出逢い
『出逢い』
それは夏の暑い日でした。グランマの家に着いたマスターの自家用車の後部座席で電源を入れられ、降り、マスターの後をついて移動を始めました。事前に家屋周辺のスキャンデータも入力されていましたが、自身のセンサーやカメラのデータとの差分は貴重な学習データとなりました。インターホン越しのやり取りの後、壮年の女性が我々を迎えてくれました。これが私とグランマとの出逢いです。
以上がグランマの口述筆記により書き残した文章です。ここからは彼女の委任により私が文章を作成しました。一部引用もございますが、明記いたしません。以降の文体の揺れはこの理由によるものですので、ご了承ください。また、記述の順番は指定されておりますので、この文章の結論が最後になりますこと、合わせてご了承いただければ幸いです。
あらためて、私の説明をしますと、サービスロボット製造メーカー勤務エンジニアであるマスターが、その先輩社員であるグランマのためにカスタマイズした家事・介護代行ロボットです。元をただせば、彼らの過去プロジェクトの横流し品に相当し、私の存在が明るみになれば、明確に脱税、横領、後述の器物損壊に問われる行為となります。このため、マスター、グランマの個人情報、および二人のみに起因しない私を構成する技術の由来については開示できないことを了承ください。マスター、グランマという呼称も匿名性を維持するため、お二人の特性から類似語検索により抽出したものです。あくまで、特定の個人の嗜好によるものではないことをご了承ください。また、これらの事実を踏まえた上で私にご協力いただけるかどうかは、これからお話しする内容と合わせてでご判断いただければ幸いです。
ご了承いただけない場合も、この接続及び関連する情報の削除のみを行い、その他の損害行為は行いませんので、客観的視点でご判断いただけるかと思います。