第5話 多大な恩恵
「次はこっちに進んでみるか」
ギガピッグを食してから、しばらく。
僕たちは慎重に進みながら、夜を過ごせる場所を探していた。
深い茂みの中だと、周囲を警戒しにくいと考えたからだ。
また、途中で色々と発見もあった。
「お、これも上回復草だな。それにハイルビー鉱石もある」
魔境の森には、貴重な植生や鉱石がたくさんあるんだ。
序盤でこの調子なら、奥へ進めばもっと珍しいものもあるかも。
人が寄り付かないため、荒らされた様子もない。
ただ、これだけ数が多いと運ぶのは大変だ。
そう思っていると、またもスライム達が助けてくれた。
『じゃあ持っていようかー?』
『また合体するー?』
「うん、お願い!」
スキルにあった【スライム収納】。
これを使えば、スライムが代わりに持ってくれる。
さらに、【スライム合体】で一つになることで、容量は大きくなる。
「何度も聞くけど、苦しくない?」
『ぜんぜーん! まだまだよゆー!』
容量に関しても、この通りだそう。
さっき聞いた話だと、自分でもどこに収納しているか分からないとか。
それでも、取り出す時は正確に取り出せた。
これもスキルの影響なのかな。
とにかく便利なのはありがたいことだ。
そうして歩いている内に、ステータスにも変化があった。
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アケア
MP :1210/1430
ギフト:スライムテイム(130)
スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】
魔法 :火魔法
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「MPの上がり方がすごいな……」
スライムの数は、ちょくちょく増えて百三十匹。
スライムにも個体差があるらしいけど、平均すると一匹10MPぐらいだろう。
また、ギガピッグの後にも何匹か森の魔物を倒したので、経験値でMPが上がっている。
このままいくとどうなってしまうのか。
他人や他ギフトがどれぐらいかは知らないけど、ワクワクしていた。
と、ステータスを眺めていると、周囲を警戒するスライムから念話が入る。
『アケア! ぼくの方から魔物がきてる!』
「了解! まっすぐこっちに戻ってきて!」
『うんー!』
念話の方向から、北東だ。
そのスライムが帰ってきたのを確認し、魔法を放つ。
「【業火球】!」
スライムの【火球】百個分の魔法だ。
道中と同程度の魔物なら、これで一撃のはず。
「やったか?」
「ウオオオオオオン!」
「……!」
しかし、魔物は煙を振り払うと、獰猛な声を上げた。
【業火球】が効かないなんて!
少し戸惑うも、その姿が露わになって納得する。
「炎を帯びている!? まさか耐性を持っているのか!」
「ウオオオオオオン!」
現れた魔物は、炎を纏ったオオカミだ。
見るからに火魔法は効きそうにない。
『やばいよー!』
『どうするのアケアー!』
「くっ!」
業火球はすごい威力だが、効かければ意味がない。
後退気味に戦線を維持するが、これではジリ貧だ。
どうする──と思っていた時、後方より念話が聞こえてきた。
『ぼくたちの魔法なら効くかも!』
「君達は!?」
そこにいたのは、大まかには同じスライム。
だが、今までのスライムより水分を帯びているようだった。