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第18話 公認冒険者シルリア

<三人称視点>


「な、なんでこんなことに……」


 ギルド管轄(かんかつ)の広場にて、アケアは(ほう)けていた。


 今から予備試験として、シルリアと模擬戦をするからだ。

 周りには、噂を聞きつけた冒険者たちもこぞって集まっていた。


「おい模擬戦だってよ!」

「面白そうじゃねえか!」

「推薦くんの力を見せてくれ!」


 半分はアケアについて興味があるのだろう。

 だが、もう半分はシルリアを見に来ていた。

 

「シルリアさんの剣技を見れるとはな!」

「こいつは貴重だぜ!」

「よく目に焼き付けねえとな」


 シルリアは人気者のようだ。

 美麗な容姿もだが、人々はその肩書きに憧れている。


「セレティア様の推薦たって、さすがにな」

「ああ、シルリアさんはあの(・・)公認冒険者だしな」


 公認冒険者とは、ギルドから認可を受けて直接雇われている冒険者のこと。

 依頼とは別にギルドからも固定給をもらっているため、シルリアは公務員という言い方をしたのだろう。


 公認冒険者に必要なのは、“信頼”と“実績”。

 信頼は、身の潔白さなどを証明できれば良い。

 だが実績は、Aランク探索者以上の肩書きが必要になる。


 つまり、シルリアは上位1%未満のAランク探索者なのだ。


「そろそろ始めようか、アケア」

「は、はい!」


 当然、アケアはそんな事を知るはずもなく。

 シルリアが剣を抜いたのに合わせて、構えを取った。


「もう一度ルールを確認するぞ。どちらかが気絶するか、負けを認めるまで模擬戦は続行。自身が持つものならば、武器・ギフトはなんでもありだ」

「分かりました」

「このコインが地面に落ちた瞬間から開始だ」


 そうして、シルリアがコインをトスした。

 カンっと地面に着地──と同時にシルリアが前に出る。


「わわっ!」

「……! 良い身のこなしだ!」


 一直線に敵を穿(うが)つ、相当な速さの突きだ。

 先日の魔族よりも速かっただろう。

 だが、おどけた声を上げならも、アケアはひらりとかわしていた。


「ならば、これはどうだ!」 

「うわっ!」


 突きの勢いを殺さぬまま、シルリアは剣技を重ねる。

 常にトップスピードを維持する滑らかな動きは、相当な努力が垣間見えた。

 しかし、それでもアケアはよけ続ける。


「これは、予想以上だな……!」

「あ、ありがとうございます!」


 アケアもシルリア以上に速い魔物は知っているが、人間の動きはまた違う。

 魔物よりも繊細で複雑な剣技には、体感して初めて気づくこともある。


(す、すごい……!)


 シルリアの剣技に、アケアは素直に感動していた。

 攻撃に回らないのも、このためである。


 しかし、これではアケアの力を計れない。

 激しい攻防の中でシルリアは口にする。


「アケアは魔法を得意とすると聞いている」

「はい!」

「だが、魔法が使えない状況もあるかもしれんぞ?」

「……!」


 シルリアはこう言うが、アケアにはありえない数のスライムがいる。

 スライムそれぞれが魔法を放てるため、そんな状況はおそらくないが──


「た、たしかに!」


 アケアは素直だった。


 先輩のシルリアの言葉を真に受け、ハッとしたようだ。

 フッと笑った彼女は、一度アケアから距離を取る。


「近接の手段がなければ、苦労する事もあるだろう」

「その通りかもしれません……」

「ワタシにもその手段があると見せてくれないか」


 すると、アケアもそれに応える、


「わかりました。そういうことなら」


 とあるものを試す良い機会だと思ったのだ。

 アケアはチラリと肩に目を向けると、そっと声をかけた。


「いくよ、スライムくん」

「ぷよっ!」

 

 それと同時に、スライムの透過をここで初めて解除。

 全く気配を感じていなかった周囲は、途端に目を疑った。

 

「ス、スライム!?」

「どこから出てきやがった!?」

「というか従魔なのか!?」


 アケアがテイマーだということまでは知らなかったのだろう。

 だが、スライムの本領発揮はここから。

 アケアが指示をすると、スライムが体を変形させていく。


「ぷよーっ!」

「「「なんだあ!?」」」


 みょーんと細長く伸びたスライムは、やがて一本の武器となる。

 アケアはそれをぎゅっと握ると、シルリアも口角を上げた。


「ほう。面白いマジックだ」


 これはアケアが考えていた近接戦闘スタイルだ。

 スキル【スライム変形】を用いた、アケア専用の装備である。


 その名も──。


「ぷにぷにソード!」

「「「……っ!」」」


 だが、周囲は全く同じことを思った。

 

(((だせえ……!)))


 それでも、アケアは至って真剣だ。

 すると、シルリアも剣を以て応えてみせる。


「フッ、ではその力を見せてもらおうか」

「はい!」


 アケアのぷにぷにソードが真価を発揮する──。

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