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意外な出会い

あともう1回で連載が終わります

 暗闇でも箱を視認できることから箱自体が発光していることがうかがえた。しかし感心

することに一列になって等間隔で進んでいく。そこから何らか意思を感じ取るとのは自然

な類推だった。

 ふと行く手にどこか不自然な陰を認めた。何か巨大な物体が星々のわずかな光を受けて

宇宙空間に浮かんでいる、箱はそこに向かって飛んでいった。あそこが目的地か。アメリ

アは箱の一つにしがみつくと物体への侵入を試みた。

 近寄ってみるとそれはますます大きく見えた、。所々に四角く開いた口が光っているのが

見え。箱がそれらへ吸い込まれていった。アメリアの取り付いた箱もその一つに向かって

いく。アメリアは身構えた。

 箱は滑るように奥へ進み、やがて何かにぶつかったように止まった。ここが終点だろう

か。アメリアは箱から離れた。すると上方からクレーンのようなものが伸びてきて、箱を

掴みあげた。そして箱をどこかへ運び去ってしまった。

 とりあえず侵入するこには成功した。さてこれからどうするか。アメリアは周囲を見回

した。するとほの暗い明かりの下、通路の一角に扉があるのが目に留まった。近づいてみ

るとスライド式の自動扉らしい。

 扉の前に立つと難なく開いた。宇宙空間との圧力差はないようだ。どうして普通に呼吸

できるのか謎だ。

 中に入ってみるとシックな造りの通路がゆるい曲線を描きながら続いていた。どこへ通

じているのか分からないが先に行くしかないだろう。アメリアは思い切って歩みだした。

 進んでいくとかすかに人の騒めきが感じられた。誰かいるのだ。アメリアは身を固くし

た。武器が手元にないのが悔やまれた。

 気が張っていたせいもあり、壁面から突然人影が現われた時は「わっ!」と大きな声を

あげてしまった。相手も驚いたようでびくんと体を震わせたが、すぐにアメリアをじろい

とねめつけ、声を荒らげた。

 しかし何を言っているのか分からない。その時になってアメリアは相手が人間でないこ

とに気づいた。目が三つある。そのことに驚いていると相手は急にアメリアの手首をつか

むとしゃにむに引っ張りだした。どこかへ連れて行こうという腹積もりらしい。

 アメリアは抵抗しようとしたが、相手の腕力が強く、かなわなかった。そのまま無理や

り連れて行かれ、やがて大きな空間に出た。

 そこは天井が見えないほどの大きさで、煌く光がさんさんと降り注いでいた。そして巨

大な物体が嫌でも目に飛び込んできた。それは見上げるほど大きな立像だった。腕組みし、

足を踏ん張って立っている。しかいまだ未完成で、顔の仔細は明らかではなかった。

 それだけ見て取ったところでアメリアはどやされ、突き飛ばされた。そして手を突いた

先にはあの箱があった。箱は幾段にも積み上げられ、幾人もの作業員が、箱に工具を振る

っていた。

 良く見ると作業員の目は人間と同じ二つだった。さらに観察すると彼らを見張る兵士た

ちは三つ目だ。そこに身分の差を感じ、アメリアは慄然となった。また二つ目である自分

は丁重な扱いは受けられないだろうと察しがついた。

 果たしてアメリアを連れてきた相手は何事か怒鳴り声をあげた。しかしもちろん意味は

分からない。まごついていると相手はいきなり腕を振るった。すると腕が鞭のように伸び、

アメリアの首に巻き付いた。途端痺れるような激痛が走った。

 アメリアはしゃがみ込んで身もだえた。やがて相手の攻撃が収まった。アメリアはよろ

よろと身を起こす。すると一人の作業員がアメリアに近づき工具を手渡した。そして手で

工具を扱うさまを見せた。

 アメリアは仔細を飲み込み、分かったとうなずいた。作業員は笑みのようなものを見せ

て彼女のもとから離れた。

 作業は単調なものだった。箱を小分けにし、丁寧に整形する。整形されたブロックは立

像の建材になるのだった。また強制労働をさせられることにアメリアはげんなりとした。  

 工具を振るう音がやかましく、気が変になりそうだ。しばらく経ってふと騒音がやんだ。

何事かと思いアメリアは手を休め顔をあげる。すると見慣れない一団が姿を現していた。

