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リボンの少女に暴君機獣はかしずく  作者: 月光壁虎
目覚めし暴君機獣
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格納庫


 その日エバー学園の格納庫に、新たな大型機獣が搬入されてきた。


 運搬用の芋虫型機獣【キャリーワーム】の荷台に載せられたティラノサウルス型の大型機獣に、作業員たちは揃って目を剥く。


「何だあの機獣は!?」

「あんなの見たことないぞ!?」


 見たこともないティラノサウルス型大型機獣の搬入に慌ただしくなる現場に、駆けつけてきた白衣姿の小柄な男が一人。


「どいてくださ~い!」


 作業員をかき分けて出てきた小男は、すぐにそのティラノサウルス型機獣に目を奪われた。


「すごい、まさか学園のすぐ近くにこんなものが眠っていたなんて……!」


 感嘆の声をあげる小男の名前はエディソン・アルバス、この学園で格納庫の管理を任されている職員である。


「アルバス先生、こちらの機獣なのですがいかがいたしましょう」

「決まってるじゃないですか! 早く解析を進めるんです!」

「はっ!」


 搬入されたティラノサウルス型の機獣を前に、アルバスは子供のように純真な目をしていたのだ。



「あ~、バスター先生のお説教キッツかった……」


 そんなことを愚痴りながらティナの隣をトボトボ歩くアイラ。


 つい先ほどまで実技のバスター先生から、二人はキツい指導を受けていたのである。


「しょうがないよアイラちゃん、だって悪いのは規則を破ったわたしたちなんだもん」


 ティナの言う通り、先ほどの一件で無断でのパラドクスとの交戦に加え地下空間での暴走などなど、二人は怒りの種をいくつもまいてしまっていたのだ。


「そうだけどさ~、あのおっちゃんキレすぎじゃなかった~? ……ティナ?」


 ヘラヘラと愚痴を続けるアイラだったが、黙り込むティナを気にかける。


「……もしかしてさっきのこと気にしてるみたいな?」

「…………」


 黙してうなづくティナは、続いてこんなことを語った。


「せっかく通じ合えたと思ったんだけどな……。やっばりわたしに相棒なんてできないのかなあ……?」

「ティナ……」


 神妙なティナの口ぶりに、アイラは一瞬うつむくもすぐに励ます方へ転換する。


「気にすることないよティナ! アタシだって最初の頃はキー坊と全っ然通じ合えてなかったし! ティナだっていつかあのゴウレックスを乗りこなせるよ!!」

「そうかなあ……?」


 なおもネガティブなティナは、教室に戻ってもずっと浮かない顔であった。


 放課後ティナが女子寮へ真っ直ぐ帰ろうとしていると、どこかへ向かうアイラを見かける。


「あれって、アイラちゃん? 確か今日も運動部の助っ人に行ってたんじゃ……?」


 気になったティナがこっそりと後をつけると、アイラが学園の格納庫に脚を運ぶところだった。


「あそこって学園の機獣が格納されている場所だよね?」


 物陰からひょっこりと顔を出したところでティナはアイラに見つかってしまう。


「あーっ、ティナ! こんなところで会うなんて奇遇じゃん!」

「あ、うん。えへへ……」


 屈託のない笑顔を見せるアイラに対し、ティナはこっそり後をつけていたとは言えずに愛想笑い。


「アイラちゃんこそ、こんなところに来てどうしたの?」

「決まってるじゃん! キー坊の様子を見にきたんだよ!」

「そっか、キー坊ちゃんのことね」

「それじゃあ一緒に行こーっ!」

「え、いいの?」

「ティナも一緒の方がキー坊も喜ぶっしょ」


 ニシシと歯を見せて先導するアイラに、ティナも自然と笑みを漏らした。


「ついでにゴウレックスにも会えるしねたぶん」

「ゴウレックス……」


 ゴウレックスと聞いてティナは足を止めてしまう。


「どうしたのティナ?」

「ゴウレックス、わたしのことどう思ってるのかなあ? なんか怖いよ……」

「心配することないって! ほら、行くよ!」

「アイラちゃん、そんなに引っ張らないで~!」


 アイラに手を引かれたティナは、格納庫のシャッター前にたどり着いた。


「これどうやって入るの?」

「アタシに任せて」


 そう言ったアイラは学生証を暗唱画面にかざし、シャッターを開ける。


「すごーい! さすがアイラちゃん!」

「へへっ。まあ機獣を持ってる生徒なら誰にでもできることなんだけどさっ」


 今まで機獣に乗れてなかったティナが知らないわけである。 シャッターの開いた格納庫に入ると、待機中の機獣たちが三次元的にところ狭しと格納されている様子にティナは圧倒されてしまう。


「すごい、これが格納庫なんだ……」


 上下左右に格納されている機獣の数々に目移りするティナとは対照的に、アイラは自分の相棒が待つ区画へ真っ直ぐ向かった。


「キー坊!」


 アイラが駆けつけたところには、オレンジ色をしたアクセルラプターのキー坊が整備士の手によって整備されていたところである。


「アタシのキー坊の調子はどう?」

「ちょっと損傷はあったけど、これならまたすぐに稼働できそうだ」

「よかった~!」


 安堵の息をついたアイラは、続いてキー坊の正面に来て告げた。


「ごめんね、キー坊。アタシが無茶させちゃったばっかりに」

「グギュルルル……」


 そんなアイラに対しキー坊は頭を垂れて主に擦り寄る。


「アハハ、くすぐったいよ~!」


 そんな微笑ましい様子を目の当たりにしたティナは、再びゴウレックスのことが頭に浮かんだ。


「あのっ、ゴウレックス……ティラノサウルスみたいな大型機獣は来てないですか!?」


 ティナが問いかけると、整備士の一人がある方向を指し示す。


「それならさっき搬入されてきたばかりだよ。ちょうど今アルバス先生が解析を進めてるところ……おいっ」


 整備士の話を最後まで聞くことなく、ティナは格納庫内を駆け出した。

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