都で加工された、宝石やアクセサリーです」

「はわわわ……!」

「他には装備などもあります。技術には自信がありますので、冒険者の方々にもお役に立つかと」


 それから、セレティアは向こうの『ソコソコ平原』を指した。


「アケア領からは平原の特産物を頂けたら嬉しいです。もちろん吸い尽くそうなどとは思ってません」

「フルーツとかはここ限定らしいね」

「はい。それを基に今後は農業などされてもよろしいかと」

「はえー」


 すると、今度は不安げに下から覗いてくる。


「それで、いかがでしょうか……」


 途端に自信なさそうだ。

 今の話も僕が了承しなければ成立しないからだ。

 でも、こちらには断る理由なんてなかった。


「もちろん! よろしくね、セレティア!」

「……! よろしくお願いします、アケア様!」

「「「おおお~」」」


 何の「お~」から分からないけど周りは湧いた。

 やっぱりエスガルドの王都と言えばすごい相手なのかもしれない。

 すると、セレティアはボソっとつぶやく。


「そしてゆくゆくは領主同士で……」

「え?」

「い、いえ! なんでもありません!」

「そう?」


 最後の方は聞こえなかったけど、セレティアは手を差し伸ばしてきた。

 僕も迷わず応える。


「今度ともよろしくお願いいたします」

「こちらこそ!」


 セレティアが相手なら安心できる。

 むしろ願ってもない話だった。


「「「……!」」」

 

 そして、僕が了承した瞬間、サササっと横を走って行く人達がいる。

 アケア領の商人たちだ。


「それではこちらの条件は~」

「ではこちらからは~」

「「ほう、ありですな!」」


「あははは……」


 早速セレティア側の商人と交渉をしているみたいだ。

 あの熱量なら任せても大丈夫だろう。

 難しそうな話なので僕の出る幕はないかな。


 エスガルドの王都と良い関係を結ぶことができれば、きっと領土も心配ない。

 これで条件通り、僕も自由に活動できるだろう。


「うーーーんっと」

 

 そうして、気持ちを楽にしていると、後ろでは何やら起きている。


「「「アケア領ばんざーい!」」」

「「「ばんざーい!」」」

『『『ばんざーい!』』』


「なんだあれ……スライム達もいるし」


 とにかくアケア領は良い場所になりそうだ。

 今までフォーロス家に従わされていた分、のびのびと過ごしてくれたら嬉しいな。

 それから、最後にセレティアが声をかけてくる。


「アケア様。実は、ある準備をしてきておりまして」

「なんの?」

「ささやかながら祝杯の準備を」

「え、すご!」


 セレティアが手を向けると、馬車からは食べ物やお酒が出てきた。

 再び丁寧な姿勢になったセレティアは、僕に手を向ける。


「本日は祝賀会なんていかがでしょうか」

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