ぬいぐるみたちのこんご
「文化祭で作ったぬいぐるみ、どうしますか?」
「うーん、どうしよう。実際に使うと思う?」
「来年は別の展示をしてそうな気がします」
くま、うさぎ、ねこ。可愛らしいぬいぐるみ達が、とある机の上に飾ってある。
ここは手芸部では無くて、ミステリー研究会。ということはあってもただ邪魔な気がする。可愛らしいから、いつまでも置いておきたいんだけど。
「奈央と大和先輩、もう帰りましょう。ぬいぐるみのことは明日みんなで考えましょう」
「あっもう下校時間だ」
気がついたら遅い時間。もう帰らないと。
私達はミステリー研究会室から急いでた、もちろん戸締まりはしっかりとしたよ。
「人げんがようやく帰ったで」
「とはいえゆだんしないよーに。わすれものをとりにくるかもしれない」
ぬいぐるみたちはゆっくりとうごきはじめる。
だれもいなくなった、このへや。ここは今ぬいぐるみたちがおしゃべりをしている。
「くまとうさぎはしんぱいしょうですね~。だいじょうぶです、もう8時ですし、いまくる人はいませんよ~」
ねこはうーんと体をのばす。
「そうやな。せや、人はまだウチらをどうするかきめてへんみたい」
「いつか、明日と、きめるのをあとまわしにしてるからな。えいえんにこのままかも」
「そうやとえんやけどな。ここでくまやねこといるのはたのしいし。ここいがいのことをウチはしらへんから」
うさぎはへやをぐるっとみる。
「だけど、ここはぬいぐるみをおくためのへやじゃない。それにずっとおいておけるなら、どうするかを考えなくてもいいだろ」
くまはふあんそうにそわそわして、あちこちを見る。
「なるようにしかなりませんよー。ぬいぐるみであるわたしたちがひとのかんがえをかえることはできません。そこではなしだけ、じかんのむだです」
「そりゃそうやけど」
「それはわかっているが、それでもふあんなんだ」
うさぎとくまはなっとくしていないみたいだ。
どれだけじかんがたってもぬいぐるみたちのふあんはとれない。じかんだけがすぎていく。
「やっぱり、ぬいぐるみ捨てましょーよ。ミステリー研究会にぬいぐるみはいりませんよ」
千歳は机の上に置いてあるぬいぐるみを指さす。
くま、うさぎ、ねこ。可愛らしいぬいぐるみは癒やしになるけど、このままだと単なる邪魔だ。
「フリーマーケットで売りますか?」
とはいえ捨てるのは勿体ないので、どこかで売った方がいい。部費がいっぱいもらえているわけでないので、お金もあったらうれしいし。
「そうだね、じゃあ私達3年生は受験で忙しいから、2年生が売って」
と大和先輩が話を終わらした。
「なんかぬいぐるみが動いたような」
ぬいぐるみ達が首を振っている。縦じゃなくて横だから、何か否定したいことがあるのかな?
「気のせいだって。ぬいぐるみが勝手に動くわけない」
千歳はバッサリと否定する。もう一度見てみると、全く動いていない。
確かに気のせいかもしれない、ぬいぐるみが勝手に動くわけ無いから。