 華麗な武具に身を包んだ兵士たちが居並び、中央に立つ人物を護っている。その中央の

人物は奇異なことに仮面を着けていた。仮面はもちろん三ツ目だ。作業場にいた三ツ目の

男たちは皆平伏していた。二つ目もそれにならっていたが、顔の表情には憤懣さが表れて

いた。

 そんな次第を観察していたアメリアはいきなり頭を押さえつけられ、強制的に平伏させ

られた。ためにそれから事態がどう推移していったのか分からなかった。気が付くと両脇

を兵士たちに捕らえられ、無理やり立たされていた。

 腕を固められて痛い思いをしながら顔をあげると目の前にあの仮面の人物の姿があった。

仮面の人物は何事か命じた。すると兵士たちはアメリアを引きずるようにして歩きだした。

どこへ連れていかれるのか。アメリアは恐懼せざるをえなかった。

 彼女が連れてこられたのは先程までの作業場とはまるで異なる豪華な内装の一室だった。

仮面の人物が何事か命じた。すると兵士はアメリアの腕をねじり上げ、手錠で後ろ手に拘

束した。そして仮面の人物に敬礼すると部屋を退出した。

 室内にはアメリアと仮面の人物だけが残った。仮面の人物は調度の椅子に腰を下ろすと

卓に載った壜を取り上げ、中身をグラスに注いだ。そして「飲むか」とアメリアに誘いか

けた。はっきりとした汎銀河語で。

 アメリアは驚愕し「あなた何者」と声を荒らげた。

「そう邪険にするものではないぞ。君に浮かぶ瀬があるかどうかは私の胸先一つにかかっ

ているのだからな。でもまあ正体を明かすのも悪くはないだろう」

 相手は得意げに言うと仮面を外した。するとその下からは二つ目をした人間の顔が現わ

れた。

「ドクター・ピウスツキ!」

 その顔をアメリアは知っていた。いや知らない者はいないだろう。なにせ銀河中で指名

手配されているのだから。

「足取りが掴めないと思ったらこんなところにいたのね」

「そうさ。ここは天の川銀河の属する宇宙とは別の宇宙。ここでは別の物理法則が支配し

ている。君も経験しただろうが、こちらでは宇宙空間でも息ができる」

「そんなことより私をどうするつもり。こんな手荒な真似をして」

「それはもちろん君を花嫁にするためさ」

 アメリアは思わず吹き出してしまった。ついでありったけの軽蔑の意を込めてドクター

をねめつけた。

「実情を知れば君もそんな失敬な振舞いは出来なくなるだろう。なにせ私はこの世界では

英雄、神様みたいな存在なんだ。証拠にほら、あの立像、あれは私を象ったものなんだ。

偉大なる勇者を称えるための記念碑だ」

 そこでアメリアははたと箱の正体に気づいた。あれは建築資材だったのだ。

「きみも働いたことがあるんで分かるだろうがこちらの世界では手に入らない資材を手に

入れるために向こうの世界に採掘現場を作ったのだ」

 そんなことのために働かされていたとは。アメリアは歯噛みした。

「今まで捕まえたのは男ばかりだった。そこへきみが現われた」

 ふとアメリアはドクターの視線に邪なものを感じた。

「女性は初めてだ。君を見たときふと心に温かいものがあふれた。知っての通りこの世界

では私は正体を隠さねばならない。見破られないよう始終気を張っていなければならない

のだ。そのストレスを癒す術を私は求めていたのだ。そして見出した。それが君なんだ」

 アメリアは思わず相手に唾を吐きかけそうになった。そんな目的のために自分を捕らえ

たのか。

「身の安泰は私が保証する。二人でこの世界で幸せを育もう」

 ドクターはアメリアを抱き寄せようとした。瞬間、アメリアの頭に血がのぼった。素早

く飛び退るとドクターに啖呵を切った。

「お断りよ! 私は誇り高き軍人。誰があんたのような男の愛人なんかになるもんですか」

 ドクターの顔面が蒼白になった。こめかみがぴくぴくと引きつっている。しかし怒りを

爆発させることは無かった。おもむろに仮面を被ると通話器を押し、兵士を呼んだ。

「チャンスをやる。牢の中で今の振舞いをじっくり反省するんだな」

 やってきた兵士に両脇を取られてアメリアは部屋から連れ出された。

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