第3話 希望を見出した瞬間
『『『やめろー!』』』
逃げたと思ったスライムが、仲間を連れてきてくれた。
すると、大量のギフトウインドウが浮かび上がる。
≪スライムをテイムしますか?≫
≪スライムをテイムしますか?≫
≪スライムをテイムしますか?≫
・
・
・
「なんだこれは!?」
さっきと同じギフトウインドウだ。
でも、数が多すぎる。
「こんなの聞いたことがないぞ!?」
定説では、テイマーがテイムできる魔物は、一匹や二匹程度。
テイマーで最上位と呼ばれるギフトでも、三匹までというのが常識だ。
だからこそ、テイマーは不遇ギフトと言われていた。
だけど、目の前に広がったウインドウは──およそ“百”。
もしかして、見えているスライムを全員テイムできるのか。
「ブモオオオオオオオ!」
「……! 戸惑ってる暇はないか!」
ここまでくれば、もうどうにでもなれ!
そんな思いで、全てのウインドウを一括で承認する。
すると、僕とスライム達の体が一斉に光を帯びた。
『『『うおー! やるぞー!』』』
「みんな……!」
どうやら本当にスライム百匹をテイムできてしまったみたいだ。
一致団結したスライム達へ、僕は声を上げた。
「みんな【火球】は使えるか!?」
『『『うんー!』』』
「よし! だったら全員で一か所に集めるんだ!」
完全なる思い付きだった。
それでも、なぜかこのスライム達となら出来る気がした。
「いくぞみんな!」
『『『おうー!』』』
一つならば、弱々しい【火球】。
ただし、それが百集まれば、上級の魔法と同等の威力となる。
『『『【業火球】ーーー!』』』
「ブモオオオオオオオ!」
百の【火球】を組み合わせ、上位の魔法へと進化した【業火球】。
その威力によって、ギガピッグの身を焼き焦がした。
「やった……やったんだ! 魔境の森の魔物を倒したんだ! みんなすごいよ!」
『『『わーい!』』』
魔境の森は、序盤でも超危険地帯だ。
それこそ、冒険者ランク上位一%未満であるAランク相当の力が必須と言われている。
そんな魔境の森の魔物を倒せるなんて。
「これが僕のギフト……」
テイマー系ギフトの特性として、テイムした魔物の力は主にも還元される。
魔法やMPなど、テイムしている間はステータス強化の恩恵を受けるんだ。
その証拠に、ギフトウインドウには魔法が色々と追加されていた。
ーーーーー
アケア
MP :750/1000
ギフト:スライムテイム(100)
スキル:【スライムテイム】【スライム念話】【スライム収納】【スライム合体】【スライム分解】
魔法 :火魔法
ーーーーー
「す、すごい……!」
初めの一匹をテイムした時は、MPが10だった。
つまり、スライム一匹のMPが10ぐらいなんだろう。
ギフトの右側の数字はテイム数のようなので、単純に百匹増えてMP1000ということか。
「魔法も使えるようになってる」
魔法スキルの火魔法をタップすると、【火球】と【業火球】が出てきた。
火属性の魔法でまとめられているんだろう。
また、スキルも増えていた。
これはたくさんスライムをテイムした結果なんだろうか。
スライムには色々とできることがあるらしい。
「【スライムテイム】か……」
このギフトは、スライムしかテイムできない。
けど逆に、スライムに特化したギフトと言える。
状況から考えるに、スライムならば“無限に”テイム出来るのかもしれない。
「これは……」
一体なら最弱でも、百体集まれば“魔境の森”の魔物にも勝てる。
それに、スライムは最弱だが、それゆえに最も数が多い魔物だ。
テイムするほど力は大きくなり、その度に僕にも還元される。
つまり──可能性は無限大。
「これはもしかして、ものすごいギフトを授かったんじゃないか?」
それはまさに、誰もが死ぬはずの魔境の森にて、僕が希望を見出した瞬間だった。