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第12話 セレティアとの約束

 「外が気になりますか?」


 馬車の中で、セレティアがアケアに声をかけた。 


「いや! そんなことは!」

「ふふっ、無理なさらなくても良いんですよ」


 セレティアとアケアが出会った次の日。

 無事に森を抜けた一行は、隣国エスガルドで馬車を走らせていた。

 もうすぐセレティアの屋敷に着くそうだ。


 ヒルナーデ公爵家は、王族と血縁関係を持つ“王族公爵位”だ。

 屋敷は王都に構えているという。

 つまり、ここは大都会である。


「……っ」


 別館から一歩も出してもらえなかったアケアにとっては、外の景色が気になるのは仕方がないだろう。

 それでも、セレティアは母が病気であることを考えて、気持ちを極力抑えていたのだ。


「……」

「セレティア……」


 笑顔を取り繕っているが、アケアから見てもセレティアは無理をしていた。

 そんな彼女を思ってか、アケアは身を乗り出す。 


「ぼ、僕がきっと治してみせるよ!」

「アケア様……!」

「だから、えと!」


 それから、何か彼女を元気づけようと言葉を探した。


「だから、お母様が元気になったら、一緒に王都を回らないかな!」

「えっ」


 あまりの勢いにセレティアも戸惑ってしまう。

 また、それはアケア本人も(・・・)


(な、何を言っているんだ僕はー!)


 本心ではあるが、格好つけようと、ついつい口走ってしまったみたいだ。

 だが、結果的にセレティアの口角は緩む。


「やはりお優しい方ですね」

「え?」

「ふふっ、その約束楽しみにしておきます」

「……!」


 セレティアに綺麗な笑顔が戻る。

 隣で聞いていたレイルも、微笑ましいような顔で様子を見ていた。


「大きく出たな、少年」

「え、いやあ……」

「ふふっ、アケア様らしいです」


 そして、言ったからには失敗はできない。

 アケアはもう一度決意を固めるのであった。


「頑張ります!」







<アケア視点>


「ただいま帰りました」

 

 隣のセレティアが口を開く。


 大広間で待っていたのは、すっごく大きな男の人だ。

 仁王立ちで腕を組み、今にもゴゴゴゴという音が聞こえてきそう。


「帰ったのか」


 男の人からは、低く静かな声がずしんと響く。

 隣のセレティアに合わせて、僕も頭を下げた。


「はい、お父様」

「……!?」


 お、お父様!?

 ということは、この方が公爵家当主のドレイク・ヒルナーデ様!


「して、隣の少年は誰だ?」

「……っ!」


 ギロリと睨まれた眼光に、つい気圧(けお)されてしまう。

 冷たく厳格な雰囲気だ。

 顔は似ていないが、嫌でも元父上のことを思い出してしまった。


 少しビクっとしていると、セレティアが前に出てくれる。


「この方は、お母様を治して下さるお方です」

「なんだと?」

「アケア様は森でわたし達を救い、無事に送り届けてくださいました。アケア様ならきっと!」

「……ほう」


 セレティアの話を聞き、ドレイク様はずんずんと僕の前にやってくる。

 やっぱりすごいオーラだ。


「……」

「ひっ」


 ドレイク様は、無言のまま手を振り上げる。

 そして、その手を──頭と共に下げた。


「ありがとうございます!」

「!?」

「私の妻は、誰が診ても原因が分からずじまいでした!」


 それから、ドレイク様は胸の内を明かした。


「最初は手柄を上げようと、積極的に著名な方々が診て下さいました。ですが、次々と敗れていく内に、誰も引き受けたがらず、ついには悪い噂まで立ち込めるようになってきたのです!」

「そんな……」

「お父様……」


 その態度に僕は自分を改める。

 この方は元父上とは全く違う。

 公爵家という地位にも関わらず、とても誠実な方じゃないか。


 だからこそ、役に立ちたいとより強く思う。


「できることなら協力させていただきます」

「本当ですか! ありがとうございます……!」


 そうして、僕は治療へと向かった。


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