ひったくり
大事そうに、カバンを運ぶ人がいた。
抱き締めるようにして、持っていた。
猫背になりながら、街を歩いていた。
カバンを、ひったくってやった。
大事そうに、抱えていたから大金だろう。
細い路地の片隅で、開けてみた。
これ関係に詳しいから、知っている。
これは、処分にお金がかかるゴミだ。
ここで、捨てたら不法投棄になる。
とりあえず、持って家に帰ることにした。
カバンを、ひったくってやった。
僕は、ひったくり専門のひったくりだ。
ひったくり犯を、いつも探している。
ひったくったものを道に広げ、立ち尽くした。
よく分からないものだった。
お金ではなく、知らない物体だった。
「すみません」
「はい」
誰かに話し掛けられた。
一瞬で、逃げる体勢になった。
「それ、五千円で売ってください」
「あ、はい」
その人は、ゴミマニアと名乗っていた。
近くに、カバンを見つめる黒い影があった。