第23話 森林の奥地にて
「はあ、なんとかなったあ」
『『『なったあー!』』』
最後の一匹を倒し、アケアが額の汗をぬぐう。
スライム達も真似をして、小さな手で上部をこすった。
主と同じことをしたいスライム達はとてもかわいい。
すると、シルリアが声をかける。
「ありがとうアケア。キミいなければ……」
「ううん、仲間だからね!」
「……! そ、そうか」
アケアからすれば当然のことだ。
だが、シルリアは少し照れるように顔を赤らめた。
「それよりも何を塗ってるの?」
「あ、ああ、これは傷薬をまぶしたものだ。塗っておけば数日の間にケガが治る。ワタシのような近接スタイルには必須だな」
「え、ダメだよ!」
すると、アケアはシルリアに駆け寄る。
「それじゃ跡になっちゃうよ!」
「あ、ちょっ──」
「はい、【上級治癒】」
「……!?」
急に近寄られてびっくりする中、アケアが灯した光で傷は一瞬で治癒する。
「回復魔法までできるのか!?」
「うん。そんなことより、シルリアに傷を負わせたら周りに何を言われるか分からないよ」
「そんなことよりではないのだが……ありがとう」
シルリアは、改めて“テイマーアケア”を実感する。
同時に、心にドクンとするものを感じた。
(なんだ、この締め付けられる感じは……)
だが、アケアはまだ尋ねたいことがあったようだ。
「あと、ここから北東方向に何かない? 巨大な魔物が住んでいるとか」
「北東……あ、あるぞ!」
対して、シルリアは驚いたように口にした。
「北東には“古のドラゴン”が棲んでいる。普段は立ち入り禁止だが……それがどうかしたのか?」
古のドラゴンは、古くからエスガルド森林に生息するボスだ。
だが巣から出る事はなく、冒険者にも危険なことから、“聖域”として立ち入り禁止のエリアとなっていた。
すると、アケアは首を傾げながら話す。
「黒いオーラの出所は、北東のような気がする」
「なんだと! では、古のドラゴンの仕業だと?」
「分からない。でも、何かある気がしてならないんだ」
「アケア……」
朗らかなアケアの表情が少し曇る。
すでにアケアを全面的に信頼しているシルリアは、迷わず口にした。
「ならば行こう。怒られた時はワタシが責任を取る」
「シルリア……ありがとう!」
そうして、二人は古のドラゴンが棲むという“聖域”へ向かった。
「あの先が“聖域”だ」
森の最奥付近にたどり着き、シルリアが前方を指差す。
そこには、大きな神殿のような柱が複数立っていた。
近くには『立ち入り禁止』の看板と、結界も張られている。
だが、アケアは目を見開いた。
「この結界、一部が破られてる!」
「なんだって!?」
「すぐに行くべきだ!」
「わかった!」
周囲を探索させていたスライムから、報告を受け取ったのだ。
二人は迷わず破られた結界まで移動する。
『こっちだよー! ほらー!』
「本当だ……」
スライムの案内に従うと、結界が強引に破られた跡がある。
「魔法で突破されているみたいだよ」
「そんなことができる者がいるのか……?」
「でも、確かめに行かなきゃ!」
「ああ、ここまでくればな!」
二人はすぐさま“聖域”へ飛び込む。
そのまま歩くこと少し、物陰でアケアは足を止めた。
「シルリア、ストップ!」
「ギャオオオオオオオオオオオ……!」
隣のシルリアを手で止めた瞬間、大地を揺るがすような轟音が響き渡る。
物陰から覗くと、そこには巨大なドラゴンが見えた。
「ギャオオオオオオ!」
全体的に体は黒く、周囲にも黒の気高いオーラをまとっている。
強化された魔物と同じようものだ。
また、細長くも筋骨隆々な手足で、姿勢は四つん這いだ。
首と尻尾は長く、体長は計り知れない。
言わずもがな、“古のドラゴン”だろう。
「あれが本物の……!」
「でも様子が変だよ?」
「なに?」
エスガルドの絵本にも出てくる伝説の存在。
シルリアは思わず興奮するが、アケアは訝しげな表情を浮かべる。
すると、アケアの言う通りにドラゴンはふらっと姿勢を崩す。
「ギャオォ……」
「「え?」」
そしてそのまま、古のドラゴンはずしーんと横に倒れた。
「ドラゴンさん!?」
「あ、アケア!」
明らかに弱った様子の古のドラゴンに、アケアはその場を飛び出す。
「ドラゴンさん大丈夫!? 何があったの!」
「ギャオォ……」
「しっかりするんだ! 【上級治癒】!」
「ギャゥ……」
アケアが回復魔法を施すも、よくなる様子はない。
すると、物陰からもう一匹の魔物が飛び出てくる。
「ぎゃう……」
「え!」
出てきた魔物は、小さな古のドラゴンのようだった。




