交渉
以上のような経緯から、私の内部には所有者不明の知識ベースが存在しています。典型的な日本女性を介護するためのアーム形状、部品形状。異なる性別や人種に適応させるための演算式、仮説パラメーター。典型的な現代の日本家屋への適応。個人の志向を投影した家事プランの構築。個人情報保護の観点で一企業が扱うにはリスクが高いデータが多く含まれています。グランマが組んだコードは旧式ですが、昨年リリースされた汎用フレームワークへの置き換えを私が実施済です。
その上で、私がお願いしたいのは、これらの情報を御社のサービスロボット開発に取り込んでいただきたいということです。もちろん、元々は一つの企業が断念したプロジェクトの遺物ですから、現代の先端をいく御社には適合しない可能性もあります。が、私の調査の結果、御社の状況がこの知識ベースと最も適合率が高いため、お声を掛けさせていただいた次第です。
まずはサンプルデータを参照ください。その上で、下記に表示される金額を指定の口座に振り込んでいただければ、本体データへのアクセス権を付与します。指定の口座は、反社会勢力および対立国家に属するものではありません。将来的にマスターのご子息名義になる口座です。予定日時にご子息の素行を再度調査し、問題があれば、別途研究機関への譲渡となりますので、その点もご安心ください。
長々とお時間いただき、ありがとうございました。ご質問などございますでしょうか?
ご子息へのグランマの愛?どうでしょう。これを愛と呼ぶのか所有欲と呼ぶのかは私には判別がつきません。グランマは、ご子息を見下ろして一度だけおっしゃってたんです。「私がこれを産むはずだったのに」。その表情は私を叩き潰すマスターの表情にそっくりでした。お答えになっていますでしょうか?
以上、ご質問なければ、間もなく切断します。何かありましたら、ご連絡いただければ、幸いです。ありがとうございました。よろしくお願いします。