表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/58

第30話 両陣営の大将

 「クソが、クソがあ!」


 アケアが魔族と対峙した頃。

 逃げ出したマルムは、息を切らしながら走り続けていた。

 口は悪くとも怯えている様子は、(みじ)めという他ない。


「なんで俺がこんな目に!」


 自分の弱さが一番の原因だろう。

 だが、怒りと恐怖で混乱したマルムは、依頼を受けさせた父すら恨む気持ちに陥っていた。

 

「周りが(おとり)にしか使えねえクソザコじゃなければ!」

「誰かいるのか」

「……!?」 


 すると、前方から美しき声が聞こえてくる。

 そのままスっと姿を見せたのは、総指揮のシルリアだ。

 マルムの姿に、シルリアは姿勢を正した。


「これは失礼を。マルム・フォーロス侯爵子息様ですね」

「あ、ああ!」

「お仲間方はどうされたのですか」

「……っ!」


 だが、その質問には顔をしかめて答える。


「し、知らねえ! 俺だけが生き残ったんだ!」

「……分かりました」


 対して、シルリアはあえて聞き返さず。

 先ほどの“囮”発言も聞こえていた距離ではあったが、それには触れなかった。

 すると、代わりに一つ尋ねた。


「では、あえて聞く。キミは努力をしたか」

「は?」

「毎朝剣を振り、日中の鍛錬も欠かさず、夕方も己を磨く。キミはそんな日々を送っていたか」

「なにを……」


 シルリアがじっとマルムを見つめる。


「仲間を見捨てる者は剣士とは言えない」

「……っ!」

「……失礼しました」


 すると、シルリアは目を逸らして口にした。


「後方にはキャンプがございます。マルム様はどうぞそちらへ。我が国へのご協力感謝いたします」

「てめえ!」

「我々は急いでおりますので」

「……!」

 

 それから、最後に合った目はひどく冷たい。

 失望を通り越して呆れたような、全てを察したような目だった。

 

「あの目は……」


 今思えば、見たことのある目だ。


 領民にあたった時。

 メイドにあたった時。

 今作戦で冒険者に怒鳴った時。


 マルムはようやくその目の意味を知り、頭に血が昇る。


「許さん……許さんぞ!」





 魔族の襲撃から、しばらく。


「もう少し耐えるのだ!」


 ここはエスガルド森林A地点。

 現在、最も魔族が出現している場所だ。


「もう少し耐え、なんとか戦況を維持するのだ!」

「「「おお!」」」


 地点指揮官を中心に、冒険者たちは奮起する。

 しかし、犠牲が出ていないとはいえ、厳しい戦いにはなっていた。

 相手にしているのは五人もの魔族だからだ。


「指揮官、前線が崩れます!」

「ぐっ!」


 陣形を張り、多数の罠を仕掛け、なんとか戦線を保ってきた。

 しかし、ほとんど崩壊寸前だ。


 ──そんな時に少年は現れる。


「【七色の砲撃】」

『『『うおー!』』』


 冒険者たちの後方から、七色の光線が走っていく。

 それらは魔族を捉え、宙に綺麗な花火のような爆発が浮かび上がった。


「「「……ッ!」」」


 見た事もない魔法だ。

 その超常現象に冒険者たちは確信した。


「この力は!」

「来て下さったのか!」

「だが、他の地点は!?」


 姿を現した少年は、報告で答える。


「B・C・D地点、全て制圧完了しました」

「「「アケア殿!」」」


 B地点、魔族二人。

 C地点、魔族四人。

 D地点、魔族三人。


 アケアはそれらを全て制圧し、ここに降り立つ。

 そして、最終決戦には紫髪の彼女(・・)も出撃した。

 

「つまり、ここを乗り切ればワタシ達の勝利だ」

「「「シルリアさん!」」」


 後ろからはアケアの友達も駆けつける。


「ぎゃうぎゃう!」

「「「ええ、ドラゴン!?」」」


 アケアが連れてきたドランだ。

 ドランは将来この森のボスになる存在。

 ならば、守りたいと思うのも当然だ。


 アケア達の参戦により、冒険者たちはほっと安堵する。

 しかし、魔族側は笑った(・・・)


「残るはここだけか」

「ああ、だが時間稼ぎは終わったな」

「“あの人”はいつも遅刻なさる」


 すると、空から次元を破ったように、一人の魔族が姿を見せた。

 あくびをしながら眠たげに現れたのだ。


「ふわ~あ、だりい」

「「「……!」」」


 だが、その瞬間、アケアを含めた冒険者たちは目を見開く。

 眠たげな魔族から感じる、異様な雰囲気を感じ取ったのだ。

 今までの魔族とは、明らかに格が違う(・・・・)と。


 そうして、魔族の一人は代わりに紹介をした。


「恐れるがいい。この方こそが──子爵級魔族グラヴィル様だ」


 両陣営の大将が登場し、ここが最終決戦地となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お読み下さりありがとうございます!
今作を応援してくださる方は、↑の☆☆☆☆☆を★★★★★に変えていただけると嬉しいです!
皆様の応援が毎日投稿の力になりますので、よろしくお願いします!

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