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「ルー②」

 知ってた。

 なんとなく、そのことは。


 だって、おかしかったから。

 わざわざ下級生の、しかも堅物で有名な『東中学校ひがしちゅう氷姫こおりひめ』とあんなに仲がいいだなんて。

 たとえ妹の友達だったとしても、それはおかしい。


 だけど知らないふりをしてた。

 変なことを言って輪を壊すのが怖かったから。

 せっかく得た友達を失いたくなかったから。


 待っていれば、いずれは自分のほうを向いてくれるんじゃないか。

 すべては自分の勘違いで、笑って抱きしめてくれる未来があるんじゃないか。

 そんな風にも願ってた。


 だけどもう──

 それも終わり──


「ふぐ……っ、ふぐ……っ、ふぐ……っ」


 追って来るふたりから逃れて、逃れて。

 涙を拭き拭きたどり着いたのは、校舎の屋上だった。


 立ち入り禁止の立て看板を無視し、クレセント錠を外して外に出ると、涼しい風が肌を撫でた。

 走り回ったことで熱を帯びていた体に、それはとても心地よかった。


 屋上には誰もいなかったが、文化祭の後片付けをして騒ぐ生徒たちの声が下の階から聞こえてきた。

 グラウンドの中央では後夜祭で行われるキャンプファイアの準備が着々と進行中で、みんな楽しそうに笑っていた。


「……」


 燃えるような夕陽を背に受けながら、わたしはその光景を眺めていた。


 もしグインへ告白できていたら、そもそもグインに恋人がいなかったら。

 自分とグインがあの場にいて、キャンプファイアの完成を楽しみに待っている、そんな未来もあったのだろうか。


 意味のない仮定だけど、想像せずにはいられなかった。

 胸の痛みはどんどん強まるけれど、そうせずにはいられなかった。


「ハアッ……ハアッ……ハアッ、見つけ……ましたよっ」

 

 後ろから声をかけてきたのは渚だ。

 わたしを探して学校中を走り回ったのだろう、激しく息を切らせている。

 

「もう、逃がしませんからっ」


 顎から汗を滴らせながら、渚はわたしの制服の裾を掴んだ。

 グインへ連絡を取ろうというのだろう、もう片方の手でスマホを取り出したが……。

 

「逃げないから、やめて」


 わたしは渚を止めた。


「グインを呼ばないで」

 

「それはどうして…………いえ、そうですね。すいません、無神経でした」


 渚は一瞬疑問の表情を浮かべたが、すぐにこちらの意をんでくれた。

 そうだ、この場にふたり勢揃いされたのでは、あまりにわたしがみじめすぎる。

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