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漂着した惑星で

以前あるコンテストに応募したものです。古き良きスペオペ風味を楽しんでいただければ幸いです。


 1

 救命ポッドのアラームがけたたましく鳴り、大気圏に突入したことを知らせた。船外温

度に注意を払いながら、アメリア中尉は取りあえず命が助かったことに安堵した。

 所属する艦隊が敗戦の憂き目に遭い、乗っていた航宙艦も爆散した。同じクルーの中で

何人が助かったのだろう。艦長は船と運命をともにしたのだろうか。

 アメリアは顔なじみのクルーたちの顔を思い浮かべた。

 その間にポッドは惑星の地面に到達した。エアバッグで衝撃を吸収しながらころころと

転がる。救命ポッドは旧式のようで、中のアメリアは回転の影響をもろに受ける。これだ

から戦闘で負けるのだ。アメリアは毒づいた。

 ポッドの動揺が収まったところでアメリアはよっこらしょと腰をあげた。ポッドのハッ

チの扉を開ける。まだ温度の高い外壁に触らないよう注意しながらアメリアは外にはい出

た。

 あたりには荒野が広がっていた。見上げる空は深みのある紺色だ。湿気は少なく、温度

は少し高めのようだ。総じて過ごしやすい気候のようだ。

 ポッドのセンサーは的確に仕事をしたようだ。さてこれからどうするか。アメリアは腰

のホルスターからレイガンを取り出した。バッテリーは満タンだ。これを使う事態が訪れ

なければいいが。

 アメリアは眼前に広がる景色を眺めやった。見たところ人家らしきものは見えない。こ

こらあたりの星域は<同盟>にも<連合>にも加盟していない未開発地帯だ。だから何が出て

くるのか用心に越したことはない。

 アメリアは慎重に歩みだした。

 とりあえずは水を確保しなければ。ポッドに多少の蓄えはあるが、いつまでここに滞在

するか分からない以上、少しでも余分にあるほうがいい。ポッドの救難信号は宇宙に鳴り

渡っているが、いつ誰が見つけるのか心許ない。できれば〈連合〉に見つかって捕虜にな

るのだけは避けたい。

 といったようなことを考えながらアメリアは付近を探索していた。と、その時なにかの

光が目を射た。岩陰からだ。何かと思って近づくと、何かの物体が日の光を受けて反射し

ているようだ。

 気になったアメリアは表面を覆っている砂礫を払った。すると鏡のように艶光る物体が

姿を現した。大きさは人の頭ほどか。明らかに人工物である。

 アメリアは持ち上げてみようと鏡の側面に手をかけた。するとカチリとかすかな音がし

たかと思うと鏡面かがまばゆく光り出した。アメリアは思わず腕で顔を覆った。そのため

何が起こっているのか、知ることはできなかった。

光が収まったのでアメリアは腕を下ろした。視界が利くようになったアメリアは何気な

く周囲を見やり、思わず驚愕の叫びをあげた。まわりは闇に包まれていたのだ。いつの間

にこんなところへ。アメリアは頭を働かせ、あの鏡は転移ゲートの一種だと理解した。な

らば元に戻る事ができる対の転移ゲートがあるはずだ。

 アメリアは腰のベルトに手をやり、探照灯をつけた。

 軍服には船内が停電になったときに備え、こういう機能がついているのだ。

 それを使ってあたりを照らす。しかしそれらしきものは見当たらなかった。さてこれか

らどう探索すればいいのか。こう暗くては目星のつけようも無い。

 ふと風の流れを感じた。外から吹いてくるのだろうか。アメリアはそれを頼りに歩き出

すことにした。

 しばらく歩いていて気付くことがあった。道が舗装されたように平坦なのである。とい

うことはここは人工的に作られた空間ということになる。だがアメリアの知る限り、この

星系に人類の手が入ったという記録はない。では一体だれが。

 人類が太陽系を飛び出して天の川銀河の各所に散って以来、異星人はおろか、知的文明

の痕跡すら見つかっていない。

 この銀河系に存在する知的生命体は我々だけなのか。そんな悲観論がささやかれるよう

になった。

 アメリアも士官学校で微生物はともかく知性を持った生命体と出くわすことはないだろ

うと教わった。ではこの痕跡はいったい。

 とにかく進むしかない。アメリアは探照灯であたりを照らしながら歩を進めた。

 そうするうちにふと気づいたことがあった。たまたま探照灯が上を向いた時、何か金属

的な光沢を放つ物体を目にしたのだ。最初は鉱石に反射しているのかと思ったが、それに

しては規則性があるようだ。

 光を上にしっかり向けて丁寧に照らすと、頭上ニメートルくらいのところに一本の軌条

が走っていた。あきらかに人工物だ。

 アメリアは興奮して足下に気をつけながら軌条がどこに続いているのか確かめようとし

た。

 導かれるように進んでいくと突然岩壁にぶつかった。行き止まりになっているのだ。確

かめてみると軌条は壁の向こうに続いている。まだ奥があるのだ。そこへはどうやったら

行ける。

 アメリアは周囲を照らした。すると岩肌の一角に光を反射するものがあった。顔を寄せ

てみるとどうやらタッチパネルらしきものだった。長い間誰にも触られたことがないらし

く、厚く埃を被っていた。

 試みに表面を触ってみたが何の反応もない。ならばどうするか。アメリアはやおらレイ

ガンを構えると引き金を引いた。

 アメリアの考えではタッチパネルを破壊して中に侵入するというものだったが、案に相

違してパネルはびくともしなかった。しかしなぜか岩壁がスライドして入り口が現れた。

 ちょっと拍子抜けしたが、アメリアはかまわず進んだ。


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