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リボンの少女に暴君機獣はかしずく  作者: 月光壁虎
決闘、そして暴君とのシンクロ
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混乱と後悔

「ん、んん……っ。あれ、ここって……」


 気がつくとティナは自分の部屋のベッドに寝かされていた。


 そんな彼女が緑色の目を開けるなり、そばで見守っていたアイラが飛びついてくる。


「ティナぁ!」

「わぷっ、アイラちゃん!? そんなに強く抱きつかれたら苦しいよ~!」


 ティナの顔面を豊かな胸に埋めていたアイラは、すぐに離れた。


「あ、ごめんごめーん! アタシがティナを部屋まで運んだんだけどさぁ、あの後ずーっと目を覚まさなくて心配したんだよ?」


「あの後……? ――うっ!」


 気を失う前のことを思い出そうとしたティナは、鋭い頭痛にぎゅっと目を閉じる。


「大丈夫!? ティナ!」

「う、うん。平気だよアイラちゃん。ちょっと頭が痛くなっただけ」

「それならいいんだけどさ~」


 ほっと胸を撫で下ろすアイラのきれいな顔を間近にして、ティナは一瞬見惚れた。


(まつげ長いな~。目鼻立ちも整ってるし、やっぱわたしなんかと違って美人さんだよね……)


「――ん、アタシの顔に何かついてる?」

「う、ううん! 何でもないよ!? それより何があったの?」


 ティナの質問にアイラはキョトンとしてしまう。


「へ、覚えてないのティナ?」

「う、うん……」

「決闘だよ決闘! アタシたち二人でイインチョーたちと決闘してたんだよ!!」

「決闘……あ!」


 刹那ティナの脳裏に先程までの光景が甦り、その顔を青ざめさせた。


「わ、わたし……!」

「え、ホントに大丈夫なのティナ?」

「ごめんねアイラちゃん! ちょっと独りにしてくれない……? なんか頭の中がグルグルしちゃって……」

「ティナがそう言うなら……。――明日ちゃんとクラスに来なよー!」


 そう伝えてアイラが部屋を出たところで、ティナは自分の身体を抱えてうち震える。


「わたし、どうしちゃったんだろう……!」


 ゴウレックスに乗ってティナが感じたのはとてつもない破壊衝動、それに加えて同じくらい強烈な高揚感。


 自分はあの時それを心地いいとさえ覚えて、疑うことなく同調してしまっていた。


「どうしよう……わたし、わたし……!」


 後に残された得体の知れない恐怖と罪悪感に、ティナはその日一睡もできなかったのである。


 結局少しも眠れないまま朝を迎えたティナは、朝食もとらずにぼんやりと学園の教室に向かう。


 教室に入るなり揃いも揃って目をそらすクラスメートを気に留めることなくティナが自分の席に着くと、すぐに駆け寄ってきたのはアイラだ。


「ティナ! あの後大丈夫だった!?」

「あ、アイラちゃん。うん、大丈夫……じゃないかも」

「どうしたの、顔色悪いよ!? 絶対朝食べてないよね!?」

「アイラちゃん!!」


 心配でお節介を焼こうとしたアイラに、ティナはピシャリと言い放つ。


「……ご、ごめん。ちょっとうるさくしちゃったかな」

「ううん、アイラちゃんは悪くないよ。とりあえず独りにさせて、ね?」

「う、うん……」


 後ろ髪を引かれるような素振りで離れていくアイラを見届けたところで、ティナは独りで机に突っ伏した。


「ティナ・ララミリアさんだっけ? 大きな恐竜の機獣に乗って、昨日の決闘で委員長たちを医務室送りにしたって」


「あれヤバかったよな、俺チビりそうになったもん」


「あの暴れっぷりはもはや人と機獣のそれじゃないでしょ」


「噂だとあの娘、機獣で暴れてる間笑ってたんだって?」


「何それ怖ーい!」


「もはや鬼か悪魔でしかないわ、あいつ」


 クラスメートによる心ない陰口をその身にグサグサと受けながら、ティナは昨日の後悔に頭を抱える。


「わたしがやっちゃったんだ……!」


 その後の授業も全く頭に入らず、お昼に食堂で軽くサンドイッチを食べただけのティナはふらふらとある場所へ歩いていた。


「……来ちゃった」


 そこは生徒の所有する機獣が全て収納されている、学園の格納庫である。


 学生証で巨大なシャッターを開けると、ティナはまるで導かれるようにゴウレックスの元へ向かった。


「ゴウレックス、あなたって……」


 ティナが見上げた頭上で、巨体のゴウレックスが顔を下ろして彼女に寄せる。

「ドゥルルル……」


 そんなゴウレックスの顔に身を任せるティナは、ボソリとこんなことを。


「教えてゴウレックス、あなたは一体何がしたいの……?」


 切なる問いかけを投げかけるティナを、ゴウレックスは黙したままじっと見つめる。


「……なんでだろう、こうしてゴウレックスに触れてると安心するんだ」

「ドゥルルル」


「――コホン、ちょっといいですかね?」


 するとそこへ話しかけてきたのは、格納庫の責任者であるアルバス先生だ。


「あ、アルバス先生! 勝手にごめんなさい!!」

「いいんです。そもそもここは機獣を従える生徒なら誰でも入れるところですからね。それよりも……」


 瓶底のように分厚い眼鏡の奥から見つめるアルバス先生に、ティナはたじろいでしまう。


「な、何でしょう?」

「もしかしてララミリアさん、ゴウレックスと一つに(・・・)なってませんでしたか?」

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