第43話 魔族側の力
「ここから脱出するんだ」
地上と地下の中間で、アケアは大きめの穴を指差す。
同時に、仕事終わりのスライムが顔を出した。
『穴掘ったよー!』
『たくさん掘ったよー!』
『上までつながってるよー!』
モグラスライム。
地中を住処としているスライムだ。
穴掘り、土魔法、土関係ならなんでもござれの便利屋さんである。
アケアは魔族にバレないよう、モグラスライムに穴を掘らせていたようだ。
対して、メイドは心配そうにたずねた。
「アケア様はどうされるのですか?」
「僕にはまだやることがある」
「お、お気をつけて……!」
それから少し。
メイド達を見送った所で、アケアは再び地上を目指した。
その瞬間──
「よう」
「……!?」
突如、上から大きな斬撃が飛んでくる。
とっさに回避したアケアだが、見上げた先の男に目を開く。
「この前ぶりだな」
「マルム!」
現れたのはマルムだ。
目は以前に増してギラつき、怒りの表情を浮かばせる。
すでに臨戦態勢のようだ。
そんなマルムに、アケアは一つたずねる。
「こんなところでやるのか。君の屋敷がボロボロに──」
「知らねえよ」
「……!!」
警告に対して、マルムはぶおんっと剣を振るう。
その威力は凄まじく、屋敷は半壊した。
前までとは明らかに桁違いのパワーだ。
「俺はお前をぶっ殺せればそれでいい。屋敷なんぞ知るか」
「本気なんだね」
「だからそう言ってるだろうがあ!」
「……!」
広くなったフィールドで、マルムはアケアに斬りかかった。
正面から受けたアケアは、すでに気づくことがある。
(なんだこの力!)
「そんなもんかあ!」
「ぐっ……!」
攻撃を弾き合い、両者は一度離れる。
だが、立ち位置は珍しくアケアが押されていた。
準備できていなかったのもあるが、それ以上にマルムが強くなっているのだ。
「その程度かよ、クソ孤児が」
「……わかった。君を迎え撃つ!」
すると、アケアもぷにぷにソードを手にする。
この前は出す間でもなかったアケアの専用武器だ。
それでも、マルムは真っ向から向かってくる。
「小賢しい武器が! ──【剣聖一閃】ォォ!」
「……ッ!」
マルムの無数の剣が迫る。
強く速く、まさに剣聖にふさわしき二十連撃だ。
(剣聖由来のスキル! これほどのものを使えたのか!?)
ギフトを授かった者は、自身の成長に応じてスキル・魔法が解放されていく。
もちろん強いものは解放条件は厳しい。
だが、このスキルは相当上位だと思われる。
少なくとも前回のマルムでは発動できなかった。
考えられる要因は二つ。
急激に成長したか、何らかの手段で強制的に解放したかだ。
しかし、マルムは確実に後者。
(かすかに魔族の魔力がした……)
魔族に施しを受けて体を強化したことで、スキルを解放したのだろう。
アケアは冷たい視線でマルムを見つめる。
「君は魔族側に堕ちたんだな」
「黙れ。お前にとやかく言われる筋合いは無い。俺はただお前を殺せればそれでいい」
「……」
さらに、言動もひどくなっている。
今のマルムは、まるでアケアに執着する化け物だ。
ならばと、アケアも決意を固めた。
「じゃあ、ここで倒すのがせめてもの救いだ」
「いいね、来いよ」
バッと手を上げたアケアに、スライム達が集まってくる。
「【ぷにぷに全身武装】!」
アケアとマルムの二度目の対峙。
今回は全力同士でぶつかる──。




