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2.5話 時が止まった日 ①

 その日は風がよく吹く日だった、太陽は流れる雲で頻繁に隠れそのたびに少し寒くなる、かと思えば太陽が再び出ると今度は風が心地よく感じられる そんな日だった。

 

 クラウスは14歳になり、リョーマも同じ日に14歳になった。

 クラウスとリョーマは朝起きてからジリアが作った朝食を食べて家を出た。

 

 2人はダンチが異空間へ繋がるようになってからの6年間何度もダンチに出かけては探検をした。

 扉によってある程度の空間の広さは決まってはいたが、入るたびに環境が変わる空間は2人にとってはたまらなく面白く何度探検に行っても、飽きることも無く毎週のように探検をしに行っていた。

 2人が8歳の頃に探検するチームの名前をダンチ団にするのかダンチーズにするのかを巡って喧嘩した時以外はダンジョンに行かない日が2週間開くことは無かった。

 ベルがまとめてダンチダンズでいいじゃんと言うのがもう少し早ければ1日で終わっていただろうと思える程の些細なケンカだ。


 いつもの集合場所に行くとベルはもう待っていて、2人を見つけると手を振ってダンジョンで見つけた伸縮性のある植物の蔓で束ねた髪を揺らしながら走って近寄ってきた。

 ベルも2人程頻繁に行ってはいなかったが2人についていった時に偶然景色の綺麗なダンジョンを探検してからは良く探検についてくるようになった。

 

 「2人とも誕生日おめでとう」

 ベルはそう言うとにやっと笑って花飾りを2つ取り出して2人に見せた、よく見るとベルも同じ花で作った花飾りを頭につけている。

 

 「今日は2人の誕生日だけどせっかくだから3つ作ったんだ~」

 なんだかニヤニヤしているような声でそう言って2人の前に花飾りをグイっと近づけた。

 「ありがとう」

 「花飾りか……」

 

 クラウスもリョーマも驚いたがリョーマはすぐに礼を言って花飾りを受け取って身に着けた。


 ベルは花飾りをつけたリョーマを嬉しそうに見てすぐに隣にいるクラウスに視線を送る。

 「なんで花飾りなんだよ、前は置物だったのに」

 クラウスは受け取るのを渋りながらも少し恥ずかしそうに受けとってそう言った。

 


 1年前の誕生日にはクラウスとリョーマに一体づつベルが置物を作ってくれた。置物の形はダンジョンで見つけた素材でベルが考えた架空の生き物だ。

 クラウスとリョーマにあげた置物で2対になっていて2人はとても気に入った、その証拠に今でも架空の生き物が2体クラウスとリョーマの家の扉で門番のように守りを固めている。


 クラウスが花飾りをつけたリョーマをちらりと見ると少し照れた様子のリョーマとは対象的に頭の左側には花飾りが誇らしげに咲いていて、風が吹く度に少し揺れた。

 「お母さんに教えてもらったの、かわいいでしょ?」

 そう言うとベルはわざとらしく花飾りを見せてポーズを取り始めた、見せびらかすかのように微笑んでいる。

 返答に困ったクラウスはリョーマを見たがベルがポーズを変える度にニコニコと笑いながら拍手をしてベルをさらに調子づかせるばかりだった。


 「着けないの?」

 クラウスがいつまでも花飾りを着けないのに気付くとベルは不思議そうに言った。

 

 クラウスが悩んでいるとその手に持っている花飾りをリョーマの頭の右側につけはじめた、つけている最中もクラウスの方をチラチラと見ながらベルの目つきは少しイジワルそうに『リョーマにあげちゃうよ~』と言って花飾りをリョーマにつけた、花飾りがついた途端なぜかリョーマもクラウスを見ながらにやっとしてぎこちなくポーズを取り始めたのを見てクラウスは慌ててその花飾りを自分の頭に着けた。


 花飾りをつけたクラウスを見てベルとリョーマは顔を見合わせ、見たかったものが見れたとにんまりした。

 クラウスは耳の先まで赤くなって「もう行くぞ」と言って1人でダンチに向かって歩き出してしまった。

 

 クラウスの顔はもう後ろからは見えなかったが歩くスピードの速さと声の上ずり加減がまだ赤面しているだろうと思わせ、歩く度に大きく揺れる花飾りを見てクラウスの姿を思い出してはダンチにつくまでの間に2人は何度も笑みをこぼした。

 

 

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